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RE:START(男主)
クジと温泉B


 どうやら、温泉というものは、風呂を大きくした物らしい。そうヨウジから聞いていたが、まさかここまで大きいとは思ってもみなかった。


「……広いね」


「さすが、最高級旅館」


 研究所がすっぽり入ってしまうんじゃないかと思う程、広い温泉に、俺だけじゃなく、ヨウジもぽかんとしている。これで俺達の貸切なんていうんだから、笑ってしまう。凄過ぎるだろ、招待券。


「取り、敢えず、入る?」


「そうだね。体冷えるし」


 軽く身体を洗って、温泉に足を付けた。少し熱いが、まぁこれ位なら我慢できる。


「あ゛〜。良いね、温泉」


「うん」


「ヤドン」


「あ、ナギ来たの?」


「ワニャー」


「フィー」


 何時の間にか、来ていたナギとダイル。それに、シズクの手持ちであるグレイシアのヒョウランに、俺は笑みを浮かべる。


 温泉の縁に頭を置いてのほほんとしている3匹の姿はとてもほのぼのした雰囲気を醸し出していた。


「いいね〜。こういうの」


「うん」


 隣の女子風呂から意味の分からない悲鳴と、騒がしい音が聞こえてこなきゃ、さらに最高なのだが。


 まぁ、あれは放っておこう。


「コウ〜、髪洗ってあげよっか」


「お願い」


「じゃあ、こっち来て」


 温泉からを出て、ヨウジの前に置かれた椅子に彼へ背を向けるように座る。前にいた世界だったら、きっとこんな隙を見せる行為、絶対やらなかっただろう。まぁ、こっちでも人間だったら、ヨウジや博士辺りにしか出来ないだろうけど。


「目、瞑っててね」


「ん」


 丁度良い温度の湯が髪を濡らし、その後に、ふわふわの何かが頭にのせられる感触があった。多分、シャンプーだろう。


 そんな事を考えていると、筋張ったヨウジの指が髪を掻き分け、頭皮を優しく揉み洗いをしてくれる。


 こういう事を他人にやってもらうのは初めてだが、こんなに気持ちが良いものだとは思ってもみなかった。体が暖かいのもあって、このまま眠ってしまいそうだ。


「痛くない?」


「大丈夫」


「コウの髪ってサラサラだね」


「そう?」


「うん。綺麗な黒で良いな」


「俺は、ヨウジの、色の、方が、好き」


 優しい、土と草木の色が。


「ありがとう。コウ」


「俺こそ、あり、がとう」


「ヤドン」


「ワニワ」


「フィー」


 そんな俺たちを見て、3匹は兄弟みたいですなーと呟いてたとか。


 

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あきゅろす。
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