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RE:START(男主)
最悪の出会い


「それじゃ、最初にポケモンについて説明しちゃおっか」


 所変わって医療室。傷の手当てはヨウジがやってくれてるので、俺は静かに椅子に座っている。その間にポケモンという物の説明を博士がしてくれるらしい。ポケモンについては、気になっていたので、是非ともお願いしたい。


「お願い、します」


「うん。ポケモンっていうのは、ポケットモンスターの略なんだ。この世界何処にでもいて、様々な属性や形のがいるんだ。ん〜、説明するより、見た方がきっと分かり易いかな」


 そう言って、博士が出したのは、白と赤の小さなボール。それの真ん中のボダンを押した瞬間、5倍くらいの大きさになったのでかなり驚いた。


「これは、モンスターボールっていって、この中にポケモンを入れるんだ」


 って、事は、ポケモンという物はかなり小さいのだろう。あんな大きさのボールに入ってしまうのだから。


 博士はボールをポンと空中に投げる。空中でパコンと開いたボールから白い光が飛び出したかと思うと、俺の横に何かが現れた。

 それが、思ったよりも大きくて驚く。あのボールの中はどんな構造になってるんだと本気で考えてしまった。


 首を傾げていると、博士が出てきた生き物について教えてくれた。


「おおあごポケモンのワニノコだよ」


「ワニの、子?」


 最初、二本足で立つ青色の小さなワニにしか見えなかった。まぁ、ワニの子と言うくらいだから、当たり前だろ。


 ワニワニ言いながら、俺に近付いてきたワニの子は……椅子から投げ出していた足に噛みついた。それは、もうガブリという音が聞こえそうな程、思い切り。


「っ〜!!」


「わ〜、ワニノコ! それは、餌じゃない!!」


 あまりの激痛に、声にならない悲鳴を上げながら、ばんばんと横にある机を叩いていると、慌ててヨウジがワニの子を俺の足から離そうとする。だが、ワニの子もワニの子で離れまいとアゴに力を入れるので、傷口が余計抉れ、俺はさらなる激痛に悲鳴を上げる。


 まさに、悪循環のエンドレス。


「ヨウジくん、手を離してあげてくれないかな?」


「でも博士、このままじゃコウくんの足が!」


「大丈夫。ワニノコは甘噛みしてるだけだから」


「流血事件起きてて、どこが甘噛みですか!?」


 ヨウジの意見はもっともだ。これ以上噛まれてると、俺の足が動かなくなる。


「はな、せ」


「ワニ〜」


 なんでなんて可笑しな事を聞く。


「この、ままじゃ、あし、うごかなく、なる。だから、離せ」


「ワ〜ニ〜」


 ちぇーと言いながらも、ワニの子は、俺の足から口を離してくれた。素直だなと思って頭を撫でたら、その手を噛まれそうになったので、慌てて引っ込めたが。


「俺、嫌われ、てる?」


「いや、そんなこと無いよ。むしろ、好かれてるみたいだよ」


「……」


 どこだが、と突っ込みたくなる。いきなり初対面で思い切り噛みついてきた奴に、自分が好かれてると思うなら、それは自意識過剰な奴が、ドMな奴だろう。


「取り、敢えず。危険、なモノ」


「そんなこと無い! ポケモンは凄いんだから!!」


「……」


「博士、最初にワニノコを出したのが選択ミスだと思います」


「うん。今更だけど、僕もそう思えてきた」


「ワニ〜」


 がっくりとうなだれる2人と一匹を放置して俺は、ワニの子に傷付けられた足を治療していく。思ったよりも深くなくて良かった。


「お前は、もう、近付く、な」


「ワ、ワニ!?」
 え!? そう言ってるような気がしたが、理由は言わずとも分かるだろ。俺は、自分を傷付ける奴は嫌いだ。次は、誤って殺してしまうかもしれない。


 それなら、離れた方が良い。


「ワニ〜、ワニワニ!」


「離せ」


 ねぇ、嫌だ。一緒にいたい! 何故だが、半分涙目になっているワニの子から離れた俺は、博士の方を向く。


「博士。部屋、どこなら、使って、良い?」


「あ、あぁ。ヨウジくん。あの空き部屋に案内してあげて」


「分かりました」


「ワニ〜!!」


「ついて、来るな」


 足にすがり付いて来るワニの子を振り払い、俺はヨウジの後に続いて部屋を出る。あのワニの子が付いて来るかもしれないのを危惧して後ろ手に扉を閉めたら、ドンと何かがぶつかるような衝撃が伝わってきた。中から博士の焦ったような声が聞こえてくるのを見ると、多分ワニの子がぶつかったのだろう。


「……なんだか、ワニノコが不憫に思えてきた」


「自業、自得」


 ワニの子の泣き声らしい声を背後で聞きながら、俺はさっさと部屋へと向かうのであった。

 


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あきゅろす。
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