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RE:START(男主)
記憶喪失?
 


「ちょっと、大丈夫ですか!? 返事して下さい!」


「……ん?」


 揺すられる感覚と近くから聞こえた声に、俺は急速に意識を取り戻した。


 知らず知らずに閉じた目蓋を開けると、視界に映ったのは、茶髪の青年。


「……ここは」


「目が覚めましたか!? 此処はワカバタウンのウツギ博士の研究所の前です」


「わかば? うつぎ?」


 何処だ? 誰だ? と2つのハテナマークが頭の上に出ている中、俺に声を掛けていた人は、ちょっと博士呼んできます! とすっ飛んで行ってしまった。って、放置は困る。


「っ……」


 ズキズキと痛む体に鞭を打ちながら、体を起こして辺りを見回す。


 異物を含まない風が柔らかく吹き、とても心地よい。俺が住んでいた鉄とコンクリートと血の匂いしかしない場所とは違って、緑がとても多く、空もくすんだ灰色ではなく、綺麗な青色をしている。まるで別世界にきたようだ。


 ふと、前にある建物を見る。さっきの奴がドアを開きっぱなしにしたせいか、中が丸見えになっていた。近くにある棚には、薬が入ってるらしい色々な瓶が並んでいる。その反対には、扱い方が分からない不思議な機械があり、忙しい音を立てていた。


 どうやら、研究所らしい場所の前に自分は倒れていたらしい。なんでこんな所に……。それを思い出そうとしても記憶に靄がかかったようになってしまい、上手く思い出せない。


「大丈夫かい!?」


 うんうん悩んでいると、ドタバタっ騒がしい音と共に、さっきの人ともう1人、男の人が研究所から出てきた。多分、博士と言うのは、彼の事だろう。


「はい。大丈夫、です」


「大丈夫じゃないだろ! そんなにボロボロになって……手持ちのポケモンは? まさか、悪い奴らに取られたのか?」


「ぽけ、もん?」


 なんだそれ? 手持ちって言うから物なのか?


「ポケモンが分からないのかい?」


「しら、ない」


 首を横に振ると、信じられないという表情を2人は浮かべている。 何か、いけない事でも言ったのだろうか?


「ポケモンを知らないなんて……名前は覚えるかい?」


「名前……ない」


「じゃあ出身地は?」


「わから、ない」


「……もしかしたら、襲われたショックで記憶喪失になったのかもしれないね」


 う〜んと悩んだ博士は、ポンと手を叩いた。頭の上に豆電球が見えた気がするのは、気のせいではないだろう。


「なら、怪我と記憶が戻るまで研究所にいると良いよ」


「そうですね。人手も足りないですし、この人は悪い奴には見えないですし」


「?」


 なんだか、どんどん話が進んでいるが、本人である俺は全く分かってない。何が、どうなっているのだろうか?


「と、言うことで良いかな?」


「は、はい?」


「よし、決定! それにしても、名前が無いのは面倒だね。ん〜、仮にコウくんって呼んで良いかな?」


「え、あの……」


「あ、僕はウツギ。こっちは、助手のヨウジくん。これから、よろしくね、コウくん」


「……」


 なんだか、さくさくと決まってしまった事に、呆然としながら俺は思った。


 2人共、俺は何一つ分かってないぞ……と。


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