RE:START(男主) 彼らの年齢は? 「……なんか、1匹増えてねぇか?」 「うん。枕」 「ヤドン」 「……」 散々もっと一緒にいたいというノアをやっとの事で離し、ポケモンセンターに帰ってきた時には、もう夜になっていた。 どうやら、クリムは先に帰ってきていたらしく、借りていた部屋でテレビを見ていた。無表情に近い顔が、俺の手に抱えられているヤドンを見た瞬間、微妙な表情に変わったが。 「と言うか、そいつヤドンのいどの長じゃねぇか。連れてきて良かったのかよ」 「なんで、分かるの?」 「……こいつは知り合いだ。下手したら、俺よりも長生きだぞ」 「ヤ〜」 うん。ファイヤーより年上かな。そんな事を普通に言っているヤドンに、俺は目を丸くしてしまった。 「ちなみに、クリム、何歳?」 「俺か? 300ちょいだ。長は350位じゃねぇか? あの変人と20違いだろ」 「ヤ〜ドン」 「……すごい。長命」 「伝説のポケモンだからな。元々、寿命は桁違いに長い。ヤドンも普通のポケモンの中では、長命の部類に入るな」 「ヤ〜」 寿命が長いからって300も生きているなんて、想像がつかない。あの場所では、30、いや20後半まで生きれば良い方だったし。その十倍というのは、正直分からない。けど、ここならまだしも、あの場所で300も生きたくない。 「そんな、人が、俺の、家族に、なって、良いの?」 「ヤ〜ドン」 井戸の方は、若いのがやってくれるから大丈夫。なんて、呑気な事を言いながら笑うヤドン。うん、なんだか癒される。 「ナギ」 「ヤァ?」 「君の、名前。今日、から、ナギ」 「ヤァ〜」 うん。良い名だなと尻尾を振るナギ。残念ながら、尻尾は無いから根元がピコピコと動いているだけだが。 「じゃあ、ご飯食べて、風呂入って、寝ようか」 「ルイ、パパと入りたい!」 「いや、ルイちゃん。流石にそれは」 「……ダイル。覗いたら殺すから」 「え? トウリお嬢ちゃんも一緒に入るの!?」 「誰がおめぇの貧相な体なんか覗くかよ」 「放火魔! あ、ん、た、ねぇ〜」 「うわ〜ん! ダイルお兄ちゃん!! トウリお姉ちゃんとクリムさんが怖いよ〜」 「よしよし。と言うか、クリムの旦那はさん付けなんだね、ルイちゃん」 「……なんだか、賑やか、だね」 「ヤ〜」 ほんの数週間で、前よりも賑やかになった家族。たった1人であの場所をさ迷っていた時代が嘘のようだ。 だってほら。今では、危険でしかなかった他人の温もりが、こんなにも心地良い。 「俺は、幸せ、者、だな」 俺は笑みを浮かべる。 それは、ここに来て、いや、生まれてきて、初めての笑顔だった――。 [*前へ][次へ#] [戻る] |