RE:START(男主)
人間の姿になる条件
「おい、こら悪者! なにラジオとう乗っ取ってんの!! 今すぐ得体のしれない放送止めて正義の名の下に裁かれなさい!!」
「ん〜?」
シズクの一方的過ぎる言葉に返ってきたのは、呑気過ぎる返事だった。
部屋にいたのは、青年と男性。
青年の方は、俺と同い年位だろう。
脱色してしまったかのように、真っ白な髪。血で染めたかのような、毒々しい赤色を秘めた瞳。すこし幼く見える顔立ち。下にいた奴らと同じ様に、黒一色の服を着ている。
だが、まるでスーツのようなそれを彼は少し崩して着ているが、それがまた彼にあっていた。下にいた奴らなんかとは、全く格が違うというのが服装だけでも分かった。
俺達を見た瞬間、青年の薄い唇に、へにゃりとした笑みが浮かぶ。ぱっと見た感じ、とてもこんな事をするような奴には見えない。けど、俺の第六感がはっきりと伝えてくる。こいつは、かなり危険だと。
一方、男性の方は、俗に言う執事みたいだ。
ワックスで固められた金色の髪。銀フレーム越しに見える切り目がかった鈍色の瞳。きっちりと着込んだ青年とはまた違う燕尾服のような黒いスーツ。
彼は、俺達と目が合った瞬間、凄い勢いで睨んできた。相当警戒されてるみたいだ。まぁ、当たり前か。
「ん?」
俺は、首を傾げる。なんだか、男性の方は違和感を感じる。微かだが、引っかかるような違和感。小骨が喉に刺さった時みたいだ。
「2人が、しんにゅうしゃ?」
不意に口を開いた青年。その舌足らずな言葉は、小さい子供のようだ。
「さっきも言ったけど、このラジオとうから出て行って!!」
「なんで、ダメなの?」
「多くの人やポケモンに迷惑かけてるからよ! それは、悪い事なの、悪なの! 悪は正義に裁かれなきゃいけないの!」
「わかんない。シャイン、わかる?」
「あの小娘がいってることは、ノア様に関係ない事です。意味を理解する事、事態無駄な時間です」
「確かに」
「コウさん、そこ肯定しないで!! 私が虚しくなるから!」
「知らん」
「さっきから、コウさんが私に対して冷たいんですけど!!」
嗚呼、神様! と叫んでいるシズクに、ダイルとコロンと共に溜め息を吐く。誰か、彼女の暴走を止めてくれ。
「煩くしに来ただけなら帰ってくれませんか? あなた達みたいにノア様は暇じゃないんです」
「分かった。帰る」
「ストップ、待ってコウさん、帰らないでぇぇぇえええ!!」
「……。これを、どうにか、してくれ、れば、帰り、ます」
「これ!? もう私、物扱い!?」
「物の方が煩くないです」
「まさかの物以下命名頂きました〜!」
もう、何をしに此処に来たのか、いまいち分からなくなってきた。けど俺は、漫才をやるために来た訳ではない。絶対に。
「もうこうなったら、バトルでケリつけてやる! そんで、物以下扱いした事、土下座して謝って貰うんだから!」
「ん? バトル? するする〜」
青筋を浮かべながら、モンスターボールを取り出すシズクに反応したのは、今まで沈黙してた青年だった。ニコニコと笑いながら、座っていた椅子から立ち上がっている。
「じゃあ、見学、する」
そうすれば、バトルしなくて良いし。
「それじゃ、一体勝負でいくわよ!」
「うん!」
「悪を退治するわよ! シッコク!!」
「ゲンガー!!」
「じゃあ、ぼくはシャイン! 良いシャイン?」
「畏まりました。我が主」
「え?」
俺は呆然と、フィールド出てきた男性を見つめる。シズクが出したのは、ゲンガー。言わずともポケモンだ。それに青年は、男性で挑む気なのだろうか? 不振に思った瞬間、彼の体が光に包まれる。光が収まった時、そこにいたのは……。
「サンダー!!」
「きゃー、サンダース可愛い!」
「……ポケモン、って、人に、なれるの?」
「うん! シャインは、ぼくと同じすがたになれるよ」
「トレーナーと真の絆が結ばれると、ポケモンは擬人化できるようになるみたいですよ」
「へー」
それは、凄い。けど、絆ってどうしたら、結ばれるのだろうか?
「ダイル、人間、なれる?」
「ワニワ二」
そっか、分かんないのか。少し残念だ。
「じゃあ、私が先攻で。シッコク、ナイトヘッド!」
「たえてミサイルばり」
「避けてシッコク! 続けてシャドーボール!!」
「かみなりあてちゃえ!」
「ゲンガー!!」
「サンダー!」
ドォッッッカァァアアン!!
黒い球体と眩い光を持った金色の雷がぶつかり、盛大な煙と爆発音を辺りに響かせる。あまり広くない室内という事もあるのか、周りに衝撃波が伝わり、部屋の中にある物を壊していく。
「良いの、かな……」
まぁ、俺のじゃないし良いか。
「シャイン。でんしは!」
「ゲン!」
「シッコク!!」
「はい、終わり。ほうでん!!」
「サンダー!!」
先程とは比べ物にならない電撃が、痺れて動けないゲンガーを貫く。声にならない悲鳴を上げ、ゲンガー倒れる。そこまでは、良かった。そう、そこまでは。
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