RE:START(男主)
噂をすると、なんとやら
ゴガネシティの定食屋。オーキドさん曰く、値段も量もお得であり、良く通っているらしい。
「コウくん。遠慮なく食べてくれ」
「えっと……」
いざメニューを見てから、迷ってしまった。流れに任せて此処に来てしまったが、オーキドさんに奢ってもらうなんて、なんだかいけない気がする。
それに、自分はただお使いに来ただけ。お腹が空いてないと言うわけではないが、やっぱり奢ってもらうのはなんとなく気が引ける。
(なんとか、オーキドさんがお金を払わずにご飯を食べる方法は……)
辺りを見回した俺は、壁にはってあった1つ貼り紙に目がいった。どうやら、写真に写っているカレーを完食すると、料金がタダになり、しかも賞金が貰えるらしい。
「……」
オーキドさんに奢って貰わずに食べれる+お小遣いができる=一石二鳥
俺の中で、そんな図式が出来た瞬間だった。
「オーキド、さん。あれに、します」
「おお、コウくんは良く食べるのじゃな」
大食いのやつを頼んで、そんな返答が来るのは、きっとオーキドさん位だろう。
「驚か、ない?」
「ん? あぁ、わしの孫娘も沢山食べる子でな。あれ位は見慣れておるんじゃ」
「……」
女の子であれ位と言わせるって、ある意味凄すぎる。
「ポケモントレーナーで各地を回ってるんじゃが、どうやら、ジョウトの方にいるらしくてのう。どの辺りにいる――」
「おじさん!! ここのジャンボスペシャルカレー1つ!」
オーキドさんの言葉を遮るように、高めの声が店内に響き渡る。ジャンボスペシャルカレーは自分が頼もうとしていたものよりもワンランク上のやつだ。だが、あの声の高さからいって、声を上げたのは、男ではない。
声がした方を見ると、そこにいたのは、やっぱり俺より少し年下らしい少女だった。
夏空のような長い青色の髪。少し大きめの髪よりも深い紺色の瞳。服装は、柄の入ったTシャツ、空色のロングパーカー、草色の短パン、年季が入ったスニーカーだ。多分、ポケモントレーナーだろう。……ん?
(そう言えば、なんか言葉がなかったか? 噂をすると本人が現れるみたいなのが)
まさか、とは思うが……。
「おお、シズクではないか。こんな所にいたのか」
「おじいちゃん! 久し振り!!」
「……」
オーキドさんの声に反応したのは、案の定さっき俺が見た少女。笑顔でこちらに手を振っているのを見ると、彼女がオーキドさんのお孫さんであるシズクだろう。
なんか、面倒事になりそうな気がする。その予感は、きっと外れないだろうと、俺は本気で思ったのであった。
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