[携帯モード] [URL送信]

RE:START(男主)
オーキドさん


「おー、君がウツギくんが言っていたコウくんか。話は聞いておるぞ」


「は、はぁ」


 ぶんぶんと手を掴んだまま手を振る老人に、俺は苦笑しか出来なかった。


 なんでこんな事になっているのか。それは、数時間に遡る。


 実は今回俺は、この世界に来て初めて空を飛んだ。と言うより、俺の世界には空を飛ぶ機械が無かったから、空を飛ぶという概念自体、こちらに来て知ったぐらいだ。


 元々運動神経は良い方だから、それ程苦ではないと思っていたが、カイリの体の上でバランスをとるのがあんなに大変だとは思いもしなかった。危うく何回も落ちそうになった。


 ゴガネシティに着いたときは、しっかりとした地面の硬さに、少し泣きそうになった。空を飛ぶのは楽だが、出来ればあまりやりたくない。と言うか、酔わなくて良かった。カイリの上で吐いたりなんてしたら、後が怖い。


 彼女を見送った後、博士からのおつかいを済ます為、ラジオとうに行ったら、入口にいた老人に引き止められた。どうやら、彼が博士が言ったオーキド博士らしい。そして、冒頭に戻ると言う訳だ。


「無理を言ってすまなかったのう。どうしても、わしがコウくんに会いたくてな」


「い、いえ。丁度、良かった、ので」


「そうか。そうか。それなら良かった。これからどうするんじゃ? 旅に出るとウツギくんからは聞いているが」


「いえ。帰り、ます」


 まぁ、歩いてだけど。そう心の中で呟きながら、俺は溜め息を吐いた。


 実は、ゴガネシティに着いた直後辺りにヨウジから電話があったのだ。ゆっくりで良いから、早く帰ってきてくれという意味の分からない電話が。


 彼曰く、俺がやってた仕事が自分に回ってきたせいで、1人では手が回らなくなってしまったらしい。本当はすぐにでも帰ってきて欲しい。けど、すぐに俺が帰って来ると、博士に何を言われるか分からない。と言う葛藤の末、上記の結論にいたったらしい。彼らしい結論だ。


 そんなんなので、俺もこっからワカバタウンに歩いて帰ることにした。旅と言ってもそんなに長く出ようとは思ってもいなかったし。


「そうか。是非ともマサラタウンに来て欲しかったのじゃがな」


「またの、機会に、お願い、します」


「待っておるぞ。コウくん!」


 ばしんと思い切り背中を叩かれ、思わず噎せた。地味に痛い。


「おお、そうじゃ。それなら、これから一緒に食事というのはどうじゃろうか?」


「良い、ですよ」


「よし、そうと決まったら、行こうか」


 まぁ、それぐらいなら。そう思ってオーキドさんの後をついて行く。


 まさか、あんなことに巻き込まれるとは、この時の俺は知る由もなかった。







 

[*前へ][次へ#]

12/66ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!