プリマ☆ステラ〜P☆S.A.S〜
お節介と恩返し
「そろそろだね。晃輔君、今日はここまでにしよう」
「うっす……」
正直な話、今日のメニューでは物足りないところも多く、まだまだ完全復活には遠いと思わされた。しかし泳ぐことでかつての自分の泳ぎを思い出してきたことも事実だ。物足りなさもあるが、今日は順調だと言ったところだろうか。
「明日からはもう少し距離を増やして泳いでみようか、美雪先生とも相談しておくよ」
「お願いします。それじゃあ自分はこれで……」
「うおぉぉ!? 広いし綺麗だ!!」
「っておい! 何で兄貴がこんなところにいるんだよ!? 陸上部じゃないのか!」
「うんにゃ、身体ほぐすためにプールで泳いでこいだと。まぁ美雪先生に許可はとってあるらしいし問題ないんじゃないのか?」
言われてみれば問題はないとは思うけど、でも何かなぁ。
「それとも何か、お前は泳いで良いけど俺は駄目だってか!? ちくしょう……お前だけ良いなぁ」
「わ、分かったから、落ち着けって。悠さん、良いですか?」
「うん、使ってくれて構わないよ」
「よっしゃあ!」
プール使用許可が下りたとたん、両手を高く掲げて喜ぶ兄貴。子供っぽすぎて何も言えねぇ。アンタ精神年齢いくつですかホントに……。
「──悠……晃輔は本気で泳がなかったか?」
「うん、一回本気で泳ごうとしたけど僕が止めたよ。君との約束だからね」
「感謝する。晃輔、身体冷やさないうちに早く上がれよ。風邪なんか引いたら元も子もないからな」
「分かったよ、しつこいなぁ……」
本当にお節介としか見えないよなこれ。ホントにあの時からずっとだよな、自分じゃなくて人を第一に考えるようになったのって。もう十分に償ったのにまだ償いきれないのか、誰ももう悪く言う奴なんか居ないのに。
「ありがと、兄貴。俺は大丈夫だから」
「ああ、気をつけて帰れよ」
兄貴に俺は一言だけ声をかけてやる。俺がここまでこれたのも兄貴のサポートと励ましがあったから、今まで背中を一番押してくれていたのが兄貴だったから。事故の時も真っ先に駆けつけてくれたのが兄貴だったから……。
───何でも良い、何でも良いから俺は恩返しをしたい。
──…
「あ、あれ? 静歌?」
「あ、晃輔さん♪」
先に帰らなかったのか、ってかそんなうれしそうな顔をされたら俺はどうやって応えれば良いんだよ。でも心なしか、静歌の笑みが無理やり作られたもののような気がする。俺の気のせいであってくれればいいけど……。
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