プリマ☆ステラ〜P☆S.A.S〜 お嬢様は有名人!! 「こちらこそごめんなさい……気付かなくて」 「いやいや東方院さんは悪くないって」 「ふふん、ダメじゃない静歌。自分のオーダーに夢中になっちゃうなんてレディとしてまだまだね」 「ううぅ……」 しまったとばかりに眉を垂らす東方院さん。何というか……コメントのしようがない。 「……これで、私の方が一歩リードね♪ お先に失礼?」 「ふぇ!? な、なにがっ?」 「あぁら、言っていいの? さっき彼らがどれだけ優しいかって私の部屋へきて──」 「わっ、わー!? 雅ちゃん、話が違うー! 秘密ねって言ったのにー」 「そうだったかしら? ごめんあそばせ」 「ひどいー……」 顔を赤くしてすねる東方院さんにフフンとでもいいたげな気持ちたっぷりにニヤニヤ笑いを送って楽しむ高鷲さん。フォローのタイミングの良さといい、きっと東方院さんじゃ相手にならないんだろうな。 「しかしまぁ、食堂のメニューがあれだとはなぁ」 「まぁ、一般世間ではそうね。職業柄、生活の違いで驚くことがあるし」 「何故に? 学生だろ?」 「え?」 「ん、なに?」 「ひょっとして、お前全然気が付いてないのか?」 「だから何が!?」 「さっきから普通に話してるから、もしかしてとは思ったんだけど」 軽くつっこんでみたら予想以上に大きなリアクション。東方院さんは苦笑いだし、高鷲さんと兄貴はため息をついてなにやら呆れたような顔をしている。……ひょっとして、また何か某芸人みたいにヘタこいたー!! 状態になってしまいましたか? 「……ねぇ。この顔に見覚えないかしら?」 「顔?」 ちょんちょんと自分の鼻をつついてみせる高鷲さん。いやみた目通り豪華絢爛の超美少女としか……あれ? そういえばさっきどこかで見たことがあるかもとは思ったんだけど……。どこだっけ? 「ん〜……」 「ふふ〜ん」 「……」 「……っ」 「んん〜……あかさたな……?」 「……ま、まだ思い出さない? それにあかさたなって何よ?」 しまった、考えることに夢中で訳の分からないようなことを口走ってしまった。ん〜と…… 『──大切な人にこそ、贈りたい。そんな気持ちがいっぱい詰まった、ギフトセットです』 あっ…… 「どう……?」 「思い出したっ、アンタハムの人っ!」 「は?」 その場に短くも長い狐につつまれたような沈黙が訪れる。しらけたという例え方がいいだろうか。 「……もうちょっとマシな覚え方してよね」 「兄貴は気がついていたのか?」 「ああ。高鷲雅、今ブレイク中のお嬢様タレントだろ?」 引っかかっていた疑問が、ポロッと腑に落ちる。いったん思い出すと目の前の女の子をよく見かけていたことが、はっきりした。高鷲雅、今説明してくれたように今年になってブレイクしたお嬢様タレントで、スポーツドリンクのCMから人気の火がつき、今やテレビや、グラビア、舞台に歌といろいろなところで見かける有名人である。 単なるアイドルではなく、頭の良さと立ち居振る舞いの優雅さに人気のあるマルチタレントだ。 「うちの部員にファンがいるぞ。写真集買っていた」 「あら、ありがとう。でも晃輔は気がついてなかったわね?」 「い、いや、まさか芸能人だなんて思いもしなかったし」 「ん……そういやおやじも確かファンだったな。高鷲雅の出る番組は欠かさず録画していたし」 「マジで?」 「お前本当に水泳のことしか頭にないのな」 「でも、ここにいる限り学生が本分だから、普段通りにしてて」 「そ、そうか。そうだな……」 クスクス笑って言う高鷲さんは、テレビや雑誌で見かけるよりも自然体でフランクだった。華やかな外見や芸能活動の裏側は、意外と話しやすいタイプの女の子だ。 . [*Back][Next#] [戻る] |