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ポインセチア


Poinsettia



ポインセチア(赤)
花言葉【祝福】




今日は、クリスマス。
花屋には色とりどりの花たちが並ぶ。

「東、この葉っぱは何て名前なんだ?」

俺は、赤と緑の葉の鉢を指して聞いた。

「それは、ポインセチアです。花言葉は祝福」

東はそう答えると、同じような鉢をこっちに持ってきた。

「ちなみに、この白いのもポインセチア。花言葉は、あなたを祝福する」

「……同じじゃん」

「いいえ、違うんですよ」

東は優しく笑い、鉢を元の場所へ戻した。

「……クリスマスって何で赤なんだ?」

譫言みたいに呟く。
この店も街も同じ色、誰も変だと思わないのかと疑問になる。

「そうですね……サンタクロースの故郷の北欧は、冬になるとすべてが雪に覆われてしまうんです」

東はカップにコーヒーを注ぎながら楽しそうだ。

「赤は、一面の銀世界に対して明るく元気になれる色だったんですよ」

手渡されたコーヒーの味と安易すぎる理由に納得がいかない。

「……そんな理由なの?」

東は、不服そうな俺の声を聞くとまた少し笑う。

「まぁ、キリストが生まれた時に次々に実をむすんだリンゴの色だという説や、柊の実、サンタや妖精の衣装の赤だっていう説もありますね」

東は別のコーヒーを淹れ始める。

「でも結局、赤なんだ」

香ばしい豆の香りが店を包む。

「いいえ、緑、白、金もありますよ」

コポコポと、カップにお湯が注がれている。

「もみの木や柊は、寒い冬でも葉を落とさないので、希望の木として緑が。
また、白は穢れのない純な象徴、聖なる色。そして、春への期待。
金は、ベツレヘムの星。星の輝き、高貴、大切なものの象徴なんです」

淹れたてのコーヒーは、さらにいい香りがする。

「……盛大な誕生日会だな」

嫌味みたいに呟きながら角砂糖をカップに入れた。

「確かに。でも、クリスマスの風習自体のもとは、誕生日会ではなくローマの感謝祭なんですよ」

俺は、驚いて東を見る。

「元々は、神への感謝祭だったのですが、同じ日に誕生日を乗せてきたらしいです。
そして、世界中に感謝祭のもみの木やプレゼント交換の風習が広まっていったんです」

「そ、そうなのか?」

東の言葉にあっけにとられながら、知らないことばかりだと俺が笑うと、東も本で読んだ知識でしかないと笑う。

「……ただ、知らないだけで何事にも理由や意味がある。知らない、で済ますには、あまりにももったいないじゃないですか。まぁ、僕の知識なんて浅く広くでしかありませんが」

謙遜したようにしか見えない笑顔が嫌味に見えないのが特な気がする。
俺は、湯気のたつ自分のコーヒーを見つめる。

「……じゃあ、クリスマスのポインセチアは?」

東はゆっくりとコーヒーを飲んでいる。

「祝うんです。冬を迎えられたことを。神へ感謝出来ることを。
それが、幸福なことだと改めて知るんです。
そういう思いが、あの花には込められているのかもしれませんね」

東は言い終わると、俺に手を差し伸べた。

「おかわりはいかがです?」

「いや、もう十分。」

「そうですか。西くん、ゆっくりしていってくださいね。僕はお正月の花の用意をしなくては」

東はまた優しく笑い、店の裏に行ってしまった。
俺は、店の中にひとり取り残された。

店先には赤と白のポインセチアが公道側の窓辺に並んでいる。

鮮やかな花たちの色彩は、外の人たちの幸福を祈り祝うかのように賑やかで心が踊る。

「……東みたいな花だな」

東はいつも楽しそうで、周りを幸せにする。
そして、いつも人の幸せを祈っている。

俺は小さく笑って、椅子から立ち上がり飲み干したカップを片付ける。

「東ー。何か手伝えることあるかー?」

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あきゅろす。
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