小説 あたしって? よくある話よね。 よくある話よ。 あたしは自分が惨めにならないような理由を必死に探して、 自分も遊びたかったからだとか、 興味本意だったんだとか、 誰も聞いちゃいないのに口にしていた。 どう考えても騙されていた。 プライドを傷つけられたのに、怒りを覚えられないのは、 自分も同じことをしていたからだった。 あたしには1年くらい付き合っている彼氏がいる。 なんでも叶えてくれる王子さまみたいな人よ。 あたしだけをみてくれる人。 今さら罪悪感と後悔が募った。 隠したかった。 消したかった。 夢にしたかった。 バレたらどうしよう。 そんな焦りで寒気までしたんだー。 まぁ、勢いよね、勢い! ノリって言うの? たいしたことじゃないわ。 あたし、真面目すぎるのよ。 みんなだってよくやってるじゃない。 気にしすぎよ。 ...それに、もう二度と会うこともないわ。 もう、二度と。 あたしの彼氏はタカヒロって言うんだけど、 ちょーおカッコいいんだあ。 イケメンだし、お金持ちだし、優しいし。 しかもデザイナーだからね! 幸せに、なりたい。 ふたりで。 ずーっと一緒に居たいの。 遅くなったけど、 あたしの名前はリカ。 某有名医学大学に通う二年生。 将来の夢は、とくになし。 友達って呼べるものもとくになし。 趣味も特技もとくになし。 変かしら。 自分ではあまり気にしてないんだけど。 え? なんで医学大学に通ってるかって? うーん、なんとなく?かなあ、それしかなかったからかしら。 あたしの家に自由なんてないの。 将来なにがしたいなんて通るわけないわ。 言うだけ無駄よ。 今どき珍しいかもしれないけど、嫌いじゃないの。 決められたことを素直にやればいいだけだもの、簡単よ。 誰かのために生きるほうが楽。 なにがしたいどこに行きたいなんて、考えたこともない。 幸せにしてほしいの。 言うこと聞くわ。 愛されたいの。 それだけよ。 あたしだけを好きなタカヒロが好き。 だから、放したくない。 離れたくないのよ。 これ以上独りになるなんて、絶対に、嫌。 [*前へ][次へ#] |