小説
引力
どれくらい走っただろう?
頭の中のごちゃごちゃを消したくて。
って言うのは少し嘘で、
会いたかった。
待ってるなんて全然信じてない。
でも信じたかった。
もしかしたら居るかもしれない。
期待なんてしたくないのに。
信じたい自分なんてバカみたいだと思った。
でも走った。もう歩く速さだったけど。
「...居た」
全身の力が抜けて、あたしは地面にぺたんと座り込んでしまった。
「リカ」
アイツは驚きもせず、あたしの近くまで歩いてきた。
「リカだ。やっばり来てくれた」
アイツはキャンディーをもらった子供みたいな笑顔をみせた。
それから、あたしの顔をヒドイ、とケタケタ声をあげて笑った。
あたしはただただ泣きじゃくった。
アイツはニコニコしながら黙ってみてる。
「な、なに、よ、、、どうしたの、とか、、、ない、の??」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃなあたしなんて誰がみたことあるだろう。
「『どう』だっていいよ、僕のところに来てくれたんだから」
アイツはそう言うと、あたしを壊れるくらいに抱き締めた。
「く、くるし、、、」
そんな言葉も聞こえないくらい更に強く抱き締めた。
それからあたしの耳に、優しくキスをした。
そして躊躇いがちに、額に、瞼に。
あたしに応えを求めるように、繰り返し、何度も何度も。
「こんな場所じゃ、寒くて風邪をひくわ」
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