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小説
出会い
アキに出会ったのは去年の冬。


本格的に寒くなってきた頃で、街はネオンが目立つようになり、恋人たちはいつもより近い距離で歩いてる。


寒さが苦手なあたしは、タクシーがつかまらないのを理由に、イライラしていた。



そんなとき、あたしは偶然視界に入ったものに惹かれた。


都会の歩道橋から街の景色をみて涙を流している人。

あまりにも綺麗で、あたしは足がすくんだの。

みとれた、わけではないわ。



それから
あたしに見えたものは、反らしたいくらい悲しくて

気づくとあたしも泣いていた。

金縛りに遭ったみたいで、声も出ない。




そんなあたしに気づいたのか、その人はいきなりスタスタと近づいてきた。






「お腹、すいた」

「へ?」

「お腹すいたよ。なんか頂戴。」



驚きのあまり、涙も引っ込んだ。

ずいぶん馴れ馴れしい態度。
子供みたい。




「お茶、なら。」

よくわからないまま、あたしは飲みかけのペットボトルのお茶を差し出すと、

彼は満面の笑みで一気に飲み干した。


「...」


「優しいね。名前、なに?」

「リカ。リカよ。」

「ありがとう、リカ。おかげで死なずにすんだ。」



たった半分のお茶で人の命が救えるのかしらね。



「俺はアキ。写真とか撮ってる。またここに来てよ、リカ。」


カメラマンか何かかしら。なんか、、、変な人。



「もう来ないわよ。」
「待ってる。」
「来・な・い!」




「待ってるよ。明日も明後日も、一年後もね。」



「...」





泣いてみえたのは気のせいかしら?

そう思うくらい嬉しそうな顔で笑ってる。




馬鹿馬鹿しくなって、あたしは駅に向かった。

小説なんかにありがちな出会いのシチュエーションに、少し胸がときめいた自分を否定しながら。






だいたい何よ。

初対面のくせに、友達みたい。

泣いたり笑ったり、おかしな人ね。






その日の夜は変な夢をみた。

果てしなく広がった海に、

何度入ろうとしても入れない。


そんな夢。





それが、あたしの人生を変えた人、アキとの出会いだったんだ。

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あきゅろす。
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