小説 人形になりたい。 惨めなことに、あたしは夢をみていた。 あたしはパパにもママにも愛されているのだと。 パパとママが愛し合って創られた命なんだと。 あたしが悪かったのかな。 昔から悪い子だったから。 血液さえ繋がっていれば、無条件で愛してくれると思ってた。 自分の勘違いに、恥ずかしくなった。 愛されたくて必死なあたしを、誰も、みないでー。 目を覚ますと、あたしは温かいモーフの中にいた。 見渡すと、そこはアトリエみたいな小屋で、アキの家みたいな雰囲気がした。 、怖くなった。 優しくしないで。 信じたくなる。 「アキ、あたしをひとりにして欲しいの。」 コーヒーを二人分運んできたアキにそう言った。 アキは、何も言わなかった。 「怖いの。離れていくなら近づかないで。」 あたしは立ち竦むアキを無視して逃げるように、あてもなく飛び出した。 あたしは、どこに居たらいい? 誰を信じたらいい? これ以上傷つくのなら、幸せになんてならなくていい。 独りでいい。 独りがいい。 あたしは繰り返し自分に言い聞かせた。 自分の想いなんて無くなればいい。 人形になりたい。 [*前へ] |