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小説
存在否定
少し歩くと、あのときの歩道橋に着いた。


その下に停まっていたタクシーに乗り、あたしの家に向かった。


アキの顔がこわばっていて、あたしは笑うのをこらえるしかなかった。



「も、も、もう、着く??」

「そうね、そろそろ着くわ。」


アキはゴクンと音を立ててつばを飲んでいた。


あたしは怒られるのが楽しみになってきてしまっていた。




「着いたわよ。」



あたしは代金を払い、タクシーを降りると、顔面蒼白なアキを引っ張って玄関に向かった。



ドアが閉まっていた。


それもそうね、とあたしは裏庭へ向かった。

裏庭の窓から見えたものは。







小さな女の子と若い女性。

あたしの知らない人。






あたしはすぐに事を理解した。

そうゆうことね。



あたしはUターンをして、その場を去った。



「リカ、ど、どうだった?いた?いた?」

「誰もいないから、帰る。」

「え、帰る?、リカ、意味わからないよ、どうした?」






「...女の子がいたわ。小学生くらいの。」

「?」

「若い女の人もいた、パパの愛人かな。」




泣いたら負けよ。泣くもんか。

「やだな、もう、ごめんね、アキ。帰ってきた意味なかったみたい、」

「いいよ。」



アキはあたしを頭から全て覆った。


「何も言うな。何も言うなよ。」




わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ...



あたしは大声で泣いた。




アキはそれが誰にも聞こえないくらい強くあたしを抱き締めた。



痛いくらいに強く。




もっとキツく抱き締めてよ。

心の痛みが麻痺してくれない。

もっと。もっと。もっと。

息ができないくらいにして。

アキ。

アキ。






それが聞こえたように、アキはあたしを苦しめるほどに抱き締めてくれた。





ずっと、ずっと。





あたしはいつしか泣きつかれて眠りに堕ちていた。





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あきゅろす。
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