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小説
世界
あいつがあたしをどうしようとしてるかなんて、わからなかった。


また騙されるのかもしれないし、いきなり消えるのかもしれない、

けどそんなのどうでもよくて、

引かれた腕を振り払うことなんてできなかった。



...ついていきたくて。




迷いも躊躇いもなく進むアイツは
信号は無視、横断歩道も遮るし、

めちゃくちゃじゃない。


呆れると同時に羨んだ。




アキといると、少し怖い。

急に夢から覚めてしまうようで...。







あたしが連れて来られたのは見たこともない森林の前。

静まった夜なのに不気味どころか、藍色の木々が光って美しい。


「入るよ。」

人が入って良さそうな場所じゃないんだけど。




すると、そこにはそんなのどうでもよくなるような
無知の世界が広がっていた。



あたしは興奮して、アキを質問攻めにした。

「この匂いはなに?あの鳥の名は?この実は食べられる?」


「はは、落ち着けよ、順番に答えるからさ。」

お構いなしにあたしは続けた。

「土が湿っているのは何故?いまの音はどこから?
...怒られないの?こんな場所に無断で入って。」


「怒られる?怒られたら怒られたで良いさ。」


「...そんなことだろうと思ったわ。」



「リカの分まで怒られればいんだろ?簡単なことだよ。」



なにこいつ。調子狂う。



でもなんだかおかしくて、あたしはたくさん笑った。



パシャッ



「?!」


あたしは驚いて振り返った。


「なに?!やだ!なんか撮った?!勝手なことしないでよ!」


パシャパシャパシャ



「ちょっ、、、やめてってば!!」




「リカ。いい顔してる。凄く綺麗だ。」



「なっ...」



綺麗だなんて、よく言われるのに。


自分でも顔が真っ赤になったのがわかった。




「綺麗だよ、君は綺麗だ。」

「君を初めて見たとき。」

「見とれたよ。」

そう言いながらシャッターを次々おろす。



「いやだ、ってば!」



ようやくアキは手を止めた。



満足そうなアキは、ありがとうと言うと改めてあたしを見つめた。



「君を撮りたい。」


そう言ったアイツの目はせつないものを見るようで、なぜか少し悲しそうにみえた。

気のせいかもしれないけれど。


「ん、、、まあ、いいけど、、、よく撮ってね?」



「勿論!」



あたしはこのアキの顔が大好きだ。


キャンディーを貰った子供みたいな笑顔が大好きだ。




愛しい人。


ずっとあたしのそばにいるなんて約束、してくれなくていい。


今日みたいな明日がずっと続いて欲しいだけなの。


ねえ、明日はあたしのそばにいてくれる?





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あきゅろす。
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