■耳から始まる恋もある!
6
「…クックック、…あー…おもしれー…。」
会長こと速水は、先程の那須の顔を思い出し、またクツクツと笑っていた。
自分のことが好きなのだと、あの化学室ですぐに分かった。
あんなに顔を真っ赤にして、固まったら、好きだと言っているようなものだ。
際立って美しいという顔ではないが、まぁまぁ可愛い顔をしていたし、何より興味が湧いた。
だから、もう一度会ってみよう、それくらいの気持ちで、今日教室に赴いたのだが…。
「あれは、いいな…。」
気が変わった。
泣きそうな顔をしながらも、好きだと伝えてくる視線。
困ったように潜められた眉に、小さく震える手。
あそこまで一途に思わるのは、悪くない。
…何よりも、可愛かったのだ。
あれを自分のものにしたい…、唐突にそう思ってしまったのだ。
自分の顔が他人にどう思われるのかは分かっている。
少し優しい顔をして、甘い言葉を囁いてやれば、皆一様にうっとりとした視線を投げてくるから…。
だから、この勝負はすでに決着がついたと思っていた。
次、呼び出して、キスの一つもしながら、愛を囁けば俺のものだと、このときは信じて疑わなかった。
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