■耳から始まる恋もある!
8*
「…何、発情してんだ?」
例にならって、俺も、わざとらしくニヤけながら、膝で那須自身を刺激。
「っ!…ぁ、…!ご、ごめ…なさい…」
ビクッと大きくはねる身体。
恥ずかしさもピークに達したのだろう、一気に目に涙が溜まり、ポロリと零れた。
まぁ、好きな奴にそんなことバレたら、恥ずかしさと情けなさもメーター振り切るってもんだ。
けど…、そこで泣くのは反則だろ…。
可哀想になってくるから…などではない。勿論。
「やべー…興奮する。」
その涙を舐め取って、目元にキスする。
ああ、しょっぱいんだな…やっぱり。
こんな事を思いながら、こめかみに沿ってキスを落とし、何気なく耳にキスをした。
途端に
「や、っ…!!」
逃げるように身体が動くが、膝に当たっているものの硬度は増す。
やっぱり耳が弱いらしい。
なので…
「…感じる?」
ワザと耳に唇を付けてそう言って、チュウッと音を立てて吸うと
「あ、…ぅ〜…、やだぁ、…ごめ、なさい…」
と、ボロボロ泣きながらも、ビクビク震える身体。
…、超、可愛い。
とはいえ、余りに感度が良すぎる。
このままイクんじゃないかと思うくらいの感じ方だ。
「…、…それもイイけどな。」
まぁ、それはまた今度。
しばらく泣き顔を堪能してから、とりあえず…と、堕としにかかった。
「なぁ、お前、俺のこと好きだろ。」
「…は、ぁ、…え?」
首筋から耳にかけて、スルスルとなぞりながら、そう問うと、泣きまくって真っ赤になった目から、また涙が落ちた。
それを無意識に舐め取って、もう一度問う。
すると那須は、おそるおそるといった風に、小さく頷いた。
そして何かの判決を待つかのように、ギュッと目を閉じる。
その仕草が可愛くて、思わず頭を撫でてしまう俺。
自分で自分の行動に驚いた。
それは那須も同様なようで、閉じていた目を見開いて、びっくりした顔でこちらを見つめている。
「…いいぜ、付き合うか?」
「…え、」
「だから、付き合ってもいいぞ?」
「…ご、ごめん、なさい。」
…、…は?
その後、余りの衝撃に驚いて固まっていた俺に、ごめんなさいともう一度謝って、那須は逃げるように部屋を出ていった。
手はそのままだったが…大丈夫なんだろうか?
「…、…ちょっと、待て…。」
俺はというと、ソファーに座りこんで頭を抱えていた。
「…好きだっつったよな。」
そう呟いて、記憶を反芻するも、間違いはない。
確かに頷いたはずだ。
小さくだが、確実に那須の首は縦に振られた。
行為自体に嫌悪があったか?
いや、那須のモノは高ぶっていたし、萎えるようなこともなかった。
嫌がる素振りはあったが、あれは恥ずかしさからくるものだ…、…と思う。
つまり…
「付き合うのが嫌なのか?セフレ…?」
そんな風には見えなかったが…。
何にせよ、解せないことばかりだ。
ため息を吐いて、頭を掻く俺。
「ん?」
そこで重大なことに気付く。
「…俺、…振られたのか?」
しかも初めて。
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