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■耳から始まる恋もある!
16

「…トモ、」

「っ、…ぁ、…やだ、っ、…」

「…トモ、抱きたい。」

「ぅあ…っ、…」

ぶるっと身体が震えるものの、俺は持ちうる理性を総動員してそれを止めた。

手を突っ張らせ、距離を取る。

「っ、…あ、旭さん、駄目!駄目ですってば、」

「…何でだよ。」

「今日は、キョーがいるんです。絶対駄目です!」

俺が少し顔を引き締めてそう言うと、会長は

「…、…、…分かった。」

と、大きく間を開けて頷いた。

その微妙に長い間が、実は、独占欲と性欲とを天秤にかけ、独占欲が勝ったからだということは俺は知らない。

他人の気配に恥ずかしがる様は見たいし、ヤリたいが、声ですら他人に聞かせたくないという独占欲。

少しムスッとしてしまった会長の顔を、俺は笑って撫でた。

「…せっかくのカッコいい顔が、台無しです。」

「っ!…あー…トモー…マジで生殺しだぜ…。」


会長はそう言いながらも、大人しく俺の太ももに頭を戻す。

「トモ、撫でろ。」

「はい。」

クスクスと笑って、見た目に反して随分と柔らかい髪を梳くように撫でる。

途端に、気持ち良さそうに目を細める会長。

まるで猫みたいだ。

「…気持ちいいですか?」

「んー…気持ちいい。」

緩む会長の口元に、俺は凄く幸せな気分になる。

サラサラと指の間を流れる髪の毛。

会長の唇にキスを一つ。

閉じかかっていた目が、パチリと開き、驚いた様にこちらを見る会長。


「…今、」

滅多にしない俺からのキス。

仕方がない、だって、今、凄くキスがしたくなったのだ。

ドキドキする心臓の鼓動と、身体の奥の方から湧きあがってくる幸せな気持ちが抑えられなかったのだ。

きゅうっと胸が締め付けられて、無性に抱きつきたくなる。

俺は、その気持ちを言葉にして吐き出すことで、抱きつきたくなる衝動を堪えた。


「…旭さん、好きです。…大好き。」

「なっ…」

珍しく会長の頬が赤くなり、その後すぐに、見ているこっちが照れそうなくらい優しく笑った。

手が伸びてきて、俺の頬を、大事そうに撫でてくる。

その手の動きが、物理的にも精神的にも、妙にくすぐったくて、チュッとその指にキスをする。


「…なに可愛いことしてんだ?」

「…だ、だって、何か、そんな気分になったから…。」

俺がそう言うと、会長は何故か面白そうに笑う。

そして一瞬、ニッと口角を上げたかと思うと、

「愛してるぜ。…友則。」

と、それはそれは甘い言葉で、表情で、手つきで、愛を囁かれた。


「っ!…ぅ、ぁ…お、俺も…デス。」

一気に会長のペースだ。

顔が真っ赤になっているのが自分でも分かる。

やっぱり、敵わない…。



「トモ、もっと…」

してやったりといった風に笑う会長に、俺は真っ赤になった顔で、慌てて会長の髪を弄った。

少し悔しいような気もするが…まぁいいか。

なんていったって、俺は今、凄く幸せなのだ。

目を閉じて、大人しく髪を触られる会長。

テレビの中で、芸人が面白いことをいったのがツボに入ったのか、たまにフッと笑う。

時折目を開けては、俺の頬を数回撫でたり、髪を撫でている俺の手を取って掌をなぞるように触ったりする会長。

時間がゆっくり過ぎているようだ。


「…トモ、」

「はい、旭さん。」

「…、好きだよ。」

「はい、」


…俺も、愛しています。旭さん。




きっかけはあなたの声だったけれど…。

今はその全てが愛おしい。



これぞまさに、耳から始まる恋もある!




END

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あきゅろす。
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