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■耳から始まる恋もある!
13

「キョー?カードキー…、…っ、!……、」

そう言いながら、開いたドアの先にいた人物を確認して、驚愕。

驚きのあまり、言葉が不自然に途切れ、そのまま固まってしまう。

目の前の居たのは会長。

という会長自身も驚いた顔をしている。

「な、…なんで…」

かなり動揺しながらも、とりあえず口を開く俺に対し、

「い、いや、本条に頼まれて、昼飯を買って…、」

と、会長も口ごもった。

見れば、手に下げた袋にはパンが入っているのが見える。

本条というのもキョーの恋人の名前であるし、説明としてはおかしいことは無いのだが…。

如何せん本条先輩どころか、キョーすらいない。

…何故?


きっと連絡の行き違いでもあったのだろう。

でなければ、昨日の今日だ、会長が俺の部屋をわざわざ訪れる理由がない。

気まずいことこの上ない訳だし…。


そう思った俺は、とりあえず現状を伝える。

「…本条、先輩は、…居ない、です。」

「…そ、そうか、悪い。」

慌てて帰ろうとする会長。

しかし、何を思ったのか、一瞬眉を寄せ、その足が止まる。

そして

「…上がって、待ってもいいか?」

「え、え?……あ、…あの、えと、はい。どうぞ。」

昨日の今日で、心の準備もクソも無かったが、このままドアを閉めては流石に失礼な気がして、思わず頷いた。

それに内心自分でも驚きつつ、未練タラタラな自分に苦い笑みがこぼれる。


あれ、そう言えば今日は勃たない…。

昨日ちょっと醜態を晒し過ぎたから、精神的なものかもしれないな…。


「…ああ、ありがとう。」

「あ、…はい、あ、あの、こっち…どうぞ。」

思いっきりテンパりながら、あたふたと部屋へ招く俺。

「えっと、…なにか、…その、…飲まれますか?」

「ん?あ、ああ。それじゃあ…。」

かなり動揺しつつ聞いた俺に、答える会長。


「こ、コーヒー…紅茶、お茶、あと…えっと…水、アクエリ…」

「ククッ…コーヒーを頼む。」

可能なものを片っぱしからあげていると、会長が声を上げて笑う。


その笑顔が、本当に昨日と同じで…。

ああ…、やっぱり…俺、…。

胸がきゅうっと締まって、それを誤魔化すために無理矢理、顔の筋肉を動かしたのだが、それは失敗する。


昨日の醜態の理由に気付かれてなくて、安心したような…、

告白を気にも留めてなくて切ないような…、

普通に接してくれて嬉しいような…、

普通過ぎて逆に、悲しいような…、

そんな感情がグルグルと回って、思わずポロっと涙が零れてしまった。


「な、那須?」

「あ、ご、ごめん…なさい、何か、今、おかしくて…。」

「…、ちょっと座れ、」

「い、いえ、俺、コーヒー…」

「いいから。座れ。」

少し強めの口調で言われて、どうしようもなくソファーに座る俺。


「…聞きたいんだ。」

「…、何を…」

流れる涙を慌てて拭い、スンと鼻をすすって、会長を見た。

そんな俺に、薄く笑って、頭を撫でてくれる会長。

ああ、駄目だ。

心臓が、死にそう。

嬉しさと、緊張とで。


「お前、昨日俺のこと好きだって言ったな?」

「…。」

沈黙は肯定だ。

それでも、俺は何も言えなかった。

どうしても、断った理由は話せない。

「でも付き合えないとも言った…。昨日はその理由を考えに考えたが、どうしても分からねぇ。」

「…。」

「振られてかなりヘコんだけど、でもお前は付き合えないって言うし、諦めようと思ってたんだ。」

「…。」

「…なのに、こんなの見せられちゃ、諦め切れねぇよな…。」

会長はそう言って、俺の目元を指で擦った。


「…泣いたのか?」

「っ!」

こんなに腫れて…と、まるで会長が痛いみたいに、顔を顰める。

「…なぁ、どうして泣いた?」

「…。」

「こんな腫れるまで…、何がそんなにお前を苦しめる?」

「…。」

止まっていた涙が、また溢れてきて、でもそれを見られたくなくて俯く。

すると会長に抱きしめられた。

「…何を、考えてる…、何を、怖がってるんだ?」

梳くように髪を撫でられて、会長の肩に顔をくっつける様な体勢。

必然的に、会長の口が俺の耳元にくる。

その瞬間に、ゾワリと背から這い上がってくる感覚。

あ、と思う間もなく、あそこが元気になってしまった。

この体勢だ、バレない筈がない。

身体を離そうとするも敵わず、ギュッと目を閉じた。

何を言われるか、分かり切っているのに、それを会長の口から聞くのが凄く怖い…。

「…那須、…ん?…お前、」

「ご、ごめ、なさい…。」

「は?…ああ、成程。」

逃げを打つ身体を更に抱きとめて、耳に口づけを落とす会長。


「これが、理由か?」

ああ、バレてしまった…。

俯いて、首を横に振るも、隠しようのない事実に、涙腺が崩壊した様に涙があふれた。

それなのに、会長は、何故か嬉しそうな顔をして、俺の顔を持ち上げる。

何を言われるか…。

ぎゅうっと目を瞑る。



「…超、可愛い…。」


「…、…、…へ?」

「何、そんな事気にしてたのか?健全な証拠だろ?」

「…だ、で、そ…」

だって、でも、そんな…全てが言葉にならず、はくはくと口を動かす俺。

そんな俺の目元にキスを一つ。

「それに…」

俺のことがかなり好きっていうのが伝わって凄ぇ嬉しい…と耳元で囁かれた。


「っ!!」

思わず耳を押さえる。

これ以上ここで何か囁かれたら、死んでしまう。

心臓発作ものだ。

唯でさえ、ヤバい声なのに、ワザと低くするとか、…もう、無理…。

マジで死にます、俺。


「お前、耳も弱いよな…。ちょっと囁いたら、いい声出して…。」

「なっ…、…」

それは耳じゃなくて、声だ…と言いたいのだが、何せ言葉にならない。

要するにキャパオーバーなのだ。


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あきゅろす。
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