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■耳から始まる恋もある!
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スースーと寝息の音がする部屋を覗いて、清はホッと息を吐き出した。

ヨイチにはいつも驚かされるけど、あれ程までに泣くのを見たのは初めてだった。

明るくて、いつも笑っているヨイチが、物凄く痛そうに泣いていた。

理由は会長だ。

鈍くないようで…鈍いヨイチ。


「…会長が…気持ち悪いって思う訳ないだろ…。」

僕は、一つ呟く。

気持ち悪いと思うのなら、まずヨイチの手首はああはならなかっただろうし、ヨイチが逃げないとマズイという状況に追い込まれることも無かっただろう。

それにヨイチは逃げてきたと言っていたが、あの会長が逃がす訳がない。

状況は分からないけれど、会長に隙が出来る、つまりヨイチの告白に対する返事に、かなりショックを受けたのだと考えられる。

なんせ本人に自覚は無いが、気に入った人間は、全部側に置きたがる性格だ。

自分の恋人がその対象なだけに、微妙に複雑だけど…。

それ故、気に入る人間は非常に少ない。


それなのにあの会長が、昨日会ったばかりのヨイチを呼び寄せた。

それが何を意味するか…。

親衛隊が動かなかったのがいい例だろう。

周囲は分かっているのだ、会長の本気を。

本人と、肝心な対象者ヨイチは全くもって気が付いていないが…。


とそのとき、ブルブルと携帯がポケットで震える。

開くとそれは恋人からのメールだった。


内容は、ヨイチのこと。

大丈夫だったか、という文面に続き、あのバカが沈んでいたから…という理由が綴られていた。

それを見てクスリと笑う。

あのバカ、つまり会長が、やはりヨイチに振られてヘコんでいるらしい。

ヨイチを泣かせたのだ、少し、いい気味だ。

そして、呟いた。

…ほらね、と。


でも、このままでは離れてしまう。


お互いに想いあっているのに、些細なすれ違いで、交わらなくなってしまうのだ。


「…だめだ…。」

フーッと息を吐き出す。

このままじゃ駄目だ。

会長なんてどうでもいいが、ヨイチにあんな痛そうな顔で泣かれるのは最後にしたい。

ヨイチには、笑った顔が良く似合うから…。


何があった?というメールの問いに、ちょっと頼まれてくれる?と返信し、僕はニヤリと笑ったのだった。


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あきゅろす。
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