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■始まりはここから 
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「…なぁ、」

「ん?」

手持無沙汰なのか、注文パネルを弄っていた新庄は、くるりと頭だけこちらに向ける。

話を振れば、きちんと返答してくれるようだ。

「名前、しんって読むのか?」

「…いや、あらた。」

「そうか…。」

書類にフリガナがなく、気になっていたのだが、と、長谷は一人頷く。

そんな事を考えていると、

「…なんか、気、遣わせて悪いな。」

と、新庄がボソリと呟く。

「いや…。」

この空気のことだろう。

どうやら、新庄も、戸惑っているらしかった。

少し困ったように、眉間に皺か寄っている。



と、そのとき、扉をノックする音。

料理が運ばれてきたようだ。

そのウエイターにきちんと礼を言い、手まで合わせる新庄。

思わず、ポカンとした顔でまじまじと眺めてしまった。


「…なんだ?」

あまりに見過ぎていたのか、居心地の悪そうな視線で尋ねてくる。

「…お前、本当に不良か?」

「…、…違うけど。」

そう言うと、カレーを口にほおり込む。

そして咀嚼しながら、さらにポカンとしていた長谷を見て、ゴクリと飲み込むと同時に、更に一言。

「ただの噂。」

ま、どっちでもいい…と呟きながら、カツカツと、カレーを混ぜた。

「…そうだったのか。」

「ま、こんな格好してるし…。」

確かに、眩しいくらいの金髪に、着崩した制服、ピアスじゃらじゃらで…と、ここまで考えた時、ふと気付いた。

「ピアス、片耳に一つか?」

「あ?ああ、何個も付けるの、面倒。」

「…。」

金髪なんて、そう珍しくない。

これくらいの着崩しも、沢山いるはずだ。

ピアスに至っては、たったの一個。

長谷は片耳に三つ程開いており、数で言うなら、長谷の方が多いくらいだ。

目つきは鋭いが、元々目が細めなのだろう。

実際会ってみても、整ってるなと思いこそするが、怖いとは思わない。


ならば、何故、そんな噂が立ったのだろう。


相当、聞きたそうな顔をしていたのか、チラリとこちらを窺った新庄は、

「…関目。」

とだけ呟く。


関目と聞いて、思い浮かぶのは、あの真っ赤な髪と、残虐な性格。

一度、偶然喧嘩の現場に居合わせた事があるが、もう、思い出したくない程にぐちゃぐちゃのデロデロだったのだ。

当時、三日程、寝込むくらいには…。

パンを貰っといてなんだが…。


「…どういう、関係なんだ?」

「…ペット…みたいな友達?」

懐かれてる…と、零す。

「それは…」

「迷惑はしてない。」

長谷の言外を読み取って、そう言う新庄。

何を思い出したのか、フッと顔が和らぐ。

「…」

「それに、周りに、近寄られなくていい。」

「…、…そうか。」

そこで話は終わる。

というより、終わらせたのだ。

迷惑ではない、といった新庄の顔。

関目を思ったのか、綻んだから。


たかだか会って数時間の人間に、何故嫉妬のような感情を覚えなければいけないのだろうか。

長谷は、自分自身の気持ちに戸惑いつつも、目の前の食事に専念したのであった。


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あきゅろす。
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