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■始まりはここから 
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「ククッ…どうでもいいか?風紀委員長なんて肩書きは。」

「いや…その、悪い。」

「クククッ…いや、構わない。俺も、どうでもいいしな。」

「…。」

「だから、名前を覚えてくれ。」

そういう清水に、一つ頷く新庄。

「俺の名前は、清水 一(シミズ ハジメ)。これからよろしくな。」

「ああ。こっちこそ。」

差しだされる手に、手を軽く当てる新庄。

清水は、握手のつもりだったらしく、一瞬目を見開いてまた笑う。

その顔を、新庄は、まじまじと見つめていた。


「…ん?なんだ?」

「…いや、お前、笑うと…変わんね。」

さっきも思ったんだけど…と呟く新庄に、不思議そうな顔をする清水。

「変わるか?」

「あー…ま、いいんだけど。」

笑うと優等生の顔から、一気に男臭くなる。

ワイルドさが増すというか…。

ま、いいか。

新庄がそんな事を考えていると、ウエイターによって運び込まれる何か。

燃費の悪い長谷が、デザートでも注文したのかと思いきや、置かれたのは清水の前で。

しかもパフェ。

割と小さいが、食後のデザートというには立派過ぎるそれ。

よく可愛らしい男子生徒が食べているものの、その姿は休日のおやつ時に見られる程度である。

それを昼ごはんの後に食べるとは…。

キツネうどんといっても、大盛りで、それなりに量があるにも拘らずだ。


「…お前、よくそんなもん食えるな。飯の後だろ?」

長谷も呆れたように呟く。

それに対し、少しムッとした顔で、

「糖分は頭にいいんだぞ。」

と、反論する清水。

そうは言っても、実のところ食べたかっただけらしい。

「糖分って、お前、うどん食ってただろうが。デンプン過剰だっつーの。」

「…いいだろ。」

と、少し照れたように、気まずそうに生クリームを口に運ぶ清水に、

「まぁ、いいけどよ…。」

と、食後のお茶を啜る長谷。

新庄に至っては、興味すらないようで、また注文パネルをいじりまわしていた。

そんな新庄に

「一口、どうだ?」

と、声をかける清水。

「あ?あー…いいや。悪いな。」

差しだされるスプーンに乗せられた、生クリームとアイスを一瞥し、甘いモノが余り得意ではない新庄は、手を前に広げ、断る。

清水は気にした風でもなく、そのスプーンを口へと運ぶ。


味を楽しみながら、時折顔をほころばせる、その様子に、清水の観察の方がパネルよりも面白いと気付いたらしい新庄。

不躾にも、じろじろと観察を始めた。


そんな視線に清水が気付かない訳もなく…


「…何だ?」

「…。」

「…?」

「…ほんと、ギャップ。」

「…は?」

「…いや。気にするな。」

という気になりまくりの会話をされ、清水は困惑する。

しかし、スプーンが口と器とを往復するにつれて気にならなくなったのか、一心に食べる姿に、新庄は口角をつりあげた。

その顔をチラリと見た長谷が、僅かに眉間に皺を寄せたものの、誰も気づかず、あっという間にパフェが無くなる。

ああ、清水は満足そうだ。

新庄は新庄で、腹が満たされ、眠気が襲ってきたらしい。

大きく欠伸をする。


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あきゅろす。
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