アラセルバ王国のティオフェル1-1 時空を越えた不思議な出会い アラセルバ王宮・寝室 国王メディ(39)とまだ幼き王子ティオ。 メディ「テオフィル、お前も王子。将来はこのアラセルバの国王となる男だ。」 ティオ「はいっ。」 メディ「だからな、何かあったときのためにお前も知っておくべきだろうから話しておこう。このアラセルバには秘密の予言書が隠されているのだ。」 ティオ「秘密の、予言書…ですか?」 メディ「そうだ。しかしただの予言書ではない、とてつもなく恐ろしいものなのだよ。」 ティオ「どんな風に恐ろしいのですか?」 メディ「日蝕と流星群が重なる年がまれにあるそうだ。その年に予言書が開かれこのアラセルバに災いをもたらすと言う予言が書かれており、必ずしも当たっているのだよ。」 ティオ「では父上、アラセルバを災いから守ることは出来ぬのでしょうか?」 メディ「一つだけある…。」 ティオ「何ですか!?教えてください、父上っ!!」 メディ「(ティオに翡翠の首飾りをかける)この首飾りを付けたものが予言書を捜し出して、その災いの年に封印の儀式を行うのだ。」 ティオ「封印の儀式を?」 メディ「そうだ。予言書は何処かに隠されており、未だに其れを見つけ出したものがいないのだよ。だからティオ…。この儀式を行うものはこの首飾りを付けている、王族のものでなければならないのだ。予言書の隠し場所の暗号を解けたものはいない…」 ティオ「分かりました、父上…でも、どうやって…」 メディ「災いの年には、必ず前触れがあるのだ。小さな戦争が続き、軈て大きな戦になる。その大きな戦が印だ。」 ティオ「はい。私は必ずアラセルバを守るいい王になります!!」 アラセルバ王国 数年後、ティオは9歳になる。邪馬台国との戦が堪えなくなる。 ティオ「父上っ!!母上っ!!」 メディとアディラ(35)が邪馬台国に捕らわれる。 ティオ「やいっ、何をするっ!!」 アディラ「テオフィル、母上の事は案ずるな!!強く生きなさいっ!!」 メディテオフィル、アラセルバを頼んだよ。父のいったことを忘れるな。」 ティオ「嫌です!!お二人が行かれるのなら私も死にます!!お二人なしで、一体これから私にどう生きろと言うのです!?どうやってアラセルバを守れと言うのです!?私はまだまだ未熟な子供なのです。お願いです、行かないで下さいっ!父上、母上っ!!」 アディラ「強く生きなさい、テオフィル!!」 同・王宮の寝室 ティオ(12)、びっしょりと汗をかいてはっと目覚める。 ティオ「…夢か…」 そこへブブ(35)が入ってくる。 ブブ「王子様、如何なされました?酷く魘されておいででしたよ。」 ティオ「ブブか…」 ティオ、青ざめて放心状態 ティオ「いや…何でもない。ただ、昔の夢を見たのだ。昔、私が幼い頃ここで戦があったとき、父上が邪馬台国に殺され、母上が連れていかれたときの夢だ…。」 ブブ「王子様…」 ティオ「なぁブブ、私には嫌な予感がしてならぬのだ。近々、あのときみたいに再びアラセルバを攻めるものが現れ、戦場化するのではないかと思えてならぬのだ。邪馬台国は何故にアラセルバを憎むのだ?何故にアラセルバを攻めてくる?」 ブブ「アラセルバはとても大きな国であるからでしょう…。それから、向こうではアラセルバには秘宝があると噂です。なので、恐らくその財宝を…」 ティオ「財宝を?秘宝だと!?アラセルバにその様なものが!?(笑い出す)領土の大きさは分かるがブブ、秘宝など、ある筈がない!!王子の私ですら聞いたことがないのだ。」 ブブ「左様にございますか。もしあるのなら私も一度おめにかかりとう…」 ティオ「そんなの私もだよ。」 ティオ、首にかけたペンダントを手にとって見つめる。 ティオ「父上…母上…」 ブブ、黙ってティオを見つめている。 尖り石遺跡公園(夜) 柳平麻衣(11)、岩波健司(11)、小口千里(11)が、芝生に寝ころんで空を見ている。流星群が空を降っている。 健司「なぁ、こんだけ流れてんだ。 いくつだって今日は願い事できるな。…俺、バイオリンでワルシャワの名門行きたいな」 千里「僕はピアノがもっと上手くなりたい。」 麻衣「私は、父さんのような警察官になりたいわ。」 健司「警察官 、お前がか?(笑い出す)お前 、女のくせにバカな冗談言うなよ。」 麻衣「あら、 冗談なんかじゃないわ。 女だでってナメんじゃないに。(たちあがって近くにあった木の棒を握る)馬鹿にするんだったら一回私と勝負しな!!」 健司、千里、ギクリとして麻衣を見る。麻衣、いたずらっぽく笑って再び寝転ぶ。 麻衣「ああ、ほいだけどさ ここって 縄文期から5000年の地じゃあ! 今まで 数え切れないくらいの人がここに住んでた…」 千里「当時の人たちも今の僕らみたいに、 流星群を見たのかな? どんなお願いしたんだろう」 健司「国の平和とかじゃね? なんか昔は、ここにでっけぇー王国があったっつー話だし。」 麻衣「なんか不思議ね、なら明日、せんちゃんのお母さんと一緒に考古館に入ってみまい!色々とわかるかも。」 千里「うん!!…ん?」 三人、目を丸くして固まる。 千里「なんだろう…あれ」 健司「さあ…」 麻衣「なんかこっちに向かってくるに!!」 空から大きな光が三人めがけて襲ってくる。 三人「わぁーーーっ!!」 三人、恐る恐る目を開ける。 千里「今のなんだったの?」 健司「でもよかったよ。俺たちも街も、大丈夫だったみたいだしな。」 麻衣「目の錯覚?」 三人、見合って首をかしげる。 千里「まぁいいや。とにかく、そろそろ僕の家へ戻ろうよ。休も…疲れちゃった」 麻衣「私も」 健司「俺も」 三人、立ち上がって歩き出す。 千里「…。」 歩き続ける三人。 麻衣「あらちゃんの家は こんなに遠かったかやぁ?」 健司「へーとっくに着いていいはずだぜ。道間違えたんだろ!?」 千里「うん…おっかしいなぁ、夜のせいか何も見えないし…でも灯り一つ着いていないだなんて…(身震いする)何か僕、トイレにも行きたくなってきたし…どうしよう。」 健司「俺もへーへとへとだよ。腹へったしさぁ…。」 麻衣「私も…ん?」 三人の目の前。竪穴式住居らしきものがある。 麻衣「あははは、何だ二人とも見なや!!私達多分、今までずっと公園内をさまよっとったんよ。尖り石の復元住居がある!」 健司「ふんとぉーだ!!よかったよ、道に迷ってなくて。な千里、夜なんこんなとこ人も来ねぇーよ。だで、ほの辺でやれよ。」 千里「え、嫌だよ僕。」 健司「大丈夫だって。俺らまだ子供なんだで!!…っつーこんで俺も。」 健司、草の中へ走っていく。 麻衣「(赤くなってククッと笑う)嫌ね、恥ずかしい。…でも…」 住居の中へ入る。 麻衣「わぁー、結構この中って広かったんね。ほれに涼しいしとても気持ちがいい!!干し草と毛布もあるに。」 千里も恐る恐る入ってくる。 麻衣「なぁ、健司にせんちゃん、居心地いいし一晩くれぇならいいら?今晩はここで寝泊まりするじゃあ。」 戻った健司も入ってくる。 健司「お、ふんとぉーだ!!面白そうじゃん。ほれやろうぜ!」 千里「え…えぇーっ…嫌だよ僕。」 健司「じゃあお前はどうすんだよ!!これから一人で家まで歩くか?へー11時なんだぜ。」 千里「だ…だって、万が一…日本狼とか…マンモスとか…。」 健司、麻衣、吹き出す。 二人「ーっぷ!!日本狼に、マンモスっ!!(大笑い)」 麻衣「バカはよしてにせんちゃん、あんた、二年間豊平に住んどって今までに一度でも日本狼とかマンモス、見たことがあるけ?」 健司「時代を考えてみろよ。いくら尖り石遺跡っつったって、今時ほんなもんいるんけねぇーだろうに。」 千里、不貞腐れたように拗ねてむっつり。 麻衣「ほんな顔しんのよ。な!明日は尖り石祭ずら。早く起きてここを出んくちゃ。明日は賑やかくなるに。」 健司「んだ、んだ。だで、腹も減ってるし…俺へー寝るわ。お休みなしてぇ。」 麻衣「8時にはここを出るに。せんちゃんも早く寝。お休みなしてぇ…」 二人、藁の上に横になって寝入る。千里、暫く不安げに二人を見ているが軈て藁の上で寝入る。 (翌朝。竪穴式住居のなか) 三人が目を覚ます。健司は起き上がると直ぐに住居の外へ出てキョロキョロ。 健司「こ…これは一体…」 麻衣も外に出てくる。 麻衣「あ、健司はよーん。どうしただ?」 健司「なぁ麻衣…信じられねぇーんだけど…(蒼白になっている)ちょっと俺ら、やべぇー事んなっちまったかも…。」 麻衣「やばいこん…って?どーゆーこん?」 健司「つまり…俺達へー、このまま当分は帰れねぇーかも。」 麻衣「はぁ!どいこんよ、ほれ!!」 健司「(指差す)あれ見ろよ…」 健司の指の先。遥か遠くに古代風の大きな建物が見える。 健司「今時、尖り石にあんなのあったか?」 千里が眠そうに目を擦りながらやって来る。 千里「おはよぉー…二人ともどうしたの?」 麻衣「あぁ…せんちゃん、おはよぉー。」 健司「千里…」 千里、不安げに深刻そうな二人を見る。 兵団が走ってやってくる。三人、驚いて急いで住居に逃げ戻る。兵団達と、仮面と鎧を付けたブブ(35)がやって来る。 ブブ「王子様のご命令だ。この国で生きる男は皆殺しに、女は捉えて奴隷にするのだ!!」 兵士1「はい、ブブ様。しかし、この集落の者は皆、捉えました。後は…」 千里「ひぃーーーっ!!」 麻衣、健司、千里の口を押さえる。兵団とブブ、立ち止まる。 ブブ「まだ残っておるではないか!探し出せ。直ぐに捕まえろ。」 兵団「はっ。」 (住居の中) 千里「(半泣き)一体これはどういう事なんだよ!!これが尖り石祭!?こんなの違うよ、だっていつもは…。(立ち上がる)僕帰る…ママに…」 健司、出ようとする千里の手を引き留める。 健司「駄目だ千里、今はまだ出るな!!」 千里「何するんだよ、僕は帰るんだ。離せっ!離せっ!」 健司「ばか野郎!今でてったら殺されるぞ。こんなところで死にてぇーのか?」 千里を無理矢理座らせて、肩を押さえる。 健司「なぁ千里、落ち着いてよく聞け。俺達…当分は家に帰れなくなったかもしれないんだ。」 千里「(蒼白になっている)ど…どういう事なんだよ、それ。」 兵士1「おりましたぞ、子供が三人。男が一人に女が二人です。」 千里「女って…僕はっ!!(食って掛かろうとする)」 健司「んなこんいってる暇今はねぇーだろうに!!」 麻衣「とりあえず、ここはひとまず…逃げるに!!」 健司、千里の手をとって三人は住居を無理矢理壊して逃げ出す。 千里「どうしよう、追ってくるよ!!」 健司「止まるな、走り続けろ!!」 麻衣「いくら走ったって子供と大人なんですもん無理よ!!直ぐに追い付かれちゃうに。」 健司「バカ、諦めるな!!」 三人、よたよたとなりながらも走り続ける。 アラセルバ王国・都市部 大きな建物が立ち並び、兵士達と奴隷達が動き回っている。三人、逃げ迷ってくる。 麻衣「ここは…?」 健司「油断するな、ここには兵士も多い。」 千里「じゃあ、どうすんだよ!?」 健司「…仕方ない…(服を脱ぎ、パンツのみになる)俺は兵の男に化ける。千里と麻衣はそ知らぬ顔をして奴隷を装え!!」 千里「えぇ!!」 健司「このまま死にてぇのかよ、二人とも。」 建物と建物の間から手が伸びて、三人を引き込む。 三人、大きな土器のなかに隠れるように言われ、言われるままに隠れる。エステリア(13)が息を潜めて兵の動きを影からそっと伺っている。 エステリア「良かった…皆さん、危ない所でした。」 三人、土器から顔を出す。 麻衣「助けてくださったのね。ありがとうございました。」 千里「あなたは、誰?」 健司「おいっ!!説明しろよ、姉さん。一体ここは何処で、何が起こってんだよ!!」 エステリア「詳しいことはここではお話出来ません。とりあえず私に着いてきてください。あなた方を安全な場所へご案内致します。」 エステリア、三人に着いてくるよう合図する。三人もエステリアに着いていく。 アラセルバ宮殿 三人、薄暗い地下階段を降りていく。 エステリア「着きました。ここがアラセルバ王国の宮殿です。どうぞ、中に。」 (ある一部屋に入る) 三人、キョロキョロとする。 エステリア「今、アラセルバ王国は邪馬台国という国と仲がよくありません。何せ…」 ティオ(12)が入ってくる。 エステリア「王子様!」 ティオ「エステリア…何事だ。(三人を見回す)この者たちは誰だ。(剣を握る。)さては、お前らは邪馬台国の者だな。」 千里「ち、違うよ!僕ら邪馬台国なんてしらないもん。」 健司「ほーだよ、勝手に決めつけんじゃねぇ!!」 麻衣「あんたら一体何者なのよ。」 ティオ「無礼者!!私はこの国の王子だ。」 三人「王子様!?」 ティオ「そうだ。で、これはエステリア、私に仕える侍女だ。」 麻衣「エステリアに…王子様…」 健司「で、この騒ぎは一体何なんだよ王子!!」 ティオ「我が国に、最近は邪馬台国の使者が忍び込むようになった。恐らく、アラセルバの領土を乗っ取ろうと狙っているのだろう。そして私を倒し、アラセルバ我が物にしようと企んでいる。」 三人に再び剣を向ける。 ティオ「お前たちもその一味なのだろう!!女王卑弥呼の使いなのだろう!!名乗れっ!!」 麻衣「知らないわよ、そんなの!!」 ティオ「黙れっ!!誰か、いるか?」 番兵「はいっ、王子様。」 ティオ「この怪しい者共を始末せよ。ひょっとして卑弥呼の使者かもしれぬ。まだ子供だ。三人とも牢にぶちこめ。」 ブブ「はい、只今…。」 エステリア「王子様!!」 番兵、三人を連れていこうとする。 ティオ「ん?ちょっと待て。」 番兵「何でしょう、王子様…」 ティオ、千里に近付く。千里、泣きそうな顔で震えている。 ティオ「お前…(仮面をとる)」 千里「ふぇっ?」 ティオ「何故だ!?何故…私によく似ておる…」 千里「何故…と言われても…」 ティオ「いいだろう。他の二人は牢にぶちこめ。この娘だけは」 千里「僕は娘じゃない!!男だ!!」 ティオ「何だ、ハハハ!!女のような顔をしとる。お前は男なのか。とにかく、お前には私の側で奴隷として動いてもらう。何せお前は私によう似とる。邪馬台国の囮にするには最高だ。」 麻衣「お、囮にって…」 二人、番兵に縄で縛られて連れられていく。 ティオ「エステリア、この者に私の衣装を持ってきて着せるように。この者には、私の代理をしてもらう。」 千里「だ…代理って…僕が、王子様ぁ?…あぁ…」 千里、放心状態になって静かに泣き出す。ティオは笑い出す。 ティオ「アハハハっ!!王子になると聞き、驚いたか。早速粗相を抜かす王子もないぞ。」 エステリア「(衣装を持ってくる)王子様、」 ティオ「ほら、早く着替えろ。私そっくりの顔して…見ている私が恥ずかしいぞ。私はそのようなことはしない。」 千里「…。」 牢屋 暴れる健司と麻衣。牢屋には鍵がかけられ、番兵は去っていく。 麻衣「こらっ、出しなさいよ!!ここから出しなさい!!人の話も聞かずに酷いわ!!」 健司「俺たちが一体何したってんだ!!出せ、早くここから出せっ!!…くっそぉー…。」 二人、ヘナヘナと床に脱力して座り込んでいる。 健司「なぁ麻衣…これから俺達どうする…?」 麻衣「どうするって、仕方ないじゃない…こうなったら意地でも」 健司「意地でも?」 麻衣「あんな王子、反抗しまくってやりゃあいいのよ。とりあえずまずは、脱獄ね。」 健司「だ…脱獄って…。お前正気か!?そんなことして見つかってでも見ろ、今度こそ殺されるぞ!!かといって、仮に逃げられたとしても俺達には帰るところもねぇーんだ。」 麻衣「だで何?」 健司「何って…」 麻衣「脱獄したら帰るなんて誰もいっとらんに。勿論!!(得意気に)折角来たんですもの、こんな大冒険のチャンス現代ではほーないに。無駄には出来ないわ…」 健司「ま…まさかお前…」 麻衣「ほ、ほのまさか。私達が邪馬台国の手下じゃないってこんを証明して見せるのよ。つまり…私達の手で、アラセルバ王国をお守りするの。」 健司「(呆れてため息)さっきはとことん王子に反抗するとか何とか言ってなかったですかねぇ?」 麻衣「えぇ、言ったに。あんな王子に誰が従うものですか。私は、王子のためにアラセルバ王国を守るんじゃないの。私達が助かるためよ。私にいい考えがあるわ。このままでいたくなかったら私に協力しな!!」 健司「はぁーっ…。」 ティオの部屋 千里とティオとエステリア。 ティオ「お前は何かがあったときの囮だ。ここにいろ。私はしばらく城をあける、父上の隠した予言の書を見つけ出しに行かなくてはならない。」 千里「予言書…ですか?」 ティオ「あぁ。お亡くなりになった父上がどこかに隠してある言われる予言書があるのだ。父上が仰るにはその予言書に書かれたことは全てが成就する。よいことも、恐ろしいことも。でもそれは予言書が開かれた時だけ…。予言書が開かれるのは、日蝕と流星群が重なる年であり、兆候として大きな戦が始まるらしい。私はまさに、それが近年だと思うのだ。何せ、邪馬台国はアラセルバを狙っている。邪馬台国が攻め入るのも時間の問題だろう。」 千里「そ、そんなぁ…それはもうどうしても避けられない事なの?」 ティオ「いや…一つだけ、避けられる方法がある。」 千里「何?それはどんな方法ですか!?」 ティオ「分からない…その封印の方法は予言書に書かれている。だからどうしてもまずは、その予言書を見つけ出さなくてはなるまい。」 千里「で、でも、その…恐ろしい事…って?」 ティオ「父上は、アラセルバに災いをもたらすとおっしゃっていた。」 千里「えぇ!?」 ティオ「恐らく、この国が滅びるのだ。」 千里「国が滅びるって…それじゃあ僕ら…」 ティオ「あぁ。だからこそ、食い止めなくてはならないのだ。千里、アラセルバの為だ、身代わりになってはくれぬか?」 千里、困ったようにもじもじとしているが軈て決心したようにティオを見る。 千里「分かりました。僕がここで留守番を致しましょう。その代わり…」 ティオ「その代わり、何だ?」 千里「なるべく早く帰って下さいね。」 ティオ「あぁ。私もなるべく早く事を終わらせるつもりだよ。留守番を頼む。」 千里「はいっ。」 ティオ、出ていく。千里、不安げに肩をすくめる。 エステリア「大丈夫です。自信をお持ちください、」 千里「でも僕、王子さまの暮らしなんてなんにも知らないよ。」 エステリア「あなたは、あなたなりにしていればいいのです。私がお側におります。」 千里「敬語はよしてよ、僕、あなたよりも身分なんてずっと低いんだから…」 牢屋 健司、鉄格子を外そうと奮闘。麻衣、腕を組んで考え込んでいる。 健司「おいっ、脱出するっていいだしたのはお前だろ!!なんで俺だけにやらせるんだ!!お前もちったぁ…」 麻衣「今、考えてるわよ。あ!!(手を打つ)これだわ!!」 健司「何?何かいい案でも来たか?」 麻衣、頷いてリュックの中から裁縫セットを取り出して服を脱ぎ出す。健司、赤くなって目をそらす 健司「な、何やってんだよお前!!」 麻衣「黙ってて。今いい方法を思い付いたんだから!!」 麻衣、来ていたワンピースに針を入れて縫い出す。 麻衣「よしっ、でーきたっと。」 麻衣、アラセルバの民族衣装宛らにリメイクした服を着る。 麻衣「あとは…健司、あんたのもやってやる。」 麻衣、強引に健司の服を脱がせて同じことをやり出す。 (暫く) 麻衣、健司、すっかりアラセルバの民に扮している。麻衣、高い石の壁を指差す。天井には小さな穴。 麻衣「あとは、ここをよじ登るのよ。」 健司「は、はぁ!?バカ言うなお前は!!ほんなこと出来るかよっ?!」 麻衣「死にたいの!?」 健司「バ、バカかお前は!それこそ落ちたら死ぬぞ!!」 麻衣「だで死なんように登るんよ。」 麻衣、するすると石垣を登り出す。 麻衣「意気地無しっ!!」 健司「ったく、どうなったって知らねぇーぞ!!」 麻衣「大丈夫。ほいじゃああんたはここにいて!!必ず助けに来るで。」 健司「…。」 健司、麻衣を見上げている。麻衣、あっという間に天井の穴から外へ出ていく。 健司「驚いた…怖いもん知らずの女だぜ…(呆気にとられている)ったく…」 ジャングルの道 ティオ、暗号が書かれた紙を片手に気難しそうな顔で歩いている。 ティオ「父上が残してくださった暗号…これさえ解ければ、予言書の隠し場所が分かるのに…駄目だ…何なんだろう、さっぱりわからない。早くしなければ…」 王宮・ティオの部屋 千里とエステリア 千里「ねぇ、エステリア、あの番兵は?」 エステリア「番兵は、只今お出掛けになられました。」 千里「良かった…」 エステリア「はぁ?」 千里「では、王子の命だ!!直ちに牢に入れられた二人を助けに行く。」 エステリア「はいっ!!」 千里、エステリア、部屋を出ようとする。そこへ下女に扮した麻衣。千里、震えながら剣を向ける。 千里「な、何者だ!?」 麻衣「せんちゃん、エステリア!!」 千里「(剣をしまう)麻衣ちゃん!!どうして?」 麻衣「上手く脱獄してきた。」 千里「健司君は?」 麻衣「(ふんっと鼻をならす)あいつ、?意気地無しだで置いてきた。」 千里「えぇ!?」 麻衣「だでせんちゃん、今はあんたが王子だだら!?だったら王子の命で。」 千里「分かった。牢は何処?急ごう。」 麻衣「こっちだに!!」 千里、エステリア、麻衣に続いて出ていく。 (廊下) 走る三人。そこへ、如何にも怖そうな番人。 番人「おや、これは王子様。お急ぎでどちらへ?」 千里「命令だ、今すぐ牢のなかの子供を釈放しろ!!」 番人「それはなりませぬ、王子様。」 千里「な、何故だ!?王子の命令に逆らうのか!?」 番人「これはブブ様のご判断でもあります。しかしそのブブ様は今や…」 千里「関係ないっ!!この国の王子は私だぞ。」 千里、人が変わったかのごとく、番人に剣を向ける。 番人、恐れ戦いて、鍵を千里に投げ渡すと去っていく。千里、へなへなっとその場に崩れ去る。麻衣、エステリアが千里を支える。 麻衣「大丈夫、せんちゃん。」 エステリア「王子様、大丈夫ですか?」 千里「(放心状態)こ…怖かった…(一筋の涙が流れる。)」 麻衣「でも、今のせんちゃんなんだっただ?まるで人が変わったみたいだった。」 エステリア「えぇ、とても勇敢でしたわ。」 千里「…。」 麻衣「さて、でも鍵がありゃこっちのもんね。急ぎましょう。」 エステリア「えぇ。…さ、王子様。」 腰を抜かした千里の肩を支える。 千里「ありがとう…。」 三人、急いで地下牢へと歩いていく。 牢屋 健司、一人で床に座り込んでいる。そこへ、全景の人々。 麻衣「健司っ!!」 千里「健司君!!」 健司「…麻衣に、千里に…エステリア!!」 エステリア「今は千里さんが王子様です。王子様のご命令に従い、あなた様を助けに参りました。」 健司「お前ら…」 暮らす「さぁ、とりあえずは早く王室へ…」 四人、速足で戻る。 王室 麻衣、千里、健司、エステリア 麻衣「でもね、健司にも見せてあげたかったわ。さっきのせんちゃんとっても格好良かったんだに。まるで人が変わったみたいだった。」 エステリア「えぇ。ティオ王子様そのものでしたもの…。」 健司「えぇ、この千里がか?嘘だ。信じられない。」 麻衣「ね。せんちゃんっ!!」 千里「し、知らないよ!!僕だって何が起きたのか…」 健司「な、だろ。本人も知らないって。きっと夢か何かじゃね?」 千里「そうであって欲しい…。」 健司「でももし仮に、千里にそんな勇気があるとしたら千里、かなりの戦力にはなるかもしれないな…。」 千里「せ…戦力って…?」 健司「今は戦国の時代なんだぜ!!いつ戦争が起きても不思議じゃない。そんなときに!!」 千里「せ…戦争なんて僕…嫌だい!!」 麻衣、肩を落とす。 健司「麻衣、どうした?」 麻衣「あぁ…。(首にかけたスタンプカードを見る)折角このクイズといて応募しようと思ってたのに…もう今日が締切日なのよ。悔しい!!このクイズ難しくて、やっとの事で解いたんだで!!」 健司「なんだ、そんなもんかよ…」 麻衣「そんなもんかよ、とは何よ!!抽選で選ばれた百人の子供には、南米一周旅行が当たったんよ!!」 健司「まじで!?」 麻衣「ほら、食いついてきた。マジだに。」 健司「くっそぉ!!…で?どーいうクイズだったんだ?」 麻衣「これだに。」 首にかけたスタンプカードをとってみんなに見せる。 麻衣「遠き空より降りし光が、鋭き森のその中にありき。軈て光は固まり、石となる。今やそれらは伝説となり、國の宝とし、遺りし足、跡は時を物語る。」 密林のジャングル ティオが、相変わらず頭を抱えながら悩んでいる。が、 ティオ「!?…」 王室 麻衣「この答えは…」 密林のジャングル ティオ「遠き空より降りし光が、鋭き森のその中にありき。軈て光は固まり、石となる。今やそれらは伝説となり、國の宝とし、遺りし足、跡は時を物語る。」 王室 麻衣「つまりこれは、」 密林のジャングル ティオ「(立ち上がる)あの場所の事だ!!」 ティオは立ち上がって走り出す。麻衣は得意気に腰にてを当てて胸を張る。 ジャングルの一角 一番始めに三人がいた場所。大きな力石が置かれている。 ティオ「私の考えが正しければこの下に…」 邪馬台国 蘇我ドルフィン、小野ポテト、蘇我ホースと、卑弥呼。 ドルフィン「卑弥呼様、そろそろこちらに例の者が参られます。」 卑弥呼「いつものあの男か?」 ポテト「はい、恐らく…もう時は長くありません。」 ホース「どういたしましょう…」 卑弥呼「私に聞くなっ!!…やむを得ないだろう…。」 仮面を付け、武装で身を固めた謎の男が馬に乗って走っている。 ジャングルの一角 ティオ、土を掘る。 ティオ「昔、父上よりもずっと昔の時代にここに光の玉が落ちたのだ。このジャングルは尖り森と呼ばれている。光は軈てかたまって石となる…だから、恐らくこの場所しか…あった!!」 ティオ、石の裏の土の中から一冊の古いノートを堀当てる。 ティオ「良かった。これだ!!父上がおっしゃっていた幻の予言書だ!!良かった、これでやっとアラセルバの平和が守れる。しかし、封印の方法とは一体どの様な物なのだろう…。」 ティオ、ぺらぺらとページを読む。 ティオ「外国語だが不思議と読めるぞ…これはまさか、何!?何だって!???」 ティオ、小刻みに震えながら目を丸くする。 王室 エステリア、少し物思い気な表情をして考えている。 麻衣「エステリア、どうしたの?」 エステリア「いえ…でも何かこのクイズとやらは、見たことがあるような気がするのです…それがどこだったか…」 麻衣「えぇ、そんなまさか!!(笑う)気のせいよきっと!!ほいだってこれは私達の…」 健司、慌てて麻衣の口を押さえる。 麻衣(M)「何すんのよ!!」 健司(小声)「バカか!!今ここでこの世界の者ではありませんなんて、言ってみろ!!直ぐ様怪しまれて捕まるぞ。」 麻衣(M)「でも相手は私達の味方、エステリアよ!!」 健司(小声)「とは言っても、ここはアラセルバっつー国で、彼女も一応はアラセルバの民だ。警戒心の強いアラセルバ民族なんだぞ。気を付けろ。」 麻衣(M)「わ、分かったわよぉ…」 エステリア「あ…あのぉ。」 健司「いや、何でもないんだ…」 千里「ところで、ティオ王子様は?いつお戻りに?」 エステリア「分かりません…第一、お探しの予言書の在処の検討もつかないのです…王子様も真面目なお方ですから、見つけられるまで戻らぬと思いますし…数日は…」 千里「そ…そんなぁ…。それじゃあ僕はずっと暫くこのまんま…?(へなへな)たまったもんじゃないよぉ…」 他の三人、笑う。そこへ、メデア。 メデア「王子様、」 千里「誰?」 メデア「メデアにございます。弟様のリオーメディ様がお呼びにございます…」 千里「は、はい。すぐに行きます…(M)みんな僕をティオ王子様と間違えてるよ…そんなに似てるかな…僕ら…」 エステリア「では王子様、私も後程参ります。」 千里「え、僕一人でいくの?何処へ?」 エステリア「何処へって…競技場ですわ。」 千里「きょっ…競技場!?何しに!?」 メデア「王子様!!」 千里「は…はい…」 千里、渋々と後ろめたそうに退室する。健司、面白がって手を降る。 健司「へっ、あいつも少しはあーやってしごかれて強くなんなくちゃいけねぇーんだよ。」 麻衣「でも少し、せんちゃんには可哀想かもね。」 健司「さてと、俺達は…」 熱帯雨林のジャングル ティオ、石の上に座って予言書をまじたじと見つめている。 ティオ(M)「本日晴れの日、見たこともない不思議なものが表れる…一つは正体を隠され、一つは女だ。そしてもう一つは宝石。…これはもしかしてあの者たちの事ではないか?もしそうだとすると、あの者たちは私達の敵ではない…このアラセルバを守ってくれる味方なのだ…そこでその続きだ…。数百年後、空から星が流れ落ちるとき、天上の鏡は乱れ、嵐が吹き荒れる。人は泣き、地は崩れ落ちる。軈て攻め入る敵のため、強く心を持つ。」 ティオ、本を閉じて顔をあげる。 ティオ「そうだ、きっとそうだ。…これは恐ろしいことになったぞ。遂に訪れる日が来たのだ。遂に邪馬台国はアラセルバに攻め入る。しかし、三人は国を守る…いやダメだ!!あの三人を危険な目に…あ…」 王宮・牢や ティオ「子供に用はない!!娘と少年は一週間の後に始末しろ!!いいな。」 (終わる) ティオ「ダメだ!!!」 ティオ、慌てて走り出す。 ティオ「予言書の封印は後回しだ。それより今は、早く城に戻らなければ…頼む、死ぬな、死なないでくれ。」 邪馬台国 一週間の後。卑弥呼、ポテト、ドルフィン、ホースがいる。そこへ仮面をつけたブブ。 卑弥呼「誰じゃ、」 ブブ「お久しぶりで、卑弥呼様。」 卑弥呼「そなたは…そなたは一体誰なのだ!!」 ブブ「卑弥呼様、時は近づきました。そろそろご準備を。」 卑弥呼「何を言う!?私はその様なつもりは…」 ブブ「女王だからと言い、私に逆らうおつもりですか?私に逆らえば、どうなるか…分かりますよね…」 卑弥呼「わ、分かっている。しかし、もう私は決めた!!その様な戦を犯すのなら、アラセルバの民を滅ぼすのなら、私は女王の座を降りる。私には出来ない!!」 ドルフィン・ポテト・ホース「卑弥呼様。」 ブブ「そうか…(薄ら笑い)分かった。」 ブブ、卑弥呼の部屋を出る。 卑弥呼「おいっ、ちょっと待て!!そなた、何を考えておる!!」 ブブ、高笑いをして戻っていく。 ドルフィン「卑弥呼様、あやつは恐らくアラセルバを攻め入るつもりです。」 ポテト「しかしドルフィン、どうやって?」 ホース「決まっとるじゃろう。あれだけの自信なんじゃ、アラセルバをメチャメチャにする良い作があるのじゃろう。」 卑弥呼「これっホース!!お前は一体、邪馬台国の味方なのか、アラセルバを滅ぼしたいのか、どっちだ!?」 熱帯雨林のジャングル 雨が降っている。ティオ、びしょびしょになりながら走り続ける。 ティオ(M)「くそっ、今日で一週間だ…日没までに王宮へ…しかし(空を見上げる)この様な天気では日没なのかどうなのかも分からない、雲がかかりすぎている…」 王宮・ティオの部屋 千里、麻衣、健司、エステリア。そこへメデア。千里はぎたぎたになって伸びており、エステリアが千里を手当てしている。 エステリア「大丈夫ですか、王子様…」 千里「大丈夫じゃないよ!!何してんだよ、ティオ王子様は…」 健司「おい、おい、もっと強くなれよ千里…へーこれで一週間だぜ。」 千里「そんなこと言ったってしょうがないだろ!!僕は元々スポーツなんてやってないんだ。それに大体王子様じゃない。このままティオ王子様がお戻りにならなかったらどうなるのさ?僕、このままじゃ体もたない…死んじゃうよ…」 麻衣「せんちゃん…」 同・牢や 番兵が二人いる。そこへティオ。 ティオ「おいっ、子供を釈放しろ!!」 二人「お、王子様、」 番兵1「こ、子供とは…」 ティオ「惚けるな!!数日前に閉じ込めた怪しき二人組の子供だ!!」 番兵2「あ、あの子供でしたらもういないではないですか。」 ティオ「(青ざめる)な…何だって…!?」 番兵1「い、いやぁだからもういませんよ。ですて王子様が…」 ティオ「そ…そんな…」 肩を落として放心状態で戻っていく。二人の番兵、顔を見合わす。 番兵1「…どうしちまったんだ、王子様…」 番兵2「やっぱり逃がさねぇ方が良かったケ?」 番兵1「しかし、あれも王子様のご命令…逆らえねぇ…」 番兵2「んだ、んだ。一体王子様は何がしてぇーんだ?」 王宮・ティオの部屋 エステリア、千里、麻衣、健司。 健司「(顔色を替える)いや…」 麻衣「どうしただ、健司?」 健司「俺達、もう一つ忘れてねぇーか?」 千里「何を?」 健司「本物のティオの事だよ。」 麻衣「あぁ、あのダメダメ王子様ね。が?どうしたの?」 健司「俺達を牢にぶちこんだのはあいつだぞ。逃げなきゃ、あいつに見つかればどうなる?殺されるぞ!!」 ティオ「そんなことはしない!!」 ティオ、息を切らして入って来る。 四人「王子様!?」 健司、麻衣、警戒体制に入る。 健司「とか何てかいって、」 麻衣「又何だかんだで私達を、」 ティオ「(声を大きくする)だからその様なことはしない!!」 麻衣、健司「えぇ?」 エステリア、千里、安心して微笑む。ティオ、ベッドに座って予言書を開く。 ティオ「予言書をやっと見つけた。この…(暗号の紙を取り出す)暗号が予言書の在処が記された物だ。」 三人は暗号の紙をまじまじ。三人は顔を見合わす。 三人「あーーーっ、これっ!!!」 ティオ「何?暗号を知っているというのか?」 麻衣「いえ、…これよ…」 ティオにクイズの応募用紙を見せる。 麻衣「その暗号がこれと同じなの…」 ティオ「それは、なんだ?」 麻衣「クイズと言うものよ。」 ティオ「クイズ…(二つの紙をまじまじ。)本当だ。そんな筈は…バカな…。これは父上がよりずっと昔の時代にかかれたものだにそれが何故そなたの手に…」 麻衣「ほんなの、私が聞きたいわよ!!どうしてあんたこそ!!」 健司「やーめーろっ!!(二人を止める)それより?王子、ほの予言書って一体何なんだよ。」 ティオ「あぁ…(三人を見る)これを見て分かったんだ。私が間違っていたよ、お前たちが決してここ、アラセルバの敵ではないと。」 麻衣「当然よ。分かるのが遅すぎるんだわ。」 健司「ま、分かってくれりゃあ良いってことよ。」 ティオ「あぁ、生きてて良かった。本当に良かった。」 麻衣、健司、千里、ティオの予言書を見ている。 ティオ「この予言書には、このあとこう書かれている…」 麻衣「何よこれ、日本語じゃないの。」 ティオ「日本語だ?それはどこの言葉だ。」 麻衣「何処って…あんたバカ?」 ティオ「わ、私がバカだと!?」 麻衣「日本語は、この国の言葉に決まっているでしょ!!私たちがいるこの日本の国の言葉よ!!」 ティオ「何を言う!?ここはアラセルバの国だ。日本などと言う国は知らん!!」 麻衣「何いってんのよ、日本人のくせに!!」 張り合おうとするティオと麻衣を引き離す健司。 健司「だーかーらぁー、こんなときに喧嘩はやめろっ!!とにかく王子、」 ティオ「いいよ、私の事はティオと呼んでくれ。テオフィルという名だが、みなは私をそう呼ぶ。」 麻衣「分かったわティオ、私は麻衣。」 千里「僕は千里」 健司「俺は健司だ。ティオ、続きを、」 ティオ「分かった。これから…いつかは分からぬが、近い将来邪馬台国との戦が起きるだろう。そしてその戦争が終結する夜、災いが起きるのだ。この国の終わり…これこそ私たちが今防がなければならぬこと。」 麻衣「ほの封印にはどうしたらいいの?」 ティオ「その封印には…」 ティオ、本を閉じる。 健司「ティオっ!!」 メデア「王子様、」 健司「ったく肝心なときにぃ!!」 ティオ「誰だ?」 メデア「下女のメデアにございます。王子様、」 ティオ「何のようだ、入れっ。」 メデア「邪馬台国からの書が届いております。」 ティオ「邪馬台国から、だと?」 開く。 邪馬台国の書面「アラセルバの王子、邪馬台国はアラセルバに宣戦布告をする。よって兵がアラセルバに向かう。アラセルバも正々堂々と戦のご準備を。」 卑弥呼(F)『ティオ…あなたなら大丈夫ね…。遂に邪馬台国はアラセルバを攻めることとなってしまった…。でも大丈夫です、あなたにはいつもブブ様という父上のようなお方が側におられるのです。母上は忍で出向いては貴方の事をいつでも見ていましたよ。』 ティオ「何だって!?早すぎる、時が早すぎる…どうしよう…」 麻衣「ティオ、邪馬台国が攻めてくるって。」 ティオ「これではもう封印する時間も出来ない…どうしよう。」 千里「ねぇティオ、僕らはどうなるの?」 ティオ「正々堂々、邪馬台国の戦に臨もう。そのあとこの地が終わろうが、アラセルバの勝利を納め、その勝利の下、崩れる大地と共にアラセルバはバラとユリの冠を手に、潔く…死ぬのだ。」 麻衣「ほんな…ほんなこといったら私たち未来人はどうなるんよ!?」 ティオ・エステリア「!?」 麻衣「私達は5000年もあとの未来から来とるんのよ。私たちのこと、友達だと思うのならば…私たちのためにも国を守ってよ。あんた王子だらに!!!(ティオの体を抱く)お願い、どんな危険なことでも私たち、協力するわ。だから封印の仕方を教えて。」 ティオ「…分かった…(口重く、俯く)その国の王子が死ぬことだ…」 麻衣「…え。」 ティオ「ただ死ぬだけではない、それにはもう一つ犠牲が必要なのだ…。」 健司「…何だよ…」 ティオ「美しい娘だ。」 千里「美しい…(麻衣を見る)娘…」 ティオ「封印の寝台の上で王子に美しい娘が口づけをする…それにより炎が燃え上がり、…寝台と二人は焼かれる。それで予言は封印できるんだ。」 健司「そんな…」 エステリア「そんな、まさか王子様…」 ティオ、無言で立ち上がる エステリア「いけません王子様、お考え直しを!!」 ティオ「エステリア、黙れ!!!では、お前は…この者達の歴史を壊してもいいと言うのか!?アラセルバをこのまま滅ぼし、民を見捨てると言うのか!?」 エステリア「ですが王子様が、」 千里「一国を守るため、一刻の王子が死んではなりません。」 ティオ「千里?」 千里「(きっぱり)僕は王子様のお身代わりで、何かあったときの囮なのでしょう。でしたら僕が。」 ティオ「ダメだ、それはいけない!!」 千里「僕が死んでも一国になんら影響はございません。しかし、王子様、あなた様がお亡くなりになってしまえばこの国は誰が支えます?それこそ邪馬台国の思うがままです。」 ティオ「やめてくれ!!今、お前たちは私の大切は友達なんだ。そんなお前たちを見殺しになど出来ぬ。それに、折角お前達の歴史を守ったとしてもお前たちは帰れなくなってしまうのだぞ!!」 千里「なら…」 ティオ「千里、お前が私の代わりにアラセルバを指揮してくれ。」 千里「は?」 ティオ「そう。お前がアラセルバを勝利へと導いてほしい。」 千里「そんな、そんな、そんなの僕には出来ません。」 ティオ「そして…美しい女…(麻衣を見る)お前はとても美しい…。」 麻衣「え、」 ティオ「お前はとても美しい…がお前のような美しい女を見殺しになど出来ぬ。」 エステリア「では、私が…」 ティオ「いや、お前はダメだ。お前は…醜い。」 エステリア、泣いて去っていく。 健司「おい、ティオ!!ほりゃいくらなんでもあんまりだぜ。」 千里「そうだよ、エステリアさんは美人だよ。」 ティオ「私の知ったことか!!」 麻衣「分かりました。」 健司「麻衣っ!!」 麻衣「もし私ごときが王子様のお役に立てるのでしたら、私は死にましょう。この国で私は死にますわ!!」 千里「麻衣ちゃん、やめろ!!」 健司「お前はわざわざここに死にに来たのか!?」 麻衣「ほーよ!!」 健司「はぁ!?」 麻衣「もしかして私たちがこの時代に遣わされたのは、アラセルバを守るためかもしれない。だとしたら、これがきっと私のやるべき事なのよ。せんちゃんは王子様の身代わり、私はこの為に…健司、あんたにだってきっと。だで、私はこの世界に来た意味を、使命をこの身をもって果たしますっ!!」 ティオ「麻衣…ありがとう。でも、私はお前を決して見殺しには出来ないよ。」 考えるように ティオ【そうだ。こんなに素敵なものたちを見殺しになど出来るか…。】 アラセルバ王国・全土 邪馬台国が攻めてきて戦が開始される。千里、鎧をつけて指揮を執っている。勇ましく、別人になっている。 千里「アラセルバ、出陣っ!!」 兵士たち「はっ。」 戦い始める。千里も戦に加わる。 エステリア「王子様、王子様まで戦いになるなど、お止めください!!」 千里「黙れエステリア!!私はこの国の王子なのだ。民と国を守る義務がある!!」 ホース、ポテトが攻めてくる。 ホース「王子様、あなた様のお首を!!」 千里「これでも食らえっ!!」 ホース「うっそぉーん。」 ホース、その場に延びてしまう。 エステリア「王子様!!」 千里「大丈夫だ、死んではいない。この戦を誰も殺さずに終わらせられればいいが…(M)ティオ…麻衣ちゃん…」 千里、戦い続けている。 千里「邪馬台国は以外に弱いな…こんなのアラセルバの相手ではない…」 そこへ遠くから卑弥呼。 卑弥呼【あぁ、やはり…邪馬台国はアラセルバと戦争になってしまった…どうしよう…こうなったのも私の責任だ…。早くやめさせなければ…】 卑弥呼、エステリア達の元へ行く。エステリア、卑弥呼に気付く。 エステリア「お前は…」 エステリア、卑弥呼に剣を向ける。 卑弥呼「やめてくれ、私は決してアラセルバの敵ではない。」 エステリア「嘘をつくな。知っているのです、あなたが邪馬台国の女王卑弥呼であり、アラセルバを滅ぼそうとしていること。だから私は、その前にあなたの首をとるっ!!」 卑弥呼「待ってくれ、私の話を聞いてくれ!!私は、アラセルバを救いに来たのです。私はそなたらの味方じゃ!!」 エステリア「(剣をしまう。)本当にですか…それは一体、どういう事です?」 (その頃) 麻衣、ティオ、石の像の前につく。 ティオ「着いた…ここが封印の寝台だ。」 麻衣「封印の…寝台?」 ティオ「あぁ…私がここに横たわり、お前の口づけでこの寝台に火がつくのだ。そして、この寝台が焼け切ったとき、予言書は封印される…。だから、(麻衣に耳打ち)私はお前を死なせたくはない。決して死なせやしない。だから、やってくれるね。」 麻衣「えぇ、私の決心は変わりませんわ。例え死んだとしても王子様とアラセルバ王国をお守りできるのであれば、私はどんなことでもやりますもの。」 ティオ「分かった…ありがとう。お前のその勇気には驚いた。感謝するよ…では。」 麻衣「はい…」 二人、高い寝台に登っていく。 (その頃の戦場) 卑弥呼、指揮を執っている千里を見て顔色が変わる。 卑弥呼「テオフィル…」 エステリア「えぇ?」 卑弥呼「私の、ティオは!?王子は…テオフィルちゃんは何処へ行ったの!?」 エステリア「え、…卑弥呼様、何を?ティオ様は、この国の王子様ですが…」 卑弥呼「実はティオ、アラセルバの王子のティオは、私の息子なのです。」 エステリア「え、今なんと…?」 卑弥呼「私は、実はテオフィルの母親なのです。」 エステリア「卑弥呼様が、王子様の…お母様?」 卑弥呼「あぁそうだ。しかし…彼処にいる王子は、テオフィルではないわ。のぉ姫君や、王子はどこにおる?」 エステリア「そ…それがぁ…。」 封印の寝台 ティオ、寝台に乗って服を脱いで仰向けに横になる。麻衣、少し赤くなる。 麻衣「…ティオ…どうして衣類をお脱ぎに…」 ティオ「やむを得ぬ。」 麻衣、マニュアル通りに仰向けになるティオを除き混む。二人とも赤くなって目を閉じる。 麻衣「いいですか…王子様…」 ティオ「あぁ…。」 麻衣、ティオに口づけしようとする。 ティオ「麻衣…」 麻衣「ティオ、何でしょう?」 ティオ「お前は美しい…」 麻衣「え、」 ティオ「私はお前のことが好きだ…。生きられるのであれば、私はお前の事を后に迎えたいくらいだ…」 麻衣「ティオ…王子様…」 ティオ「しかし…私は死ぬ。でも、お前のことは必ず助ける…。さぁ、私に…」 麻衣「いけません。どうせ死ぬのであらば、私も共に死にますわ!!」 麻衣、ティオに口づけをして確りとティオに抱き付く。 卑弥呼とエステリア、封印の寝台へと向かって走っている。 卑弥呼「ティオ、なんという愚かなことを!?」 エステリア【王子様…】 二人、寝台へと駆け寄る。寝台は燃え上がり、炎の中にティオと麻衣がいる。 卑弥呼「テオフィルっ!!!」 卑弥呼、寝台へとよじ登ろうとする。エステリア、卑弥呼を止める。 エステリア「女王様、お止めくださいっ!!」 卑弥呼「止めるなっ!テオフィルは私の息子だ。国のために我が子を犠牲に出来るか。犠牲なら私がなる。私とて、一国を守る女王だ!!」 ティオと麻衣。麻衣、ティオに抱きついたまま離れない。 ティオ「バカ、何故にここにいる。お前は早く逃げろ!!ここにいたらお前まで焼け死ぬぞ。」 麻衣「ですから私はほの覚悟でこうしているのです。」 ティオ「お前はっ、ここで死んだら…お前の世界に戻れなくなるんだぞ!!」 麻衣「私の世界は…私は、私は…今から5000年後の未来から来ました。だからもし、私が今ここで死んだとしても…未来は元に戻るでしょう。しかし、未来に戻ってしまえば…あなたにはもう、一生お会いできなくなる…。ほれならば私は、今最後まで、ここであなたと…」 ティオ「ダメだ…麻衣、さらば。」 ティオ、麻衣を寝台から落とす。落ちる麻衣を卑弥呼が受け止める。 麻衣「ティオっ!!!」 卑弥呼、麻衣を見て驚く。 卑弥呼「そなたは…誰じゃ?」 麻衣「おば様っ!!」 卑弥呼「お、おば様?」 麻衣「ティオが、ティオが死んじゃうわ…ティオを助けて!!」 卑弥呼「分かった…」 エステリア「女王様っ、お止めください!!」 卑弥呼、寝台へと登っていく。麻衣、エステリアを見る。 麻衣「女王…様?」 エステリア「えぇ、あの方こそ邪馬台国の女王・卑弥呼様なのです。」 麻衣「じ…女王…卑弥呼…あれが…」 エステリア「卑弥呼様は、今までずっとアラセルバの敵だと思っていたのですが…卑弥呼様は敵ではありませんでした…」 麻衣「ほいだって、邪馬台国はアラセルバを狙っているのでしょう…どうして?」 エステリア「卑弥呼様は唆され、言われるままに動いているだけなのです…その者に逆らうと、アラセルバも邪馬台国も滅ぼすと言われ…」 麻衣「そんな…では、黒幕が別に!?」 エステリア「はい…卑弥呼様は、実は卑弥呼様は…ティオ王子様の母上様なのです…」 麻衣「え、お母様!?では何故離れ離れに!?ほの事は、ティオは知っているの!?」 エステリア「その話は後に致しましょう!!今はとにかく王子様と女王様が…」 麻衣「そうね…」 麻衣も再びよじ登ろうとするが、卑弥呼、寝台へと上がろうとしたときに下へと落とされ、麻衣もそれと共に落ちる。炎の中のティオはぐったりとしている。 麻衣「女王様…」 卑弥呼「ダメだ、寝台へ上がることすら出来ぬ…ティオ…」 (戦場) 千里、戦の指揮をとっている。 千里「何をしておる、子供だと見くびるな!!かかってこいっ!!手加減はなしだ!!」 声「アラセルバの王子を倒せっ!!」 声「チビの王子など一握りだ!!」 千里「くそっ…」 千里、催眠が解けたようにキョロキョロして、状況を察すると蒼白になり、腰を抜かす。 千里「な、な、な、何なんだ…」 声「ん、王子様、さっきの威勢はどうしましたかね?」 声「遂に怖じ気付きましたかい?」 千里「や、や、や、やめてよ!」 兵士が槍を構えて千里にじわじわと近付く。千里、お尻で後退り。 千里「た、助けて…助けてよぉ、麻衣ちゃんに健司くーん…ティオ王子様ぁーーーっ!!!」 声「何をいってます…ティオ王子様はあなた様の事ではありませんか…」 千里「ぼ、僕は…ティオ王子様じゃ…ないっ…」 (封印の寝台) 卑弥呼、麻衣、エステリア、力尽きたように寝台を見つめている。 麻衣「王子様ぁーーーっ!!!」 卑弥呼「テオフィル、テオフィル!!」 エステリア「あぁ…」 卑弥呼「ダメだ、どうすることも出来ぬ。私はダメな女王だ。息子一人守ることも出来ぬとは…」 麻衣「(涙を流す)ティオ…」 寝台を見上げる。 麻衣【折角あなたとお友だちになれるかと思ったのに…これであなたとも、お別れなのね…】 エステリア「あれ?(寝台を指差す)寝台が燃え尽きていないのに炎が消えていくわ!!」 麻衣、卑弥呼も顔をあげる。 麻衣「ふんとぉー…」 卑弥呼「一体これは?…何が起こったのだ…」 麻衣「ティオっ!!」 麻衣、卑弥呼、寝台をよじ登っていく。寝台の上では体に一つ焼け跡のないティオが気を失って横たわっている。 卑弥呼「ティオっ!!…まぁ…」 微笑んで涙を流す。 卑弥呼「良かった…王子は無事だ。」 麻衣「ティオ…良かった…」 エステリア「でも、何故…」 卑弥呼「原因は…これです…」 卑弥呼、目で合図。麻衣、卑弥呼の指す方向を見る。 麻衣「(赤くなる)まぁ…」 履き物が濡れている。 卑弥呼「封印の義を中止する方法が一つだけあるの。それはな…秘密を明らかにし、国の指導者であるもののプライドを捨て、弱みを現す…」 麻衣「どういう事ですか?」 卑弥呼「(ククっと笑う)ティオは、普段は強がってツンツンしてるが、本当はとても弱虫で恐がりなんじゃ。」 エステリア「あ、あの王子様が…ですか?」 卑弥呼「あぁ。あの子のそんな姿を知っているのはこの私だけ…。しかし、私が邪馬台国に送られ、引き離されてからは…恐らくティオにとって息抜きできる時もなかったのだろう。王子は、プライド高くてな、絶対に人前では自分の弱い姿、恥ずかしい姿を見せられぬ性格だからな…」 ティオ、少しずつ目を覚ます。 卑弥呼「故に…ここでティオが、自分も普通の民と同じである、人間なのだと言うことを人前で示したことで、炎も消え、義は取り止めになったのだ…それともうひとつ…これだよ。」 ティオのペンダントを指す。そなたの涙でこのペンダントが濡れた。これは愛するものの涙で願いを叶える力があるのだ。 ティオ「(ぼんやり)…母上…」 卑弥呼「王子、王子、分かるか?」 ティオ「…?」 ティオ、ハッと飛び起きて警戒する。 ティオ「お、お前は…邪馬台国の卑弥呼っ!!!何故にここにいるのか!?(キョロキョロ)そうか、分かったぞ。私が封印の義を行っていることを知り、邪魔をしに来たか!!このまま予言書の通りに事を進め、アラセルバを滅ぼすつもりだったんだな!!」 卑弥呼「ティオ、違う!!話を聞け!!」 ティオ「私に命令するなっ。私はアラセルバの王子だぞ!!」 暴れるティオを落ち着かせる卑弥呼。 卑弥呼「やめなさい、テオフィルっ!!」 ティオ「離せっ!!離せったら…え?」 落ち着いて、卑弥呼を見る。 ティオ「今私の事を、何と呼んだ?」 卑弥呼「テオフィル…」 ティオ「どうして…どうして私の真の名を知っているのだ…私の真の名を知るのは私の母上と…(卑弥呼をまじまじ)もしや…」 卑弥呼、頷く。 ティオ「母上…?」 卑弥呼「やっと気が付いてくれたか、テオフィル…」 ティオ「母上っ!!」 ティオ、母に抱き付く。卑弥呼、ティオを強く抱き締める。 ティオ「何故に…何故です。何故に母上、」 卑弥呼「ティオ…すまなかった…。これには色々と理由があるのです。」 ティオ「話してください、母上っ!!全て私にお話下さいっ!!」 卑弥呼「分かった。全て話そう…。しかしテオフィル、その前に…」 ティオ「え?」 自分の足元や背中を見る。寝台は一面水浸し。ティオ、赤くなって動揺。 ティオ「こ…これは…そんな…」 卑弥呼「これが、あなたを救ったのですよ…。」 ティオ「そ…そんな…(真っ赤になって下を向く)では、」 卑弥呼「…この数年間、一人でずっと辛い思いしてきたのね…」 ティオ、下を向いて悔しさとショックに泣きそうになるが涙をこらえる。 卑弥呼「いいのですよ、ティオ…あなたは人間なのです。王子も人間なのです。泣きたいときは思いっきり泣きなさい。もう何も我慢することはないのよ。」 ティオ、卑弥呼の胸に泣きついてワッと泣き出す。麻衣、エステリアももらい泣き。 エステリア「やはり…王子様も人なのです。」 麻衣「以前せんちゃんがおもらししちゃったとき笑って、“自分ならしない”って言っていた人誰でしたっけ…。」 二人、フフっと笑う。 しばらく。 ティオ「え、唆されていた!?またどうして?」 卑弥呼「えぇ、ある時突然見知らぬ男が私をあなたから引き離して、邪馬台国へと連れて行ったのです。当時、邪馬台国は小さな村で、指導者もいない…乱れ果てていました。その男は私をその国の女王につけ、邪馬台国を纏めるようにといいました…邪馬台国は段々に纏まり、軈て今のような大きな王国になったのです。男は時々私を訪ねるようになり、更には私にアラセルバを攻めるようにと言い出し、私は拒みましたが、言う通りにしないと私の息子を殺すと脅すのです。男は、邪馬台国にもアラセルバの噂を流し、アラセルバの金に目が眩んだ邪馬台国の者たちも挙ってアラセルバを攻めようと…。」 ティオ「その男とは一体…」 卑弥呼「分からぬのですテオフィル、男はいつも仮面をつけ、武装をしていて…どこの誰なのかも分からぬのです。ですからテオフィル、私は時々、忍びであなたのことが心配でアラセルバにあなたの様子を見に来ていました。」 ティオ「では、あれは…アラセルバを偵察に来ていたのでは…」 卑弥呼「勿論、男にはそう言うことにしていました。でも、あなたの側にはいつも側近のブブと、下女のメデア、そして小間使いのエステリアがいる…」 ティオ「えぇ。そして今年の夏には3人も私に味方が出来ました。」 ティオ、服を着る。 ティオ「この麻衣と、千里、健司と言うものです。千里は私に良く似ています。彼は私の身代わりになってくれました。健司はとても頭がよい。色々な面で機転を利かせてくれます。今は兵と共に戦っております。」 卑弥呼「では、あの戦で戦っている者は…」 ティオ「えぇ、彼が千里っ…(蒼白になる)千里っ!!こうしちゃいられない!!千里が危ない。」 ティオ、戻り道を駆け出す。麻衣、エステリア、卑弥呼も後に続く。 千里、泣いて槍を振り回しながら逃げ回っている。邪馬台国の兵士が千里を追い詰める。アラセルバの兵士も必死で対抗しているが、次次とやられる。 千里「ダメだよ、みんな死なないでよ、やられちゃいや…ボクを一人にしないでよ!!」 兵士、千里に留目を刺そうとする。 ティオ「待てぇーーっ!」 千里の前に立ちはだかる。 千里「ティオっ!!」 ポテト「何っ?王子が二人!」 ティオ「アラセルバの王子はこの私だ!!首を取りたいのだろう。だったらこの私の首を取るがよい!!」 ホース「どっちだ、本物は…」 ティオ「私だと言っている!!その前に…ドルフィン、」 ドルフィン「へ、へぇ…」 ティオ「母上から全て聞いた!!黒幕は誰だっ!?」 ドルフィン「し、知りませんや…ご存じでしょう…私はあなた様のお母上である卑弥呼様の。」 ティオ「黙れっ!!では何故、私の味方である母上のお国、邪馬台国はアラセルバに攻め入るのだ?それは、誰か邪馬台国にアラセルバに対して敵意を抱いているもの、つまり黒幕の手下がいるからであろう!!」 剣を突き付ける ティオ「さぁ、吐けっ!!誰なのだ!!ドルフィン。」 千里、隙を見て逃げ出す。健司、アラセルバ軍に参加して戦っている。 千里「健司君っ!!」 健司、千里に気がつく。 健司「千里っ!!」 千里「ティオが、ティオが戻ったんだ!!でも…。」 健司「え、黒幕が別に?」 千里「うん、ティオの話が聞こえたんだ。邪馬台国のドルフィンに真相を聞こうとしていたよ。でも、ドルフィンは口をとざしてる。」 健司「で?どういう話なんだ?詳しく聞かせてくれ、」 卑弥呼、麻衣、エステリアも戻る。 麻衣「健司っ!!」 健司「麻衣!!」 麻衣、健司にかけより、健司、麻衣を抱き締める。 健司「良かった、お前生きてるんだな…生きててくれて、無事で良かった…ありがとう…」 麻衣「健司、」 健司「話は今、千里から聞いた。それでティオは卑弥呼とアラセルバを守るために、今度はこの戦場で死のうとしているのか?」 千里「いや…」 卑弥呼「テオフィルっ!!!」 ティオ「母上っ。」 卑弥呼「ドルフィンは何も知らぬ。其奴は黒幕とは一切関係ないっ!!」 卑弥呼、ティオの元へかけより、ドルフィンを離す。 ティオ「母上、では誰が?誰が、アラセルバに攻め入るように仕向けたのです?まさか…まさか母上ではありませんでしょう?そうだとすれば、邪馬台国にアラセルバの敵がいなければこんなことにはなりません母上!!」 卑弥呼「落ち着きなさい、テオフィル…」 そこへメデアが走ってやってくる。メデア、争いの波を避けるのに必死。 メデア「王子様、王子様っ!!(卑弥呼を見る)アディラ様…何故…」 ティオ「何を言うメデア、アディラだと?これは…私の母上の卑弥呼様ではないか。誰だ、そのアディラと言うものは。」 メデア「えぇ、そうですわ。このアラセルバの先の后様、王子様の母上様であるアディラ様です。…何故…」 ティオ「しかし、母上は事情があり邪馬台国を支配させられていた女王・卑弥呼ではないか…メデア、」 メデア「いいえ、王子様、お母上の真の名はアディラ様にございます。」 ティオ「で、では何故偽名を…」 メデア「恐らく…ブブがそうさせたのでしょう…」 ティオ・卑弥呼「ブブが!?」 ティオ「何故ブブがその様なことをしなくてはならないのだ。」 メデア「何故なら…(言いにくそう)ブブ様が全ての黒幕だからです。」 ティオ、卑弥呼、驚く。ドルフィンも目を丸くする。 メデア「近頃、ブブ様の動きがどうも怪しいと思い、私はブブ様の後をつけていた日がございます。そしたら…」 (回想)地下室の秘密の部屋 ブブが武装をしている。 メデア『ブブ様が何やら武装をして、馬にお乗りになるのが目に留まりました。至急、兵士を送りブブ様を追跡させますと、ブブ様は邪馬台国の屋敷に入られました。』 卑弥呼「それは、いつの話じゃ?」 メデア「遂、七日ほど前の事と思います。」 卑弥呼「七日前…で、その時のブブはどんな格好をしていたのだ?」 メデア『はい、お顔には封印の仮面をつけ、鎧はつけて降りませんでした。出陣の被り物を付けられており…』 卑弥呼、目眩を起こす。ティオ、卑弥呼を支える。 ティオ「母上っ!!」 メデア「ですから王子様、お逃げ下さい…あなた様のお命が危険です。」 ティオ「私が危ないだと?」 メデア「えぇ、ブブ様は王子様をお殺しになろうとしております。」 ティオ「私を殺しに?ふんっ、そんなもの構うものか!!なんの理由があって私を殺す!?」 メデア「王子様っ!!」 声「その通り、」 ブブがやって来る。 メデア「ブブ様…」 ブブ「この戦を作ったのも全てわしだ!!后を陥れたのも、先の王を死に追いやったのもな。」 ティオ「何故だ!?何故にその様なことを…」 ブブ「分からんのかね、この国を乗っ取る為にだよ。」 ティオ「なに?」 ブブ「あぁそうだ。邪魔な権力者たちを全て消し、わしがこの国の大王となるのだ。そのためにはわしは手段を選ばない。…わしは先の王・メディの弟として生まれた。将来は王座につくことを夢見て育ったよ。しかし、国民らはわしよりも兄のメディを支持し、父上と母上すらもわしの事を見捨て、メディを後継者にした。わしは放蕩者、傲慢と言われ…軈てメディが王座についても下の下。しかもメディには王子が生まれ、到底わしは王座につける見込みはなくなった。だが、そこでわしが知ったのは、南方の国に大きな財力を持つ土地があると言う事だ。それが邪馬台国。わしはそこに目をつけ、邪馬台国を統一し、まず始めに邪馬台国を乗っ取ろうと考えた。」 ティオ「それなら邪馬台国の王として、」 ブブ「それはいけない、わしが狙うのは飽くまでアラセルバだ。わしの生まれ育ったこのアラセルバだ。アラセルバは、邪馬台国の何倍もの広さがある。しかも、秘宝と言われる隠された宝がアラセルバにはあるのだ。わしはそれらを手に入れたい。だから先に邪馬台国を操っておいてからアラセルバに攻め入ろうと。そうすればアラセルバも邪馬台国もわしの物となるだろう!!わしはアラセルバの王となる。だから邪魔な国王を殺し、后・アディラを捕らえ、邪馬台国に連れていき、わしに逆らうとどうなるかと脅し、邪馬台国を納めさせた。まだ赤子のうちに引き離された王子には、顔を見たとて誰が母親かは分かるまい。アラセルバには、アディラは死んだと告げ、代わりにアディラには、卑弥呼という別の名をつけた。そして、アディラには、卑弥呼としてアラセルバを攻めさせる。絶大な女王・卑弥呼の力でアラセルバを乗っ取り、事が全て成功した暁にはアディラを殺し…ティオ王子…」 槍をティオに向ける。 ブブ「お前も殺すのだ!!」 メデア、エステリアも顔を覆う。ティオ、もはや動けなくなりその場で目を閉じる。卑弥呼、ティオを抱き締めて庇う。 ブブ「喰らえぇ!!」 ブブ、二人に襲いかかる。 健司「待てぇ!!(二人の前に立ちはだかる)ティオ、女王様、早く逃げてっ。ここは俺が。」 ティオ「しかしっ、」 健司「早くっ。」 ブブ「(鼻で笑う)ふんっ、子供がわしの相手になるものか!!」 健司、ブブと戦い始める。 ブブ【こやつ、なかなかやるな。】 健司【ふんっ、この俺を見くびるんじゃねぇ。何てったって俺は地元のフェンシングサークルに通う達人なんだ。はぁっ、はっ、】 麻衣「健司っ!!」 千里「健司君っ!!」 健司「お前らは、早くティオと女王様を!!」 麻衣「健司ーっ!!」 健司「いいで早くっ!!」 麻衣、頷いてティオの手を取る。 麻衣「さぁ、王子様。」 ティオ、苦しそうに顔をしかめる。 麻衣「どうしたの?」 ティオ「た…立てない…。」 麻衣「まぁ、どうしたの?怪我を!?」 ティオ「いや…身体中力が…入らないのだ…」 麻衣「仕方ない王子様ね、今までの威厳は何処へ行ってしまったの!?あなたそれでも王子ですか!?」 麻衣、ティオをおぶる。千里は卑弥呼の方を支える。 千里「女王様は僕に…」 二人、ティオと女王様を安全なところに避難させる。健司は相変わらずブブと戦っているが、ブブに体を押さえつけられる。 健司「わぁっ、くそっ…」 千里「健司君っ!!!」 麻衣・ティオ「健司っ!!!」 麻衣、背負っていたリュックサックをがさごそ。 麻衣「あったわ!!(健康食品を取り出す)これよ、これ。王子様、これをお食べ下さい。元気になります。」 ティオ「…何だ、これは…」 麻衣「私達の国の食料です。さ、王子様…」 王子、恐る恐る口に入れる。 ティオ「これは、美味いっ!!…でも、(肩を落とす)私はもう戦えない…その様な力も気力もない…」 麻衣「まぁどうして?王子様、どうしちゃったの!?」 ティオ「ダメなのだ…私は…私は…」 健司、ブブに捕らえられて暴れている。 健司「離せっ!!離しやがれ!!」 ブブ「へへへ、どうだ王子?この大切なお前の友が殺されるのを見たくなければ大人しく…」 ティオ【健司っ…】 卑弥呼「テオフィル、」 ティオを抱き締める。 卑弥呼「大丈夫です、自信を持ちなさい。先程の事は誰にでもあること…気にしてはなりません。王子も人なのです、失敗はあります。」 ティオ「母上…」 ティオ、涙を脱ぐって立ち上がる。 ティオ「よしっ!!」 槍をもってブブに立ち向かう。千里、怯えているが、再び勇ましくなり立ち上がる。 千里「王子様っ、僕も参りますっ!!!」 ティオ「千里っ、ダメだ!!お前はここにいろ!」 千里「いいえ王子様、お供します。一人だけズルいですよ。僕はあなたに王子の身代わりを任されました。その時は本当に怖かった。勿論今も怖い…でも、今の僕は最初の僕とは違う!!王子様、あなたのお陰で色々と強くなれたんだ。それなのに、最後は王子様お一人でなんて、ズルいです。僕も男だ。最後まで一緒に立ち向かいます!!」 ティオ「千里…。…よし、分かった。着いてこいっ。」 千里「はいっ。」 健司と麻衣を振り返る。 千里【もしかしたらこれがお別れになるかも知らないけど…色々楽しかったよ。健司君、麻衣ちゃん…僕は行ってきます…。ありがとう…さよなら。】 千里、涙を隠して進んでいく。麻衣、泣きながら千里の名を叫んでいる。 エステリア「麻衣さん、大丈夫です…きっと大丈夫ですわ。王子様も、千里さんもご無事に戻って参られます…」 麻衣、エステリアに泣きつく。エステリア、麻衣を慰める。 ブブ「来ましたな、ティオ王子様…」 ティオ「その者を離せっ!!潔く私がお前の餌食になる。さぁ、どうにでも好きにするがよい。しかし…」 ペンダントを取る。 ティオ「この国はこのペンダントによって守られているのだ。もし、私が死ねばこのペンダントの力もなくなり、アラセルバは滅び、よってお前もこの城と共に朽ちるだろう。しかし、お前が降伏すればこの国もお前の命も無事だ。さぁ、どうする?」 ブブ「ティオぉ…」 ブブ、ティオに喰って掛かろうとする。ティオ、槍で抵抗。 ブブ「うわぁーーーっ!!!」 ブブ、吹き飛ばされ、健司はブブの手から離れる。 ティオ「健司っ。」 健司「何が起きたんだ!?」 ティオ「さぁ、私にもわからない…。でも、これで留目が刺せる。」 ティオ、千里、健司、吹き飛ばされたブブに近寄る。 卑弥呼「ペンダントの力だ。」 エステリア「ペンダントの力?」 卑弥呼「あぁ…実はこれこそが我アラセルバの秘宝と言われる物、翡翠のペンダントだ。これが今こそ、輝きだしたのだ。これがアラセルバを守ってくれる。」 麻衣「ペンダントが輝きだした…?」 卑弥呼「あぁ…。これは星の流れるとき、蝕の時が近付くと輝きだし、不思議な力を産み出すという言い伝えがあったが本当だった…。」 ティオ、千里、健司、倒れたブブに槍を向ける。ブブ、降参したように手をあげる。 ティオ「ブブ、どうも私の勝ちのようだ…さぁ堪忍するがよい。」 ブブ「お許しを、王子様…」 ティオ「命だけは助けてやる。しかし、二度とこのアラセルバへ戻るのではないぞ。」 塀を集める。 ティオ「ブブを南方の国・太宰府へ左遷させろ!!そして二度と戻れるように見張りもつけるのだ。」 兵士たち「は、王子様。」 兵士たち、ブブを捕らえて連れていく。戦は静まり、邪馬台国、アラセルバ両国の民が完成をあげる。 全員「アラセルバの王子様、ばんざーい!ばんざーい!ばんざーいっ!!」 王宮・食卓 絨毯の敷かれた座敷に座る、麻衣、千里、健司、卑弥呼、エステリア、ティオ。 卑弥呼「さぁ、これで平和は戻りました。皆さんのお陰です。ありがとう、では…この日を祝して乾杯ーっ!!」 6人、杯をぶつけ合う。 健司「でも、俺たちまだ子供だぜ?酒なん飲めねぇーよ。」 麻衣「何言ってるんよ、いいじゃない。現代じゃないんだし…あんた酒蔵の息子だら。」 健司「ほれとこれとは関係ねぇ!!(杯を一気に飲み干す。)」 千里「んー、僕お酒なんて初めて飲んだ。美味しいもんだなぁ…」 麻衣「ほんなの当たり前よ。私だって初めてよ。」 卑弥呼「ですけどテオフィル、」 ティオ「何ですか、母上…」 卑弥呼「あなたは、王子足るべきもの…派手にお粗相をやらかしてくれて…今日は確りと父上様にしかって頂かなければなりませんね。」 ティオ「母上ぇ、もうその事は…ん?父上…?」 卑弥呼「えぇ、そうですよ。父上様に。」 ティオ「しかし、しかし、父上は…」 近くにドルフィン、ホース、ポテトがいる。ドルフィン、微笑んでティオの元へ来る。 ドルフィン「テオフィル、」 ティオ「え、お…お前は…ドルフィン…」 ドルフィン「大きくなったね、分かるかい。」 卑弥呼を見る。 ティオ「ど、どう言うことですか母上…何故ドルフィンが。」 ドルフィン「違うよテオフィル、よく見てごらん。」 ドルフィン、人の顔そっくりの仮面を外す。 ティオ「ち…父上っ!何故…!?」 卑弥呼「父上は、今までずっと邪馬台国で私と共に暮らしていました。」 ティオ「で、でも父上はあの時に確かにお亡くなりに…」 ドルフィン「あれはテオフィル、お前を少し試すためにな。そして、黒幕の動きを見張るために。」 ティオ「私を…試すですって?」 ドルフィン「あぁ、私はな、心配だったのだ。お前があまりにも自由奔放で遊んでばかりいるので、本当に後継者としてやっていけるのかどうか…。それにお前は気位が高くて少々傲慢なところがある。だから私はこうやって私がいなくなった国でお前一人、国を纏めていけるのか、見守っていたんだよ。」 ティオ「そ、んな…」 ドルフィン「テオフィル、お前は立派に成長したな。もうお前は立派な国王になれるよ。」 ティオ「父上っ!!」 ティオ、父に泣きつく。 ドルフィン「これこれ、王子がそんな弱くちゃいかん。…しかしこれで私も安心した。故、私は王座を降り、お前に譲ろう…。」 ティオ「ち、父上、それは…それはなりません。」 ドルフィン「いや、もう大丈夫だティオ。アラセルバのこれからを頼んだよ。私は、これから邪馬台国をよい国にするために纏めていかなければならないからね。」 ティオ「では、父上は又…邪馬台国に行ってしまわれるのですか?」 ドルフィン「あぁ。…でも、心配するなテオフィル。お前に何かあったときは、いつでも回りに味方がいる。お前ももう立派な大人だ。大丈夫…」 麻衣「しかし女王様、先程おっしゃっていたペンダントの秘密とは?詳しく聞かせてください。」 卑弥呼「あぁ、これか?(卑弥呼、ティオと御揃いのペンダントを外す。ペンダントは光っている。)」 ティオ「母上っ、それは。」 卑弥呼「えぇ、これが実はブブが探していたアラセルバの秘宝なのです。このペンダントは今から100年も昔の王様が残されたものでね、日蝕と流星が重なる年になると不思議な力を発するのです。ブブを倒し、アラセルバを守ったのもこのペンダントの力です。しかし、日蝕と流星が重なるその年は、いいことばかりではありません。国民が恐れる恐ろしい出来事があるのだ。先の王様もその餌食となってしまった…。」 千里「餌食…って…?」 卑弥呼「神隠しじゃ。」 千里・健司・ティオ・麻衣「神隠しっ!?」 ドルフィン「あぁ、歴史書によれば強い光が降ったあと、当時中庭にいた父上は消されてしまい、何処かへ行ってしまわれた…それから父上の姿を見たものがないと…」 麻衣「恐ろしいわね…」 千里「僕、怖いよ…。」 健司、少し考えている。 麻衣「健司?」 健司「なぁ、王様に女王様、それは流星が落ちたときなのですよね。」 ドルフィン「あぁ、そうだが…」 健司「ほれだ!!きっとほれだ!!間違いない!!」 千里「健司君、」 健司「麻衣、千里、この次の流星がいつかは分からないが、その時に帰れるぞ!!」 二人、よく分からない顔をする。ティオ、三人を見つめている。 同・浴室 健司、千里、恥ずかしそうな顔をしている。ティオ含め、三人は下女たちに体を洗ってもらっている。 健司「い、いいよ、やめろよ…体くらい自分で洗うって…」 千里「何か、恥ずかしいな…ねぇ、ティオはいつもこうなの?」 ティオ「あぁ、何かおかしいか?」 健司「ほりゃおかしいに決まってんだろ!!俺たちの世界じゃ、この年で体洗って貰う奴なんていないぜ。」 千里「でも、いいじゃない。たまには甘えるのも。僕は今でも時々ママに体洗って貰うよ。」 健司「出たっ、マザコン男!!」 千里「マザコンじゃないよぉ!!」 浴槽に浸かる三人。 ティオ「ところで健司、」 健司「何だよ、」 ティオ「お前たち…国に帰るのか?」 健司「あぁ、帰れるときが来たらな…。」 ティオ「なぁ…」 健司「今度は何だよ、」 ティオ「お前は…麻衣のことが好きか?」 健司「な、何だよぉ…行きなり…」 ティオ「好きなのか?」 健司「(動揺)わ、わかんねぇよほんなこん!!」 ティオ「私は好きだ…」 健司「はぁ!?」 ティオ「私は麻衣のことが好きだ…なぁ、あの娘をアラセルバに残して、私にくれないか?」 健司「何いってんだよ!!ダメに決まってんだろ。俺たちは友達なんだ、麻衣も一緒に帰るに決まっているさ!!」 千里「そうだよ、彼女だってそう言うに決まってる。」 ティオ「もし、彼女がここに残るといったら?お前たち、どうする?」 健司、千里、顔を見合わす。 健司「(やけくそ)どうするも何も、彼女は絶対帰ると言うに決まってるぅーー!!」 千里「そんなに好きなんならさ、麻衣ちゃんに直接言ってみればいいじゃない。言わなきゃ何も伝わらないよ。」 健司「ま、麻衣はあんたのこん嫌ってたでな。無理だと思うぜ。やるだけやりゃいいさ。」 同・別の浴室 麻衣、エステリアが浴槽に浸かる。 エステリア「ねぇ、麻衣さん」 麻衣「何、エステリア?」 エステリア「あなたは、ティオ王子様のことをどの様にお思いですか?」 麻衣「どの様にって?」 エステリア「あなたもティオ王子様の事が好きなのではないですか?」 麻衣「え、えぇ?何よ行きなり。」 エステリア「ティオ王子様は、麻衣さんの事をお慕いしております。」 麻衣「ほんなバカな、」 エステリア「封印の儀式の時の事を覚えておりませんか?王子様はあなたを愛しておられます。私には分かるのです…。きっと王子様は、あなた様を后にお迎えしたいとおっしゃるでしょう…」 麻衣「ほんなことあるわけないわ。儀式の時はやむを得なかったのでしょう…」 エステリア「麻衣さん、もしも王子様がアラセルバにあなた様をお引き留めになり、后にと言われましたらどうなさいますか?」 麻衣「…ほうね…もしも仮にほんな事があったとしたら…」 ぽわーんとして考える。 麻衣【バカね…ティオ王子様の様な方が本気で私の事を好いてくれているわけないじゃないの…。】 同・バルコニー 其々の部屋。麻衣、ティオ、夜風に当たりながらぼんわりと月を眺めている。 月日は流れていく。三人はティオともすっかり打ち解けて平和なアラセルバで暮らしている。自分達が時間旅行者であることもすっかりと忘れている。 (一年後) ティオの戴冠式がある。 ティオ「(小高いところから)麻衣っ!!」 メデア、麻衣をティオの側へと連れていく。麻衣、何が何だか分からずにおどおど。 ティオ「麻衣、アラセルバの后になってくれ。ずっと私の側に…」 麻衣「王様…」 ティオ、麻衣の手を握る。 ティオ「ダメか?」 麻衣「いえ…」 健司「麻衣、正気か!?お前、一生ここに残るつもりでいるのかよ!?」 千里「麻衣ちゃん、帰ろうよ!!僕らと一緒に。ね!!」 麻衣「少しだけ…せめて少しだけ…」 ティオ「麻衣…愛してる…」 麻衣の薬指の指輪に口づけをする。 ティオ「これは父上から頂いた、アラセルバに伝わる婚約指輪だ…。これをまさかお前の指に嵌められるだなんて、夢を見ているようだ!」 エステリア、悲し気に二人の姿を見て去る。 エステリア「おめでとうございます、王子様…麻衣様…」 健司「(涙を流す)あのばか野郎…」 千里「麻衣ちゃん、元の世界に戻るときは、君とももうこれでお別れになるんだね…(泣き出す)おめでとう、麻衣ちゃん…アラセルバで幸せんなれよ。」 ティオ、麻衣の首にペンダントをかける。麻衣「これ、」 ティオ「アラセルバ王家の女の証だよ、お前のだ。とっておいてくれ…」 麻衣「王子様…ありがとうございます…私は今、とても幸せですわ。」 麻衣、両手をティオの両手と重ね合わせる。そこへ、流星群が始まる。健司、千里、麻衣も国民と共に空を見上げる。 麻衣【ティオ、お別れの時が近付いた様です…さようなら。あなたのことは一生忘れません…】 一筋の強い光の流れ星が王宮に大接近する。人々、顔を覆い、身を縮め、目を閉じる。麻衣もティオと手を重ね合わせたままそっと目を閉じる。 麻衣【さようなら…王様…】 光は一度強く光ると、辺りは元通りになる。ティオの手のひらには指輪が一つあるのみ。麻衣の姿がない。 尖り石縄文公園 麻衣、健司、千里、一番はじめの草の上で仰向けになって眠っている。麻衣、健司、千里の順に起き上がる。 麻衣「…あれ?…夢か。」 健司「麻衣、どうした?」 千里「変な夢?」 麻衣「いえ…とっても美しい夢…少しへんてこだったけど…」 健司「俺も…何か、へんてこな夢見てたよ。」 千里「僕も。」 健司「何、みんな何か見てたのかよ。もしかして、みんな同じ夢だったりしてな…」 麻衣「まさか。」 健司「さ |