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石楠花物語高校生時代
最後の時
柳平家
   麻衣、紡、糸織、と子、あすか、紅葉、柳平が炬燵でお鍋を囲んでいる。

紅葉「はい、お節と鯉こく鍋が出来ましたよ。さてとみなさん、始めましょうか?」
柳平「あぁ紅葉。では…みんな、」

   グラスを掲げる。

柳平「乾杯!!」
全員「乾杯っ!!プローストっ!!」

   食べ始める。

あすか「ハフハフ、」
と子「あっつーっ!!」
三つ子「でもうんめぇーっ!!」
紡「ほいだけどさ、八重姉と兄貴が戻ってこれんくて残念だな。」
麻衣「だな、」
糸織「うん、」
紅葉「仕方ないわよ、二人とも忙しいの。」
柳平「さ、どんどん食べなさい。」
全員「はーいっ!!」
糸織「お蕎麦お代わりっ!!」
紅葉「自分でよそいなさいっ!!」
糸織「ほーいっ…」

   糸織、代えに行く。


   (深夜零時)
   鐘が鳴っている。

同・バルコニー
   三つ子がジュースを飲んでいる。

三つ子「今年も残すところ365日ですなぁ…」

   紅葉、家の中で片付けをしている。

紅葉「なに言ってるの。みんな、そんなところにいたら風邪引きますよ。」
紡「大丈夫、大丈夫!」
紅葉「まだいるの?早く眠りなさいね。…お休み…」
三つ子「はーい、お休みぃ。」

   部屋は暗くなる。バルコニーに三つ子のみ。

紡「星が綺麗だな…」
糸織「あぁ…何か改めて新年なんだなぁーって感じだよ。ついこの間とったばかりだだに…早いもんだよ。」
紡「ほりゃ私たちが年取ったっつーこんだに。」
麻衣「へー、平成も20年なんだなぁ…」


   (30分後)

紡「うーっ…寒っ。私へー入って寝るわ。ほいじゃあな、お休みぃ…」
糸織「僕も…ありゃ、麻衣、君は?」
麻衣「私はもう少しおる。」
糸織「ほーか?…君も早く入れよ。」
麻衣「ほーい。お休なぁ。」
紡、糸織「お休みぃ。」

   二人は震えながら入っていく。


   麻衣一人。チョコレートセーキを飲みながらぼんわりとしている。
   『新月』 

   バルコニーの下。千里が自転車にのって現れる。

   麻衣、終わると微笑んで中へ戻ろうとする。

千里「おーいっ、麻衣ちゃんーっ!!」
麻衣「誰?」

   戻ってキョロキョロ。

千里「ここだよぉ、下、下!!僕だよぉ、僕!!」

   麻衣、見下ろす。

麻衣「せんちゃん!!どーゆー?」
千里「ちょっと降りてきてくれるか?」
麻衣「ちょっと待ってな。」

   麻衣、中へ入る。


同・庭先
   寝巻きにコートを羽織った麻衣。そして千里。

麻衣「今晩はせんちゃん、どーゆー?」
千里「君を迎えに来たんだ。」
麻衣「へ?」
千里「忘れた?君、本当は今年も健司くんと二人で行こうとしていたんだろ?だから僕、三人で行きたいなって思って、誘いに来たんだよ。ほら、日の出ラインさ。」
麻衣「わぁー素敵!!ありがとう。」
千里「いやぁ…じゃあ?行こうか?この近くの停留所は“花蒔公園入り口”だよね。急ご!」
麻衣「せんちゃん、えれー茅野のこん分かるようになったな。」
千里「そう?ありがとう。乗って!!」

   麻衣、千里の自転車の荷台に乗る。千里、走らす。

   二人、バス停につくと震えながら待っている。

バスの中
   3時。麻衣と千里のみ。

麻衣「ねぇ、せんちゃん?」
千里「んー?」
麻衣「私まさか、あんたに誘ってもらえるだなんて思わんかった。ありがとう?誘ってくれて。」
千里「いや…僕もさ。君と来れて嬉しいよ。ありがとね。…健司くんは?」
麻衣「あぁ、あいつ?」

   笑う。

麻衣「あいつ、大晦日早々風邪引いて…しかもインフルエンザB型で下痢が酷いらしくて起きられないんだって。」
千里「え、大丈夫なの?」
麻衣「ま、不死身のあいつのこんだで、大丈夫よ、きっと。又お見舞い行ってやるけどさ。せんちゃんも気を付けなね。」
千里「うん、ありがとう…」

   時々咳をしたりして風邪声。

麻衣「ん、大丈夫?」
千里「いや、大丈夫。少し風邪っぽいだけだよ。」
麻衣「んま、嫌ね!!ほれなんにこんな寒いとこへきただ?」
千里「熱ないから大丈夫さ、それにただの風邪だよ。」
麻衣「ほんな、」

   千里、麻衣の言葉を手で遮る。千里、少々赤くなる。

千里「なら今日はもしかして…」
麻衣「二人っきりね…」

   麻衣、千里の膝に持たれる。

麻衣「ごめん…少し気分悪いわ…」
千里「いい…よ、」

   千里もどぎまぎ。


   (バスを降りる。)
   千里、麻衣の肩を支えて歩く。

千里「大丈夫?歩けるか?」
麻衣「えぇ、ありがとう…」
千里「寒いしさ、少しヒュッテで休もうよ。」
麻衣「ほーね。」

車山高原・ヒュッテ
   二人のみ。暖炉の側に座って飲み物を飲んでいる。

麻衣「せんちゃん、ありがとな…大分落ち着いた…。」
千里「本当?良かった…」

   千里、少し頬が赤く、何処と無く具合悪そうにポワーンとしている。千里、うとうとと始める。麻衣、微笑んで千里に毛布をかけ、自分も目を閉じる。


   (日の出の時間)
   突っ伏して眠っていた二人が少しずつ目を覚ます。

麻衣「せんちゃん、せんちゃん、見て!!明るくなってきたわ。」
千里「ん、本当だ…」
麻衣「外に出ましょう!」
千里「うん。」

   二人、手を繋いで外へ出る。


同・山頂
   多くの人の中、二人も並んで立っている。

千里「もうすぐだね…」
麻衣「えぇ…」

   段々に太陽が上る。
   『マッティナータ』

麻衣「綺麗…」
千里「あぁ、…」

   歌が終わると千里、フラフラっと倒れそうになる。

麻衣「せんちゃんっ!?」

   驚いて間一髪で支える。

千里「麻衣ちゃん…ごめんね…」

   麻衣、千里の額に手を当てる。

麻衣「嫌だっ、バカねあんた!!すごい熱があるじゃないの!!」

   麻衣、おどおどキョロキョロ。


小口家・千里の部屋
   千里、ベッドに寝かされ、珠子が氷嚢をのせる。

珠子「麻衣さん、ありがとう。ごめんなさいね…」
麻衣「いえ、…せんちゃんは?」
珠子「この子、この間から少し風邪っぽかったのよ。それなのに、今日はどうしても麻衣さん誘っていくって聞かなくてね…」

   千里、薄目を開ける。

珠子「せんちゃん、ほらだから言ったでしょう!!ママの言うこと聞かないからこうなるのよ。大人しく家にいれば…」

   そこへ夕子。

夕子「姉さん、千里は、どうだい?」
珠子「えぇ、かなり熱があるみたい。麻衣さんが車山高原で倒れたこの子を助けてくれたのよ。」
夕子「そうかい、」

   千里の頭を軽く叩く。

夕子「全くこの子は、バカな子だねぇ!!人様に迷惑かけるなってあれほどいつも言ってるだろうに!!」
麻衣「やめてください!!私、迷惑だなんて思っていません!!」

   夕子、麻衣を見る。

夕子「おや、あんたは麻衣さんかい?」
麻衣「えぇ、せんちゃんのおばさんですよね。」
夕子「ああ、私は千里の叔母の夕子…この子が小さい頃から何かとあんたには世話になって…」

   まじまじ。

夕子「いつも悪いねぇ。」
麻衣「いえ!とんでもない。せんちゃんは私には勿体無いほどの素敵な男性ですわ!」

夕子「そうかい?いやぁ、あんたみたいな子がうちの子の彼女さんだなんて…。ありがとう」
麻衣「こちらこそ。いつもせんちゃんにお世話になっていますから…お礼を言うのは私の方ですわ。」

   夕子、微笑む。

夕子「あんたは、本当に礼儀の正しい娘さんだねぇ。ほれ、折角だ!朝食食べてきな。」
麻衣「でも…」
珠子「お節が出来ているわよ。」
麻衣「でも、ほんな申し訳ないです。ほれに、私だけ…せんちゃんが可哀想…」

   千里、涙が込み上げそうになる。

麻衣「彼、具合が悪いだに…」
夕子「優しいんだね、あんたは…」
珠子「でも、きっと麻衣さんが食べてくれた方がせんちゃんも喜ぶわよ。ね、せんちゃん。」
千里「う…あぁ…」
麻衣「?」
珠子「今年の御節はね、全部せんちゃんが一人で作ってくれたのよ。」
麻衣「まぁ、ふんとぉーに?」

   千里、更に赤くなって照れる。

千里「よかったら…食べてみてよ…美味しくないけど…」
麻衣「ほんなこんないに。なら、あんたが作ったんなら、喜んで食べさせてもらうに。」

   千里、夕子、珠子、微笑む。

珠子「では麻衣さん、お勝手へ行きましょう。せんちゃん、あなたには後で鍋焼きうどん作ってあげますからね。」
千里「ありがとう…」
麻衣「じゃあせんちゃん、又後で来るな…」

   麻衣、珠子、夕子、部屋を出ていく。千里、咳をして布団に潜る。 
 
同・台所
   麻衣、珠子、夕子、頼子、忠子が食事をしている。

麻衣「わぁ、とっても美味しい。」
珠子「良かった。麻衣さん、どんどん代えてね。」
麻衣「ありがとうございます!」
夕子「でも本当にあんたはいい娘さんだよ。このまま嫁に来てくれりゃあ嬉しいねぇ。」
麻衣「んも、嫌だ叔母さんったら!!私たちまだ高校生なんですよ。」
頼子「麻衣さんは、千兄ちゃんの彼女さんなのですね。」
忠子「忠子も、麻衣さんのようなお姉さんにお嫁に来てもらいたいです。」
麻衣「ま、」

   千里、寝ながら話を聞いて顔を赤らめる。

麻衣「後で、彼にお節とても美味しかったって伝えておかなくちゃね。」

   全員、笑いながら食べている。

同・千里の部屋
   麻衣、鍋焼きうどんを持ってくる。

麻衣「せんちゃん、さっきのお節、とっても美味しかったに。ありがとう…」
千里「良かった。君に喜んで貰えるんなら僕はとても嬉しいよ。」
麻衣「ほ?」

   微笑んでベッドの近くに行く。

麻衣「はい、鍋焼きうどん作ってきたに。どう、ご飯食べられそう?」
千里「うん…」

   ごしたそうに起き上がって饂飩を啜る。

麻衣「どう?」
千里「美味しいよ、ありがとう…」
麻衣「でも、ほんねに熱が出るだなんて…まさか、インフルエンザ?」
千里「そうなのかなぁ、普通の風邪だと思っていたんだけど…」

   咳き込む。麻衣、千里の背をさする。

千里「君はもう帰れよ、移っちゃうよ…」
麻衣「大丈夫。もしあんたが迷惑じゃなければ…私、あんたの側にいたい…」
千里「麻衣ちゃん…」

   弱々しく微笑む。

千里「実は僕も…君にずっといて欲しい…。」

   (夕方になる)

麻衣「まぁ、へーこんな時間…。ぼちぼち行かんきゃ…」
千里「そうか…色々ありがとね。」
麻衣「えぇ、早く元気になってな。又明日もお見舞い来る…」
千里「嬉しいな…でも無理はするなよ。」

   二人、別れ、麻衣は部屋を出ていく。千里、寂しそうに麻衣を見送る。入れ違いに夕子。

千里「叔母さん、」
夕子「なんだい?少し今がっかりしたろ、」
千里「そんなことは…」
夕子「しかしねぇ、このお前が恋をして彼女を作るだなんて…大人になったじゃないか…。お前は男なんだ。しっかりと彼女守ってやるんだよ。お前が守られてちゃいけないからね。」
千里「分かってるさ。」

   うっとり。

千里「でも本当に彼女は…僕には勿体無いほどの…申し分ない女性だよ…」

   『どんなときでも…』

   麻衣もうっとりとバスに乗っている。


岩波家
   麻衣、呼び鈴をならす。

悟の声「はいぃっ、」

   開く。

悟「おや、麻衣ちゃん。どうした?」
麻衣「健司が、健司が具合悪いって聞きましたので…」
悟「お見舞いに来てくれたのか?」
麻衣「はい…」
悟「ありがとう…でも、あいつの風邪移っちゃったら悪いからさ…」
麻衣「大丈夫です。例え移ったとしても!だでどうか、一目だけでも会わせてはくれませんか?」
悟「分かった、いいよ。入って…」
麻衣「はい、」

   上がる。

悟「タケ、麻衣ちゃんが来てくれたぞ。」
麻衣「健司、」

   キョロキョロ

麻衣「あれ、悟ちゃん…叔母さんは?」
悟「あぁ、お袋はここんとこ仕事で28日からずっといないんだ。帰ってきたのは昨日の昼だけ…」
麻衣「じゃあ、あいつまさか…」
悟「そのまさか。飲まず食わずさ。あまりにも受け付けなくて、その割りに下してばっかりだからさ、病院につれてかっとしてるけど、頑としてあいつ、それも拒む。」
麻衣「バカっ、」

   部屋にはいる。

同・健司の部屋
   健司、ベッドで衰弱している。

麻衣「健司っ、」
健司「おぉ、なんだ麻衣…来たのかよ…」
麻衣「来たのかよ、じゃないわよ!!悟ちゃんから聞いたわ。あんな何考えてるんよ!!死ぬつもり?いい加減にして!!私のこんも考えてよ!!」
健司「麻衣…」
麻衣「又、去年のように私の側から消えちゃわないで!!私のこんを不安にさせないでよ!!」
健司「…」

   ぐったりと目を閉じる。

麻衣「健司っ!!ふんとぉーに救急車呼ぶでな!!お母様がお医者さんだだに、息子のあんたがちゃんとせんでどーするんよぉ!!」

   麻衣、携帯をかける。健司、フッと笑う。悟も入ってくる。

麻衣「悟ちゃん、今これから救急車来ますから、安心してください…」
健司「う、うぅうぅ…」
麻衣「健司っ!!健司?どーゆー?何しただ?」
健司「お腹いたいんだよぉ…」
麻衣「えぇっ?…どーしましょう、」
健司「トイレ…」

   ヨロヨロと起き上がる。麻衣が健司を支える。

健司「サンキュー麻衣…」

   健司、トイレへと入っていく。

   (暫く)
   やっと落ち着いて寝る健司。

健司「おい麻衣…いい加減帰れよ…移るぞ。俺、インフルエンザなんだぜ…」
麻衣「ほんなの移ったって構わない。あんたがちゃんと病院に行くの、見届ける!!今のあんたを私とても放っておくなんて出来ないの!!このまま帰ったら…」

   健司、フッと微笑む。

健司「分かったよ、バーか。ほの代わり、移ったって俺、面倒見てやんねーからな。」
麻衣「見てくれなくて結構よ。」

   軈て救急車が来て、麻衣も健司と共に乗り込む。悟、やれやれ。

悟「ったく、タケの野郎は…あー言うことだったんだな…。」

   自分の車で後を追う。


諏訪中央病院・病室
   健司と麻衣。健司は点滴を付けられてベッドで衰弱している。

麻衣「んも、バカね…」
健司「麻衣…」
麻衣「何よ、」
健司「今度俺の見舞いに来てくれるときにゃチョコレートケーキ、特大で焼いてきてくるよな…俺、お前のチョコレートケーキくや、」
麻衣「嫌っ、ダメ!!ほれは絶対に嫌よ!!ほいだって又あんた、死んじゃう…」
健司「バカだな、」

   微笑む。

健司「俺はへーほんねに2度も死なねぇーよ。」
麻衣「3度よっ!!」

   健司をこずく。

健司「いってぇーなぁ、病人殴るんじゃねぇーよ。てか、いちいち細かいとこ突っ込むんじゃねぇやいっ!!」

   麻衣、額に手を当てる

麻衣「熱、結構あるんね…あんたいつから具合悪いだ?」
健司「28日から熱がずっと下がんねぇーんだよ…インフルエンザB型だって。下痢が酷くてさ…うぅっ、…恥ずかしいけど、オムツされたよ…」
麻衣「仕方ないわよ…その度に起きてばかりは辛いものね…。お腹痛かったら我慢はしちゃダメよ。どう?今年は吐きっぽくはない?吐いちゃったりはしてない?」
健司「うん…お陰さまで、ほれは大丈夫だよ…うぅっぅぅっ、」

   麻衣、健司の体を擦る。

   (暫く)
   ストレッチゃーが運ばれてくる。

麻衣「?」
健司「?」

   千里が寝ており、ベッドに寝かされる。

麻衣「せんちゃんっ?」
健司「千里姫っ!!…お前、どうしたんだよ?」
千里「え…健司君に…麻衣ちゃん…」
麻衣「あのな、私、あんたんとこへ来る前にせんちゃん家におったの。彼、車山で倒れたもんで…でもさっきまで、」

   そこへ、珠子と夕子

麻衣「叔母さんっ!!急にどうしたんですか?」
珠子「あら、健司君に麻衣ちゃん!!あなたたちこそどうしたの?大丈夫?」
健司「あぁ、叔母さん…俺、インフルエンザB型…無理やり兄貴と麻衣に病院連れてこられた…ほれより…千里は…」
珠子「あぁ、この子ね…麻衣ちゃんが帰ってから少ししてから下痢や吐き気が始まって、酷かったの。段々に弱って衰弱しちゃうし…心配で救急車呼んだのよ。せんちゃんも、インフルエンザB型って言われたわ。」

   そこへ幸恵。

幸恵「今とっても流行っているんですよ。」
健司「お袋、」
麻衣、千里「叔母さん!!」
幸恵「あらあら、健司と小口くん、二人でここへ来るなんてね…。」
千里「叔母さんっ、」

   今にも泣きそうな瞳

千里「僕は死ぬんでしょうか?…僕の命は、寿命はあとどれくらい何でしょうか…僕は、僕はあとどれだけ生きられるのですか?」

 『若き日にに恥じないように生きた』

幸恵「大丈夫よ、小口くん、君は死んだりはしません。元気になるわ。」

   千里、涙を流しながら安堵の溜め息。

幸恵「小口くん、あれから悩みは?大丈夫?」
千里「えぇ…あ、うん…」

   渋る。

幸恵「あまり回復はしていないのね。いいわ、ついでなので元気になったらその事も色々見てみましょうね…」
千里「えぇ…ありがとうございます…」
珠子「健司君のお母様なのですね。いつも千里に良くしてくださりありがとうございます、」
幸恵「いえいえ、千里君はとてもお行儀がよくて礼儀正しいいい子ですね。うちの子も千里君を見習って欲しいですわ。」
珠子「いいえ、この子は、とっても泣き虫で弱虫の甘ったれで困るんですよ。家の子の方が、健司君の男らしさや逞しさを見習って欲しいですわ。」

   千里、赤くなる。

珠子「せんちゃん、良かったわね。あなたはいい方達に恵まれて…幸せね。」
千里「うん、ママ…」
夕子「そのママってのやめな、気持ち悪いよ…」
千里「いいだろぉ、別にぃ…ぐふっ、ぐふっ、ぐふっ、」

   吐く。麻衣も慌てて背を擦る。千里、苦しくて涙目。心も今にも泣きそう。麻衣も辛い千里に泣きそう。健司も千里を見つめる。

幸恵「でも麻衣ちゃん、看病してくれるのは嬉しいけど…インフルエンザは移っちゃうの。特に、吐瀉物や下痢、接触感染しちゃうから…今度はあなたまで移っちゃったら大変…」

   千里、泣き出す。

麻衣「辛いわよねせんちゃん、苦しいわよね…大丈夫よ、泣かないで。私なら移ったって平気…いられるだけあんたの近くにいるわ。」

   健司が咳き込む。

麻衣「あぁ、健司っ!!大丈夫っ!?」
幸恵「健司ちゃん、ぼつぼつオムツ取り替えますか?」
健司「や、やだよぉ…恥ずかしい…赤ちゃんじゃないんだ…」
幸恵「仕方ないじゃないの、自分じゃ出来ないでしょうに!病院なんだから恥ずかしがることはないわよ。ほら、お尻あげて。」
健司「嫌だっ、お袋にお尻見られるのだけは絶対に嫌だっ!!」
幸恵「なら、麻衣ちゃんにやってもらう?」
麻衣「いいですよ、分かりました。」
健司「もっとやだっ!!」

   健司と幸恵を蹴ったくる。

健司「女が思春期の男の子の下半身見るだなんてぇ!!このケダモノっ!!」

   麻衣、幸恵、呆れてお手上げのポーズ。

幸恵「勝手にやってなさい、」

   千里を見る。

幸恵「小口くん、おしっこはどうですか?」

   千里の元へ行く。健司、ふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向くが、そっと横目で麻衣を見る。

麻衣「何?」
健司「麻衣…」

   カーテンの中に来いと手招き。カーテンを閉めるように指示。幸恵、そっと麻衣と健司の方を見てクスッと笑う。千里も恥ずかしさに真っ赤になって俯いている。


   そんなこんなで夜は更け、病室には、健司と千里のみとなる。消灯をし、二人とも寝入っている。 

   (数日後)
   2008年1月10日。
   健司と千里、同時に退院支度をしている。そこへ制服姿の麻衣。

麻衣「健司っ、せんちゃんっ!!」
健司、千里「!!」
麻衣「わぁ!!」

   三人、微笑む。

麻衣「良かった。元気になったのね。」
健司「あぁ、お陰さまで。」
千里「君の看病のお陰だよ、ありがとね。」
健司「今日、二人で退院が出来るんだ。世話かけたな、麻衣。」
麻衣「ふんとぉーよぉ!!心臓止まるかと思ったでね!!」

   健司と千里にはぐ。

麻衣「二人ともお願い…私の側からもう消えてしまわないでね。」

   三人、抱き合う。

   『波よ穏やかであれ』

健司「ならさ、俺これからバイト先に顔出しいくわ。お前らも付き合えよ、奢るからさ。」


ベジタブルランドHARA
入り口で健司と別れ、麻衣と千里のみで中にはいる。

加奈江「いらっしゃいませぇー!!おぉっ!!」
麻衣「なえちゃん!」
加奈江「ひょっとしてター坊と一緒にそこまで来た?あの子、厨房の方へ入ってきたからさ。風邪治ったって報告。」

   千里を見る。

加奈江「何?君もター坊と一緒に入院してたんだってね?」
千里「あ…うんっ…」
加奈江「まいぴうと、彼氏が二人も大病にかかって心配だったでしょ?」
麻衣「えぇ。」
加奈江「とにかく、恐らくター坊、あんたら二人に気を使ってサービスしてくれたんだと思うよ。窓際の席も空いてるから…まだ昼間でイルミネーションも見えないけど、ゆっくりしてきな。」

   二人を窓際の席に案内する。

加奈江「二名さま入りまぁーす!!カップル様でぇーす!!」

   二人、赤くなって下を向く。

加奈江「ご注文決まったら呼んでね。」

   加奈江、厨房へと退場。

同・厨房内
   暇そうに小平、健司が話し込みながらチョコレートケーキやらピッツァやらをむしゃぼりついている。そこへ加奈江。二人、ギクリとなる。

加奈江「こらぁ、二人とも何やってるだぁ!!ほら早く、仕事でぃ、仕事ぉ!!早くやるぅ!!ほれほれ、シッ、シ!!」

   健司、小平、急いで準備に取りかかる。

健司(俺、挨拶に来ただけなのに、なんでシフトじゃない今日まで、しかも病み上がりの体でやらされねえーといけねぇーんだ?)

   健司も首をかしげながら渋々。加奈江、女中頭の様に指揮をしている。


同・客席
   麻衣と千里。メニュー表を見ている。

千里「んー、どれも美味しさそうだなぁ…迷っちゃう。」
麻衣「ここは、メインだけを頼んで、後はビュッフェなんよ。」
千里「へー…んー、なら僕は…これ!!ロブスターのフライ。」
麻衣「わおっ!!では、私は…鶉のローストセビーリャ風。決まりね。」
千里「あ、後はアンティパストに生ハムとチーズの盛り合わせね。」

   照れる。

千里「実は僕、生ハムとチーズは大好物なんだ。」
麻衣「ほーなの?私もだに!!一緒に食べていい?」
千里「勿論さ。だって僕一人であんなに食べて、又お腹壊しちゃったら嫌だもん。」

   二人、笑う。

千里「なえちゃーん!!」
加奈江「はーいっ。」

   やってくる。

加奈江「何にする?」 
麻衣「えーっ、ほいじゃあねぇ…」

   麻衣、千里、注文をしている。

加奈江「畏まりました、少々お待ちくださいね。」

   厨房へ去っていく。

   二人、厳か。

   軈て夜になっていく。

千里「あー、もんこんなに暗くなっちゃった…」
麻衣「ふんとぉー…」

   そこへウェイター姿の健司。

麻衣「きゃっ、健司、格好いい!!」

   健司、照れる。

健司「やめろよ、ほれ、もうじきはじまんぞ。」
千里「始まるって…何が?」
麻衣「とってもいいものだに。ほれ、」

   軈て。アイスキャンドルが点灯。

千里「わぁー、綺麗…」
麻衣「だら、これ全てアイスキャンドルなんよ…」
千里「へぇー…」
健司「あぁ。毎年、茅野、原村、富士見の小中学生達が一つずつ作るんだよ。俺達も、な。」
麻衣「えぇ、私達も昔よく作ったんよ。」
健司「ま、おれは結局仕事入ってくれって言われたもんでさ…戻るけど、お前らはゆっくりしてろよ。」
千里「うん、ありがとう。…素敵だね…白銀の雪の上に2羽の白鳥と王子…なんか僕、とっても幸せな気分さ…」

   うっとり。

千里「こんな美しいものを君と二人で見れるだなんて…そして、初めて知った。もう何年も諏訪にいたのに…こんなのがあるだなんて…」

   麻衣も黙って微笑む。

麻衣「ところでせんちゃん、」
千里「ん?」
麻衣「あんたは覚えているかしら…私達が始めて会った…」
千里「小学4年生…」
麻衣「じゃなくて…」
千里「え?」
麻衣「会っているんよ、私達ほれ以前にも…忘れちゃった?」
千里「ごめん…何処で?いつ?」
麻衣「あれは、幼稚園だったかしら…私は、茅野市宮川、せんちゃんも茅野市…」
千里「あぁ!!」
麻衣「ついこの間思い出したの。あんたと私、ほんねに小さいこんからお顔を会わせていただなんて…」
千里「あぁ、だね…でもそれよりも僕が印象深いのは…5年生の時かな…」
麻衣「5年生の?あぁ!そしてほの年は、縄文尖り石祭に一緒にいって、夜、流星を見た…あの日のこんだら?」
千里「うん…」
麻衣「えぇ、確かに…私と、健司と、あんたと三人で…。」


(回想)尖り石縄文公園
   まだ幼い健司、千里、麻衣が仰向けに寝転んでいる。

麻衣【ほう…まだ幼かった私達は、流星を見ながら夢を語り合ったわ…ほして、三人で不思議だけど美しい夢を見た…】
千里【今思えばあれはとても不思議だったよね…】
麻衣【あんたもやっぱり覚えとるんね…】
千里、麻衣【アラセルバ王国っ!!】

(戻って)ベジタブルランドHARAMURA

千里「何か懐かしいな…」
麻衣「でも今、こんなに愛しく大好きなあんただだに、初めて会った幼稚園…私、あんたのこん大嫌いだったんよ。」
千里「んー…、えぇ?」
麻衣「でも、ある日を境に、あんたへの偏見が無くなって好きになったわ。」
千里「え、いつ?」
麻衣「さぁな。又今度話すわ。」
千里「ちぇっ、ケーチ。」

   グランドピアノの前、ユカリ、ミズナが登場。

麻衣「お、」
千里「何か始まるのか?」

   二人、小粋に礼。

千里(ミ、ミズナ?)
麻衣(ユカリ君っ!?)

   ミズナ、ユカリ、歌い出す。
   『アイスキャンドルラブストーリー』

ミズナ『♪Look on 目と目見つめたらチャッチャ思いきってその手を繋いじゃいなよ、マイナス気温も暖かいな、雪景色から始まるラブストーリー…』
ユカリ『粉雪が降ってきたら、アイスキャンドルに灯をともして…』
二人『恥じらいを捨てて、oh yeah ok!さぁ声出して歌おう、ウィンターソング。トナカイの橇が走り出したらmy go you go!雪景色に飛び出そう今すぐ…』
ユカリ『think so何かを感じたら、チャッチャ 思いきってその身体抱き締めちゃいなよ、白い息さえも暖かいな…雪景色から始まるラブストーリー』
ミズナ『粉雪が降ってきたら、アイスキャンドルに灯をともして…』
二人『寒さも忘れて、oh yeah ok、さぁ一緒に乗ろうよジェットスキー、トナカイの橇が走り出したら、my go you go 雪景色に飛び出そう今すぐ…粉雪が降ってきたら、アイスキャンドルに灯をともして…oh yeah ok さぁ声出して歌おう、ウィンターソング…トナカイの橇が走り出したら、my go you go 雪景色に飛び出そう今すぐ…』

     二人もうっとり。
原村の道 
   健司、麻衣、千里が歩いている。

千里「二人とも、今日はありがとうね。とっても幸せでした。」
健司「何だよ、改まって。良いってこんよ。」
麻衣「私も、とっても幸せな一日だったし。」
千里「僕、君達みたいな友達が持ててとても嬉しい…特に麻衣ちゃん…君は本当に、僕が今までであった人の中で最高の女の子さ…」
麻衣「え、え、何よ?」
千里「君は何もかもが優しい…」

   恥ずかしそうに

千里「だって、僕は何度も君の前で…いい高校生になっておもらししちゃってるのに…君は少しも笑わない…誰にも話さないで、僕を庇ってくれる…」
麻衣「ほんなん、人として当たり前ずらに!困っとる子を見て、笑ったり放っておくわけないわ!!」

   健司と千里を見て笑う。

麻衣「さぁーてと、お腹も一杯…私なんだか眠たくなっちゃった…」
健司「俺も、」
千里「僕も。」

   話をしながら帰っていく。

茅野中央高校・教室
   いつも以上にワイワイとしている。そこへ麻衣と千里。

麻衣「はよーんっ!!」
千里「みんなどうしたの?何か楽しそうだねー!」
加奈江「あ、せんちゃんにまいぴう!!」
すみれ「今日、最後のテストでしょ!!」
千里「あーーーーーーっ!!!」

   千里、蒼白。

千里「忘れてた…テスト勉強何にもしてない…どうしよう。」
みさ「それが、案外大丈夫だったりして?」
千里「え?」
すみれ「育田先生、今日休みになったのよ。」
麻衣「えっ!?」

   目が輝く。

麻衣「ふんとぉーに?」
すみれ「何よ麻衣、その嬉しそうな顔…薄情ね。」
千里「でも、なんで?」
みさ「奥さんのお産よ。お子さんが産まれたんですって。」
千里「へー…でも、」

   パニックして暴走。

千里「それとどう関係があるんだよぉーっ!!」
向山「小口、落ち着けって。それが大いに関係あるんだよなぁ…つまり、」
キリ「育田がいないってことは、テスト中も多少気も緩んでて大丈夫かもしれないってこと。」
みさ「要は、何をしてても怒鳴られないってこん。」
加奈江「カンニングも夢じゃないっ!!」
すみれ「これっ、なえに城ヶ崎っ!!」

   千里、微笑む。

千里「そうなんだ。ありがとう…でも僕、さすがにカンニングなんて…汚い手は使いたくはないよ。」

   (チャイム)
   全員が席につく。そこへ、白石先生。全員、硬直していきを飲む。

白石先生「皆さんもご存じの通り、本日は育田先生がお休みです。ですので、本日は、私がこのクラスを受け持つことになりました。よろしく。」

  
   クラス中、蒼白になる。

白石先生「ではテスト用紙を配ります。合図をしたら始めること。分かりましたね…」

   配り始める。合図と共に、全員、固くなってやり出す。


同・女子トイレ
   麻衣、すみれ、加奈江、キリ、みさ

麻衣「はぁ、でもビックリした…まさか白石先生だとはな。」
加奈江「本当、本当。6部は毎日あの空気と付き合ってるんだもんなぁ…気の毒、てか大したもんだよ。」
キリ「ありゃ、相当メンタル面も鍛えられるね。」
五人「んだんだ。」
みさ「きっと、日本史、古典では赤点とる人いないんじゃないかな…」
すみれ「そうね、流石の麻衣も真面目にやってたみたいだし。」
麻衣「まね、でもまぁ…日本史も古典も元々大好きだし…テストも好きだし、これなら白石先生じゃなくっても寝ないに。今日は神経ごしたいわね。」

   個室からマコ。

マコ「ふーん、白石先生だったんだ。」
麻衣「北山ぁ!!…ほーなんよ。」
マコ「千里は?どーだった?」
麻衣「彼もちゃんとやってたに。白石先生の怖さ、彼も知ってるしな…」

同・男子トイレ
   千里、用を足しながら

千里「くしゅんっ!!…くそぉ、又風邪かなぁ?嫌だな…」

   向山が来る。

向山「お!小口、お疲れ。」
千里「としやぁーん!!」
向山「いやぁ、びっくりしたよ。流石の俺も…早弁する隙もなかった。千里、お前は?」
千里「僕は…って?」
向山「オムツん中に、する暇あったか?」
千里「おいっ!!」

   逃げる向山を追いかけていく。


柳平家・台所
   バレンタインデー。麻衣、ケーキを焼いている。
   『心を込めて』

紡「ん、麻衣。何作っとるだ?」
麻衣「ほー、今日はバレンタインデーだら?ほいだもんで…」
紡「ふーん、」

   ニヤリ。

紡「健司くんとせんちゃんだね?」
麻衣「あったり前!つむ、あんたは?」

   手元を見る。

麻衣「誰に作っとるだ?」

   ニヤリ。

麻衣「あんたもついに恋ですか?」
紡「まーさーかっ、このバレンタインデーっつー風潮に、平成ナウな私だけがなんか置いてきぼりな感じでやぁんだもんで?しょーがなく殿方に。」

   つんっとする。

紡「ほいだって私は、男になんか興味もないしね…」

   『イケメンなんて相手にしない』

紡『♪とことんやるしかないのさ、イケメンなんて相手にしない、力強く行くしかないのさ、イケメンなんてgoodbye goodbye goodbye!一人目メガネ系イケメン登場…』
麻衣(悟ちゃん?)
紡『♪知的な雰囲気、成績も抜群、羊付リムジン、マカロンタワー出されたって私は動じないよ。二人目ワイルド系イケメン登場…』
麻衣(矢彦澤?)
紡『♪野性的タンクトップ、筋肉粒々、喧嘩も強くて女の子、守ってあげるって…私には必要ないじゃん!!イケメンイケメンって騒いでるなんで?かっこよけりゃいいって訳でもないでしょ?甘い仮面の下にはどんな顔があるのかな?どんなに口説かれても必殺百連打チョップ、ストレートヒット、門前払いの達人。三人目紳士系イケメン登場、』
麻衣(そうちゃんか?)
紡『♪スーツにネクタイ、ダンディーな革靴、レディーファースト攻略してるつもりでしょう?私には通用しないけど。四人目爽やか系イケメン登場、』
麻衣(西脇だ!!)
紡『♪さらさら茶髪を自然にかきあげる。とにかく笑顔、ヤバイくらい笑顔、キザな微笑みに女の子はノックアウトなんだって…興味ないけど。イケメンイケメンって騒いでるなんで?スタイルよけりゃいいって訳でもないでしょ?甘いマスクの下にはどんな顔があるのかな?どんなに口説かれても、必殺高速回転キック、100メートル吹き飛ばす、鉄壁バリアの達人。イケメンなんて相手にゃせんに!!とことんやるしかないのさ、イケメンなんて相手にしない、力強く行くしかないのさ、イケメンなんてgoodbye goodbye goodbye!!』

   麻衣、ポカーンとする。

紡「ってわけだもんで。私ゃ恋とかほいのには全く興味はないの。レイミーテンデ麻衣?」

麻衣「ふーん、まぁいいに。で、あんたは?誰に渡すだ?」
紡「まぁ、会ってみりゃ分かるって。でも…」

   麻衣のを見る。 

紡「あんたのチョコレートケーキは相変わらずでかいな。」
麻衣「えぇ、この7号がせんちゃんで、9号が健司だに。」
紡「え、えぇっ?」
麻衣「健司のやつ、このチョコレートケーキが大好きでへー、目がないんよ。毎年材料費がばかになんねぇーっつーこんもお構い無しに大きいのねだるもんで、1ホール特大にしてやるだ。少ないとブーブー文句言うだだだもん。んで、ほの場でいつも、1ショートペロリと食べてから、家でゆっくりと残りは食べるんですって。」

   笑う。

麻衣「ご両親と悟ちゃんには、決して食べさせないのよ。」
紡「どいで?」
麻衣「私を独り占めしたいんですって。“柳平麻衣は俺のもんだぁーっ!!だで、誰にもこのケーキは食べさせねぇ!!これはあいつの愛がごさまんと詰まってんだ。だで俺一人で全部食う!!”とかなんとか…」
紡「はぁ?なにほれ?」
麻衣「だらぁ?でも…あいつは、ほんなところが又可愛いの。だで私はあいつを愛しく思う…。未だに変わっとらん子供っぽいところが…」

   しばらくぽわーん。

中っ原縄文公園
   小松、千里、麻衣、紡。

小松「や、麻衣ちゃんにつむ!!」
千里「話って?何?」
麻衣(そうちゃん!?)
紡「やだねぇ男共…二人とも察しろよ。」
麻衣「今日は、バレンタインデーだらに?だでせんちゃん、私からの気持ちだに。受け取って。」
千里「僕に?ありがとう!!嬉しいなぁ…」

   麻衣、千里、赤くなって下を向いてもじもじ。紡、二人を見て微笑む。

紡「私からは義理で。そうちゃん、あんたにやるわ。」
小松「ぼ、僕に?ありがとう…でも、何で?」
紡「義理チョコにやる理由なんてある?信州女の挨拶とでも思って受け取りな。」
小松「う、うん…」

   麻衣を見る。

小松「君からは?ないの?」
麻衣「あ、ごめーん。せんちゃんと健司の作るので精一杯で忘れちゃったぁ。」
小松「そ、そんなぁ…」

   がくりと撃沈。千里、くすくす。

小松「笑うなっ、小口君っ!!」

   恨めしそうに千里をにらむ。麻衣と紡も顔を見合わせて微笑む。
   『私は黒髪、私は茶髪がいいわ』

白樺高原・コスモス湖岸
   健司と麻衣。夜。

健司「麻衣…例のもんは?」
麻衣「んもぉ、せっかちね。ちゃんと持ってきてあるわよ。」

   手提げを渡す。

麻衣「ほれ、ちゃんと9号のケーキ焼いたに。でも今年は…こうしてあんたに直接手渡し出来て私、嬉しい。」
健司「サンキュー。俺こそ…嬉しいよ。」

   微笑む。

健司「ほいじゃあ麻衣、約束の…昨年叶えてやるこんが出来なかったバイオリン…弾くな。」

   弾き出す。麻衣、うっとりと聞き入っている。
   

麻衣「ブラーヴォ健司!!最高!ワルシャワから戻ったら一段と上手くなったわね。卒業後、あんた、音大行くのね?」
健司「いや、行かねぇーよ。」
麻衣「ほいじゃあ、どーするだ?まさか、会社?」
健司「まさかっ!!ほりゃ絶対しねぇーよ。」

   赤くなってもじもじ。

健司「な、なぁ麻衣?」
麻衣「ん?」
健司「ダメ元で…断られること前提で聞くけど…」
麻衣「は、はい…」
健司「俺達さ、卒業したら…結婚…するだろ?」
麻衣「えぇ…」
健司「俺実はさ…」

   麻衣、話を聞いて放心状態。

健司「どうだ…麻衣?俺、服飾デザインの勉強に行きたいと思ってるんだ。だから、だから…どうせお前も…」
麻衣「えぇ…分かった。でも、健司と一緒に暮らすことは…少し考えさせて。両親がなんと言うか…」
健司「分かった。ゆっくりでいいよ…いい返事…待ってる。俺、お前に色々制限かけて束縛するつもりとかもねぇーし、お前の夢も俺、全力で応援するし、お前には自由に楽しくいてほしい。だで、」
麻衣「はい…ありがとう…」
健司「ほして、今年の初夏…出来れば結婚式、挙げよ。」
麻衣「ほれって…正式なプロポーズ?」

   健司、真顔で頷く。
   『白百合に捧ぐ歌』

麻衣「健司…」
健司「麻衣…」

   二人、抱き合う。健司は確りと麻衣を抱き締める。麻衣は幸せだが少し寂しそうな複雑な表情。

小口家
   千里と家族たち。

夕子「いよいよだね千里、検討を祈る。」
千里「叔母さん、ありがとう。」
珠子「せんちゃん、あなたならきっと大丈夫よ。自信をもってね。」
千里「うんっ。」
珠子「試験の前には行きたくなくてもちゃんとトイレには行くのよ。万が一の時に備えて紙オムツは履いていなさいね。」

   千里、真っ赤になる。

千里「ちょっとママぁ、やめてくれよ、」

頼子「千兄ちゃん、ファイトですっ!!」
忠子「検討を祈るでしゅっ!!」
二人「頑張ってくださいっ。長野から応援してます。」

千里「よりちゃんにただちゃん、それにママに叔母さん、ありがとう。じゃあ僕、そろそろ…」

   時計を見る。

千里「駅で麻衣ちゃんと健司くん待たせてるから…」

   元気よく飛び出ていく。

東京芸大
   試験が行われている。千里、真剣そのものの表情。

東京・橋の上
   麻衣、健司、千里。

麻衣「おかえりせんちゃん、」
健司「どうだった?」
千里「う、う、う…」

   泣き出しそう。

健司「おいおいおい、どうした?」
千里「も、もう…もう僕は…僕はダメだ…おしまいだよぉ…」
健司「はぁ?一体何があったんだ?」

   健司に泣きつく。

千里「一応は埋めたよ。埋めたけど、筆記試験なんて全滅だろ?緊張で実技はミスるだろ?もう最悪だよぉ!」
麻衣「せんちゃん、まだ分からないじゃないの、大丈夫よ。心配しないでね。」
千里「麻衣ちゃん…僕、僕、どうすればいいの?…舐めてたよ…僕は自惚れてたんだ。バカみたいじゃないか…」

   二人、千里を慰める。

健司「さ、こうしててもしょうがないだろ?折角東京に来たんだ。このまま帰るのも癪だろ?見物でもしようぜ。」
麻衣「お、いいねぇ。ほ、せんちゃんもっ!!」

   麻衣、千里の手をとって三人、大都会の中を走り出す。

麻衣「ところで、あの期末テストは?」
千里「あ、卒業式の日に先生が返して成績表を張り出すって。」 
麻衣「ふーん。」


   (合格発表の日)
   千里、受験番号を恐る恐る照らし合わせている。

千里「ない…ない…ない…ない、ん?」

   一致した番号を見つける。

千里「あ…あ、あ…」

   目を見開き、唇をぎゅっと噛み締めて踵を返す。


   大学の出入り口で麻衣と健司。

麻衣「せんちゃん、どうだった?」
健司「千里?」

   千里、涙を溜めて唇を噛み締めている。

健司「ダメ…だったか?」
麻衣「せんちゃん…」

   麻衣も泣きそうになる。千里、強く大きく首を降る。

千里「違う…違うんだ…」

   涙声。

千里「合格…しました…」

   千里、ワッと麻衣と健司に泣きつく。麻衣と健司も歓喜余ってもらい泣き。三人でなき会う。

麻衣「おめでとうせんちゃん、ふんとぉーにおめでとう!!私、あんたならきっとやる、大丈夫だって信じてた。ついに夢が叶ったのね!!私も嬉しいに!!」
健司「千里、よかったな。おめでとう、ふんとぉーによかったな。」
千里「君達がいてくれたお陰だよ。ありがとう、本当にありがとね。僕嬉しいよ!すごく嬉しいよ。今までの人生の中で一番幸せだ!!」
   千里、声を挙げて泣いている。

小口家・居間
   珠子と夕子が、お茶をしている。

珠子「もう一時間にもなるのよ。それなのにせんちゃんったらまだ出てこないの…大丈夫かしらあの子?私ちょっと見てくるわ…」

   立とうとする珠子、夕子が止める。

夕子「姉さんや、やめときな。今はあの子を一人にしておやり。」

   珠子、座り直す。

珠子「そうね、」
夕子「しかしあの千里がねぇ…よくやった。大したもんだよ。ねぇ、姉さん。」
珠子「えぇ、本当。これで本当にあの子の夢が叶ったのね!!今夜はお祝いよ。せんちゃんの好きなもの作ってあげなくちゃ。何がいいかしら?」
夕子「姉さん、私も手伝うよ。」
珠子「ありがと、ねぇ何がいいと思う?せんちゃんの大好物。」
夕子「そうだねぇ…」

同・浴室
   千里、シャワーを浴びながら涙を隠して泣いている。

千里「ふっ、ふっ、う、う、う、う、う…」
珠子の声「せんちゃん、新しいタオルとパジャマ、ここに置いておくわねぇ!!」
千里「…。」

   珠子、穏やかに笑って脱衣場を退場。


茅野中央高校・教室
   育田と生徒たち。

育田「では諸君、先日のテストを返しながら…授業をする。これが俺がお前たちに教える最後の授業だ。心して聞くように。」
全員「はいっ!!」
育田「では、始めるぞ。」
全員「はいっ!!」

   授業を始めるが、ふと柳平麻衣を見て目をぱちぱち。麻衣は確りと聞いてノートをとっている。

育田「おい、柳平…」

   麻衣の元へと行く。

育田「お前今日は、一体どうしたんだ?」
麻衣「はい、何がです?」
育田「お前どっか、調子悪いのか?」
麻衣「いいえ、至って元気ですよ。これが具合悪そうに見えます?」
育田「いや…しかしお前がこの俺の授業で目を覚まし、ノートをとっているとは…」
麻衣「あら、いけません?私だって真面目に本気を出せばこんなもんだに。ほいだって今日が最後だだら?最後の授業くらいは私だって先生の授業、きちんと受けたいですもん。ねーっ、育田勝先生ーっ!!」
育田「お前は…本当に…」

   麻衣の額に手を当てる。

育田「熱でもあるんじゃないか?ややっ、少し熱いぞ?もういい柳平、お前は帰れっ!!」
麻衣「だでうっさいなぁ育田はぁ!!やめてくんせぇーよ、私は熱なんてありませんっ。これが平熱なんです。」

  麻衣、恨めしそうに育田を睨んで見つめる。

育田「そ、そうか?」
麻衣「ほーですっ。いいで続けてください。時間の無駄になってしまいますよ。」
育田「お、…おぉ…」

   教壇に戻っていく。

育田(こりゃどうも今夜辺り雪でも降るかな。)

   首をかしげながら再開する。

玉川運動公園・道路
   麻衣、千里、すみれ、みさ、加奈江、キリ

みさ「ちょっと見たぁ?あの育田のポカーンとする顔!!笑えるっ!!」
すみれ「でも麻衣、育田先生の言う通りよ、今日はあなたどうしちゃったの?」
みさ「そうよ、まいぴうあんなに数学嫌いだったのに…」
キリ「まるで人が変わったように一生懸命はなし聞いてノートを取ってた…」
加奈江「どいこと?」
麻衣「あー嫌いだに。今でもあんなもん大嫌いだに。ほいだけどな…育田の授業も最後くれーちゃんと受けてやろーかなぁ…と思ってな。最後だと思うと…」

   懐かしそうに遠くの空を眺める。

麻衣「あんだけ嫌っとった数学も、懐かしく思える…てか、何か寂しくなるなぁ…何て思ってさね。」
すみれ「そう言われてみれば、」
みさ「それもそうね。」
加奈江「ねぇ、話変わるけどさ、私なんかお腹空いてきちゃった。」
千里「あ、僕も僕も!!」
キリ「なら、帰る前にみんなでどっかで食べていこうよ。」
麻衣「お、いいねぇ!!」
すみれ「OK!!」
みさ「それじゃあ、何処がいいかなぁ?」
千里「みんな何が食べたい?」
麻衣「んーと、私はねぇ…」
キリ「そうだなぁ、何が食べたいんだろう?」
加奈江「ラーメンとかもいいねぇ。」
千里「わぁ、やったぁ!!僕、麺大好き!!」
全員「お、いいねぇ。」
千里「んじゃ、それにします?」
すみれ「いいですねぇ…」

   全員、べちゃくちゃ喋りながら雪のある道を歩いていく。

   (その夜)
   大雪になっている。


茅野中央高校・体育館
   卒業式が行われている。女子生徒と千里、啜り泣く。

   千里の伴奏、小松の指揮で三年全員が歌う。
   『大地賛唱』

同・登校坂
   生徒と親がぞろぞろ。前方からはテレビカメラ。

紡「あ、見てみ。あれってもしかしてLCVのインタビューじゃねぇーだ?」
麻衣「ふんとぉーだ。」
糸織「おーい、せんちゃんにそうちゃん!!すみれちゃん達もこっち来いよ!!LCVがおるに。」
千里「あ、本当だ!!」

   千里、すみれ、小松がやって来る。

アナウンサー「君達は卒業生ですか?」
六人「はいっ、そうです!!」

   微笑ましくメンバー、インタビューを受けて照れたり笑ったりしている。それぞれの母親たちは顔を見合わせて微笑む。


   (インタビューが去ってから)

すみれ「なんか、思いがけず…だったわね。しかもこんな卒業式の日に。」
千里「何か最後の最後に青春時代のいい思い出が出来ちゃったな。」
糸織「放送されたら録画しとかんとな。」 
全員「うん、うんっ!!」

   わいわいと坂を下る。

すみれ「でもなんか、もうこの坂を通わなくなると思うと…寂しいわね…」
麻衣「ほーね…」

   そこへみさ、加奈江、キリ、向山も合流。

紡「何泣いてんだよ麻衣、あんたは幼稚園のこんからずっとほー…泣き虫だなぁ。」
麻衣「ほいだってぇ…」

   紡、千里を見る。

紡「せんちゃんまで、まだ泣いてるし。」
みさ「ほいじゃあみんな、打ち上げ行く?」
すみれ「お、何処がいい?」
加奈江「うーん、安くてぇ…」
キリ「美味しくてぇ…」
千里「高校生にも人気があるお店って言ったら?」

グラジオラス
   麻衣、みさ、すみれ、加奈江、キリ、向山、千里、紡、糸織。

麻衣「結局、ここへ来ちゃったな。」
紡「さて、何食う?」

同・店の外
   その頃。美輝と横井。

横井「ったく、お前もいいのによぉ…へーマネージャーの役目は終わってんだぜ?」
美輝「いいじゃないの。、荷物くらい持たせてよ…私は…」

   恥じらってもじもじ。横井も照れる。

横井「てへへ、しょーがねぇなぁ。」
美輝「さ、着いたわ。入りましょ。」
横井「うぇー、やだよ俺、こんな洒落た店はよぉ…」
美輝「ぶつぶつ言わないの。今日はとことんマネージャーの言うこと、聞いてもらうわよ。」
横井「ほーい…」

   二人、中に入る。

同・店の中

紡「あれ、てっちゃんとみっちゃんじゃね?」
麻衣「ふんとぉーだ、おーいっ!!」

   横井、美輝、気が付いてくる。

横井「あ、麻衣たちじゃねぇーか。何してんだよ?」
すみれ「部活の打ち上げ会よ。後から北山とやっちゃん、ちきちゃん、西脇も来るわ。」
紡「良かったらあんたらもどう?」
横井「いいよ、俺ら音楽部じゃねぇーし。」
すみれ「いいのよ。いいからお座りなさい。」

   無理矢理二人を座らす。

すみれ「ウェイターっ!!」
ウェイター「はい、お伺い致します。」
すみれ「えーっとねぇ…この大盛りペペロンチーノ一つと、マリナーラピッツァ一つと、キノコとなすのキッシュ一つと…それからそれからぁ…」

   注文を続ける。

小松「おいおい、すみれちゃん、もういいよ!!充分だって!!」
千里「そうだよ、僕らそんなに食べられないよぉ?」

   西脇達も来ている。

西脇「第一お金はどうすんのさ?」
すみれ「お黙りっ、西脇っ!!」

   ニヤリとしてチケットを見せる。

すみれ「春休み期間中一日限定の高校生応援食べ放題パスポートよ。市内の加盟店ならどこでもお好きなところで一回使えるの。実は私これ、宮川商店街の新春大福引き大会で当てたのよ。商品券と二つ選べたんだけどさ、こっちの方が私達にとっちゃメリットあるでしょ。だから、まだまだ行くわよぉ!!」

   再び注文を始める。

糸織「でも、そんなに頼んでも絶対に残っちゃうってばぁ!!」
向山「ほうだぜ、いい加減にへーやめろよ!!おいっ、」
西脇「リネッタからも何か言ってやってくれよ。」
麻衣「すみれさん、へー分かった、分かったで!!充分よ。」
すみれ「そう?…んもぉ、情けないわね、あんたらは今が食べ盛りでしょうに。特に男子っ!!」
ウェイター「以上で…宜しいでしょうか?」
すみれ「仕方ない…まだ頼みたいところだけど…いいわ、お願い。」
ウェイター「少々お待ちくださいませ。」  

   ウェイター、去る。

   料理が来る。

ウェイター「お待たせいたしました。ごゆっくりどうぞ。」
 
   机に目一杯並ぶ。放心状態のメンバー

すみれ「ちょっと…やり過ぎちゃったかしら?」
横井「すみれさんよぉ、何処にこんなに注文するバカな高校生がいるかっ!!」
千里「こりゃ…僕ら男が五人いたって無理だね…」

   と言いながら食べ始める。


  お皿は全て空。メンバー、食べ終わって伸びている。

千里「はぁー、僕もうお腹一杯だ…流石に入らないよぉ…」
小松「僕も、」
すみれ「本当に、少し頼みすぎちゃったわね。」
横井「当たり前だ!!限度っつんもんを少しは考えろよな!!」
向山「んだ、んだ!!」
加奈江「お前が言うなっ、お前がっ!!」
みさ「でも…」

   クスクス。

みさ「そうちゃんったら、小さい頃からちっとも変わっていないんだもん、おかしくって…」
小松「え?何が?」
みさ「クリームソーダよ。あんたいつも、小学校くらいの時からクリームソーダとピザパンばっかりで…しかも、食べ方までちっとも変わってない…」
小松「へへへっ、そ?だって好きなんだもん。」 
麻衣「ほーなんね。そうちゃんもクリームソーダが好きなんね。」
小松「え?」
麻衣「私も、せんちゃんも健司も大好き。」
千里「僕は特にマンゴークリームソーダ!!」
小松「そうなんだ。だよねぇ、だってあれ、凄く美味しいもんね。」
麻衣、千里、小松「ねぇーっ!!!」

   三人も他メンバーもクスクスと笑う。

カラオケボックス
   全景の人々。

みさ「なぁよーしっ!!まずは私から歌いまぁーす!!」
全員「よっ!!」

   みさ、マイクをもってノリノリ。他の人たちも楽器を振ったり、一緒に歌ったり踊ったり。其々に順番で歌っている。


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