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石楠花物語中学生時代
源チサの誕生
諏訪中学校・校門
   生徒たちが下校をしている。麻衣と千里。

麻衣「せんちゃん、私が昨日おば様達にお願いしたから大丈夫よ。ね、今日は私の家においでなさい。」
千里「本当にいいの?」
麻衣「勿論!!」
千里「うんっ、ありがと!!」
麻衣「なら、」

   二人、走り出す。


高橋家

麻衣「ただいまおば様!!」
房恵の声「おや、麻衣ちゃん帰ったのね。お帰り。」
麻衣「せんちゃん、いいに。入って。」
千里「では…お邪魔しまぁーす…」

   二人、家の中に入る。

同・和室
   麻衣、千里を案内

麻衣「とりあえず、座ってて。ここが私のお部屋なの…」
千里「へぇー…」

   固くなってキョロキョロ。

麻衣「ちょっと待っててね、私、おば様呼んでくる。」 

   麻衣、出ていく。千里、部屋中をキョロキョロ。

千里(へー、ここが彼女のお部屋か…和室なんてなんかいいな…)

   立って部屋をくるくる。色々なものを見る。

千里(可愛い、彼女こう言うのが好きなんだ…本も沢山…スゴいな…)

   しばらくして、麻衣と房恵が入ってくる。

麻衣「せんちゃんお待たせ。おば様、紹介するわ。友達の小口千里君。とってもいい子なのよ。」
房恵「まぁ、あらあらいらっしゃい。ゆっくりしてらしてね。」
千里「麻衣ちゃんの、ご親戚?」
麻衣「まぁね、遠い親戚のおば様。ほら、今年は諏訪六で大きなイベントがあるら?おば様の家、花梨農家なんよ。ほいだもんで、ほのイベントの為に農家もとても忙しくなるのよね。私はほのお手伝いで呼ばれたのよ。」
千里「ふーん…花梨かぁ…」
麻衣「あんたのところは?ご両親やご親戚、何かやってるの?」
千里「僕のパパは君も知っての通り、消防士だった…死んじゃったけどね…」

   泣きそうになる。

麻衣「ご、ごめんな…」

   千里、涙を拭って微笑む。

千里「僕こそごめん…大丈夫だよ。ママは、昔公務員だったけど、今は普通の専業主婦さ。ほら、幼稚園卒園してから京都に行ったろ?実は僕、元々諏訪の子じゃないんだ。」
麻衣「え?」
千里「そう。生まれは京都…だからママ、昔は京都市役所で働いてた。パパは元々諏訪の人だけどね…でも、僕が10歳の時にパパのパパ…つまり僕のおじいちゃんが病気になっちゃって…だから、僕とママとパパでおじいちゃんを看病するために諏訪に来たんだ。一年くらいで死んじゃったけど…それからも僕らはずっとこっちに住んでるの…正直、京都よりも、静かでここの方が住みやすいや。」
麻衣「ほーだったの。ほの時に叔母さんもご一緒したの?」
千里「叔母さん…?あぁ、叔母さんはパパが死んじゃってから、僕が寂しいだろうって態々京都から来てくれたの。今は、パパに変わって働いてくれてるんだ…妹たちが未だ小さいからママは家を離れられないからね…。」
麻衣「何処で?」
千里「高島のはぽねさだよ。」
房恵「ほー、お前さんは京都出身なんだね。頭良さそうで、賢そうな顔立ちだよ。」

   お茶を出す。

房恵「ほら、お茶でもまずは飲みなさい。私はねぇ、花梨農家やってるもんで、家の裏は花梨畑になってるんだよ。後で見に来るか?これは、特製の花梨紅茶だよ。口に合うか分からないけど飲んでごらん。」
千里「わぁ、珍しい!!ありがとうございます。いただきます!!」

   啜る。

千里「んー、美味しい!!僕紅茶って大好きなんだ!!」
麻衣「良かった。」

   麻衣と房恵、微笑む。

払沢公民館・大広間
   綿子、幸恵、文子、英子、摩耶。

綿子「でも、どうしましょう…我が婦人会ブース、何をすればいいのかしら?」
文子「決まったとしても問題は看板娘ですわ。一つのブースから一人は出さなければならない決まりなんですもの。」
英子「矢部川さんの娘さんは?」
摩耶「ののちゃん?でもあの子は、払沢じゃないわ。別の地区から連れてくるって言うの?」
綿子「では、田島さんちの娘さんは?」
英子「ダメよ、お隣だわ。」
幸恵「なら、看板娘には相応しい、取って置きの子がいますわ!!」
ほか全員「誰ですか?」
幸恵「柳平さん家の麻衣ちゃんです。」
文子「麻衣ちゃんねぇ、…」
英子「ダメよ、あの子は如何にもな田舎娘よ…」
摩耶「そんな子にコンテストなんて無理ですわ。」
幸恵「あらそうかしら?彼女は、眼鏡さえとればとても美人なんですよ。それに、彼女は、籍は払沢にありますもの。考えてみてはいただけませんか?」

   婦人たち、顔を見合わす。

綿子「分かりましたわ。では、麻衣ちゃんを推すようにしておきましょう。後残る問題は…」
幸恵「それも、」

   手をあげる。

幸恵「原村と言えばセルリーですわ。現に、清水さんのお宅と平出さんのお宅もセルリー農家をやってらっしゃる…そこでひとつ如何でしょう?セルリー料理コンテストと言うのをやってみては?」

   偶々近くで岩波健司が遊んでおり、それを聞いている。

健司(セルリー料理コンテストっ!?冗談じゃねぇーや!!)

   急いでその場を逃げ出す。

高橋家・果樹園
   麻衣と千里、房恵に案内されてくる。

千里「うわぁ、凄いや!!」
麻衣「だら?いい香りだら?これをな、私もいつも折檻を手伝うんよ。」
千里「僕も一度はやってみたいな…」
房恵「なら、やってみるかい?」
千里「いいんですかぁ!!やったぁ!!じゃあまず、何すればいいの?」
房恵「えーとねぇ…」

   麻衣と千里、房恵の指示を受けながら動いている。

高橋家・客間
   千里と麻衣が伸びている。

房恵「ご苦労様。んで、麻衣ちゃん?」
麻衣「ん?」


麻衣「はぁーっ?」
房恵「どうかしら?麻衣ちゃん、適任の女の子があなたしかいないのよ…考えてくれた?」
麻衣「えぇ…でも困ったわ…」

   少し考える。

麻衣「叔母さんのお気持ちには勿論お応えしたいのは山々なのよ…でも私、つ実は、原村の婦人会から誘われてしまってOKしてしまったの…」
房恵「まぁ、残念だわ!!ならぁ…」
麻衣「条件は?このお店と関わりのある人や、親戚でなければならないの?」
房恵「いえ、ただ13歳〜20歳で諏訪地域に住んでる女の子なら…」
千里「なら永田眞澄は?」
麻衣「ほんなんで、いいんなら鈴木真亜子ちゃんとかもいるわ!!後、北山とか。あ、北山はダメか…」
房恵「最悪、看板娘をその子たちに頼むしかなさそうね…」
麻衣「えぇ、いいわ。明日学校で聞いてみる。ね、せんちゃん。」
千里「うんっ。」

諏訪中学校・教室
   鈴木真亜子、眞澄、北山マコ、麻衣、千里。

真亜子、眞澄、マコ「えーーーーっ、」
麻衣「ほこを何とかっ!!ね、ね。お願いします。」
真亜子「ごめん、私そいの嫌いだわ…お断りする…。」
マコ「私も。てか私は、実家がカフェだから。そこの看板娘をお手伝いしなければならないの。」
麻衣「ほっかぁ…」
眞澄「私も…いくらチーちゃんの願いでもそれだけは聞いてあげられないな…」
千里「そんなぁ…」
眞澄「じゃあさ、私達に頼まなくても…もう一人、いるんじゃん。適任の美少女が!!」

    眞澄、千里を見る。麻衣、マコ、真亜子も千里をまじまじ。千里、ギクリと後退り。

千里「な、何だよぉ…みんなしてぇ…」
真亜子「確かに…この子が看板娘をやれば、ひょっとして女子以上に女子になったりするかも。」
マコ「んふ、面白そ。」
眞澄「なら決まりね、チーちゃん、君が…」

   ズバリ。

眞澄「女装をして女の子になりきればいいのよっ!!」
千里「え…えぇーー!!そんなぁ、嫌だよぉ、僕女装なんて…」
眞澄「ちょっとこっちへ来なさいっ!!」

   強引に千里の手を引いて教室を出ていく。


同・女子トイレ
   眞澄と千里。個室にいる。

千里「…何する気なの?」
眞澄「ん。」

   指を指す。

眞澄「あんた、ズボンをお脱ぎなさい。」
千里「えぇっ、嫌だよぉ、何で!!」
眞澄「いいから早くっ。早くしないと休み時間終わっちゃうでしょ。」 

   千里を睨み付ける。千里、泣きそうになりながらズボンを脱ぐ。

千里「っ!!?」

   眞澄、スカートを脱ぐ。千里、目のやり場に困る。

眞澄「バカね、何目閉じてんのよ、ん。これ!!」

   千里にスカートを渡す。

千里「?」
眞澄「履きなさい。」
千里「はぁ?」
眞澄「今日一日、私があんたの格好をしてる。だからあんたは、」
千里「何で!!」
眞澄「女装の練習よ。少し慣らしておかないとね。以外に嫌じゃないかもよ。」
千里「ここは学校だぞ!?冗談じゃないよ!!」
眞澄「煩いっ!!とっとと履けっ!!」
千里「分かったよ…」

   千里と眞澄、制服交換をする。


眞澄「ふーん、驚いたわ…あんたに私の制服がぴったり…てか、ブカブカだなんて。もう少し男らしくなりなさいよ。」
千里「余計なお世話だっ!!」

   トイレから出ようとする。

眞澄「シッ」
千里「嚇かすなよ、今度はなんだ?」
眞澄「誰か人がいたら誤解されるでしょ。そっとよ…そっと出るのよ。」  

   二人、そっと出る。千里、洗面台の鏡を見て頬を赤らめる。

眞澄「ふふーん、満更でもないだろ?」
千里(こ…これが僕?…女の子にしか見えないや…)

   眞澄、いたずらっぽく笑う。

眞澄「さ、授業だよ。戻ろう。」
千里「ちょっと待ってよ!!」
眞澄「何よ…?」
千里「僕、トイレ行きたくなっちゃった…こんな格好でどうすりゃいいんだよ!!」
眞澄「そんなの、今のあんたは女の子にしか見えないんだから男子トイレになんて入ったらそれこそ男子たちの標的だしその方が変態よ。ここでしてきな!!」
千里「えー!!嫌だよ…僕、実際は男の子なんだし…」
眞澄「大丈夫、大丈夫!!あんた、」

   そっと耳打ち。

眞澄「この間のおもらしと今とどっちの方が恥ずかしいのよ…」
千里「それはぁ…」

   慌ててスカートを押さえる。

千里「眞澄っ、君は先に行っててよ!!」
眞澄「いいよ、ゆっくりしといで。私はここで…」
千里「いやっ、絶対にいやっ!!」

   慌てて個室に駆け込む。眞澄、クスクスと笑いを堪えながら出ていく。


同・給食ホール
   麻衣、眞澄、マコ、真亜子、千里。

眞澄「ってことなの。どう?」
マコ「じゃ授業は?藤森先生怖いから、こっぴどく叱られなかったの?」
眞澄「大丈夫。私から先生に言っておいたの。チーちゃんはちょっと具合が悪いって…。」
真亜子「眞澄、あんたよくもほーゆー悪知恵は回るんだね」
眞澄「どーも。」
麻衣「でもせんちゃん、ビックリよ!!ほれなら少しも男の子だなんて誰も思わないわ!!」
千里「それ褒めてるの?貶してるの?」
麻衣「とにかく、放課後、果樹園に来てちょうだいな。いいら?おば様に紹介したいの。」
千里「嫌だっていってもどーせ、無理矢理やらせるんだろ?」

   半分すねている。

千里「もぉいいよぉ、分かったよ…やりゃいいんだろ、やりゃ…」

   女子たち、拗ねる千里を弄りまくっている。


原中学校
   健司、名取未央、平出望美、菊池秀一、清水千歳

平出「なぁタケ、聞いたぜ。うちの母ちゃん言ってたんだけどよぉ?今年のイベント、払沢地区の看板娘、誰か知ってるか?」
健司「知らね…てか、興味もね。」
菊池「去年転校してっちまった柳平麻衣なんだぜ。」

   健司、ハッとする。

健司「ま、麻衣?」
名取「そ、」

   悪戯っぽく

名取「坊やのおしっこ庇ってくれたあの麻衣ちゃんでちゅよ。」
健司「うるさいっ!!」 
名取「でも、あの子がはーるかぶりに帰ってくるんだなぁ…最近めっきし原村に顔見せなかったもんなぁ…」
平出「諏訪の都会に染まっちまったのか?」
菊池「だとしたらへーこの先、原村になんか帰ってこねぇかもな。」
健司「いや、麻衣はほんなやつじゃねぇーよ。」  

   物思いに耽りながら微笑む。健司の空想の中には麻衣の笑顔が出てくるがやがてそれがセルリーに変わって、色々なセルリー料理に変化する。

   健司、顔をしかめて目を閉じる。

清水「ん、健司どーした?」 
健司「セルリーっ!!」
清水「は?」
健司「セルリー嫌だ、嫌だよっ!!」

   清水、少し考えてニヤリ。

清水「あ、ほっか。お前は確かセルリーだいっきらいなんだっけ?」
名取「そうか。だもんでお前は恐れている。」
菊池「それを…」
平出「その名も」
平出、菊池、名取、清水「セルリー料理コンテストっ!!」

   健司、両耳を塞ぐ。

健司「うわぁー、ほの名を言わないでくれぇー!!セルリー料理って聞いただけで吐き気がするぅ!!」

   其々四人にすがり付く。

健司「なぁ頼むよ、これは俺の生命がかかってるんだ!!やられちゃ困るよ。だで、誰か、みんな!!俺に協力をしてくれ!!友達だろ?ぶち壊す方法を考えて教えてくれよぉっ!!」

   嘆く健司、四人の男子は呆れ笑いをして顔を見合わせ、健司を宥める。


高橋家
   麻衣と女装をした千里。

麻衣「ただいまぁ!!」
房恵の声「あ、麻衣ちゃんお帰りなさい。今ね、芳惠おばさんも来ているのよ。上がっていらっしゃい!!」
麻衣(芳惠おば様か…ナイスタイミング…)

   ニヤニヤ。

麻衣「せんちゃん、あんたはちょっと私が呼ぶまでここにいて。」 
千里「う、うん…」

   麻衣、小粋に走って入っていく。
 
同・和室、縁側
   房恵と芳惠。そこへ麻衣。

麻衣「おば様っ!!」
芳惠「おや、まぁまぁ麻衣ちゃん!大きくなって。」

   麻衣、悪戯っぽく笑う。

麻衣「ほれよりおば様、今日はお二人に紹介したい子がいるのよ。」 
房恵「紹介したい子?」
芳惠「誰かしら?お友達?」
麻衣「えぇ、とっても可愛い女の子なの。かりん姫にはもってこいだわ!!」
房恵「本当にかい?嬉しいよ。早速会わせてくれるかい?」
麻衣「えぇ、勿論ですわ。」

   大声で

麻衣「入って!」

   千里、神経質で躊躇い勝ちに入ってくる。

麻衣「ね、」
房恵「あらっ!」
芳惠「まぁ!!なんて可愛らしい娘さんなの?何処の子?」
麻衣「城南よ。昨日来たせんちゃんの親戚の子。」
房恵「まぁそう!!お名前は?」

   千里、キョロキョロと激しく動揺。

房恵「どうしたの?」
芳惠「姉さん、きっと緊張してるのよ。」
千里「う、う、う、…」

   口ごもる。

千里「み、源チサと言います。宜しくお願い致します。」
麻衣(小口くん、ナイス!!)
房恵「チサちゃんね、宜しく。来てくれてありがとう。あなたみたいな子なら堂々とコンテストに出せるわ。だから暫くは、この芳惠おばさんのやっていらっしゃる“永延”ってお店があるんだけど、そこの看板娘を暫くやっていただけるかしら?」
千里「何をすればいいの?」
芳惠「簡単よ、ただお給事のお手伝いと、後はまぁ…あなたの得意なことでお客様を楽しませてくれればいいのよ。」
千里「得意なこと…」

   少し考える。

千里「ピアノかバレエでもいい?」
房恵「えぇ、勿論。なんだっていいわ。」
芳惠「チサちゃんあなた、ピアノもバレエもやるの?素晴らしいわ。」
千里「てへ、いやぁ…」

   照れて頭をかく。

房恵「それじゃあ早速、チサちゃん…永延を見に行ってみる?」
千里「え?」
房恵「本番までの研修は永延っていうお店でやるのよ。」
麻衣「いいじゃないの、チサちゃん。」
千里「んー…」


レストラン“永延”
   前景の四人と須山隆彦。須山はカウンターに立って皿を拭いている。

芳惠「隆彦、」
須山「あ、母さんお帰り!!麻衣ちゃん!」
麻衣「彦兄ぃ、はーるかね。」
須山「大きくなったねぇ!で、みんな揃ってどうしたの?」
芳惠「イベントの看板娘の件でさ。」
須山「おぉっ、」

   近くへ来る。

須山「で、麻衣ちゃんがやってくれるってことか。」
芳惠「麻衣ちゃんじゃないよ。」
須山「え、じゃあ誰?」

   芳惠を見る。

須山「他に誰か適任の女の子、いるの?」
房恵「初めはね、麻衣ちゃんに頼んだんだが、ちょうどコンテストのその日は麻衣ちゃん、原村の方で呼ばれてるんだって。」
須山「そうかぁ…」
房恵「その代わり、適任には相応しい女の子を麻衣ちゃんが連れてきてくれたんだ。同級生の親戚らしくてね、諏訪に住んでいるんだよ。」

   千里、店の外にいる。

房恵「チサちゃん、入っておいで。」
千里「…。」
房恵「早くっ!」

   千里、恐る恐る入ってきて頭を下げる。

千里「み…源チサです…」
須山「この子?」
芳惠「そうよ、文句ある?」
須山「いや、申し分ないよ!!」

   微笑みかける。

須山「チサちゃん、だっけ?可愛いね。今日から宜しく。ありがとう…」
千里「いえ…」

   固くなって俯き加減。

房恵「そう言えばチサちゃん、ピアノとバレエが出来るって言ってたね。ちょっと見せてくれないか?」
千里「い、今ですか?」
房恵「彼処にピアノもあるよ。嫌かい?」
千里「いえ…」

   麻衣、千里の肩を叩く。

麻衣「チサちゃん、いいに。やって。私も聴きたいに。」
千里「そう…?なら…」

   遠慮気味にピアノにスタンバイ。
 
千里「未だ、簡単な曲しか弾けない…わよ?」
麻衣「大丈夫よ、君らしく。」
千里「うん、分かった…」

   弾き出す。麻衣、房恵、芳惠、須山、目を丸くして聞き入る。

四人「おぉっ…」
麻衣「す、凄い…上手すぎる…」

   千里、弾きながら次第に気持ち良さそうに幸せそうな顔になる。

千里(あぁ、このピアノ…何ていい音なんだろ…一瞬で虜になってしまう…僕の心を蕩けさせるこの不思議な音色は一体何なんだろうか…)


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