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石楠花物語中学生時代
二つの高校受験
同・台所
   一月。千里、珠子、夕子、頼子、忠子が夕食をしている。

珠子「せんちゃん、いよいよ明日ね。頑張りなさい。」
千里「う…ん。」
珠子「えらく暗いわね…大丈夫?具合悪いの?」
夕子「違うよ、この子は不安なんだ。な、だろ、千里…」

   千里、びくりとして夕子を見る。

夕子「この発表会で最後にしな。内気なお前にこういう人前に出るってこんは向いてないんだ。お前の身のためだよ。」 
珠子「ちょっと夕子っ!!」

   千里、ご飯を掻き込んでテーブルを叩く。

千里「嫌だっ。絶対に嫌だ!!僕はピアノもバレエもやめないよ。京都の音楽の学校にだっていくんだ!!もう決めてあるんだ!!ごちそうさま…」

   いらいらと部屋を出ていく。

千里「じゃあ僕…ピアノの練習しなくちゃいけないから…」


同・千里の部屋
   千里、いらいらピアノの鍵盤を叩いている。

同・台所
   夕子と珠子のみ

夕子「おい、姉さんや、あと数日で願書の提出なんだよ?千里の進学、どうするつもりなんだい?」
珠子「勿論。私はせんちゃんの希望をそんちょうして、第一希望は京都の芸術高校を受けさせてあげるわ。」
夕子「あの子の学力でかい?で?第2と第3は?」
珠子「もし、京都の芸術高校に落ちたらってこと?」

   少し強く

珠子「諏訪福祉と若葉を希望してあったみたい…よ。」
夕子「はぁ…」

   更に呆れがお

夕子「あのねぇ珠子さんや、…あんたの可愛い息子に言いたかないがねぇ…今のあの子の成績じゃ、そんな名門、何処も受かりっこないよ。何しろ倍率が高過ぎる…」
珠子「夕子?」
夕子「ハイハイなんだい?」
珠子「それ…絶対面と向かってせんちゃんにいっちゃダメよ。」
夕子「分かってるよ…いくら私でもそこまで意地の悪いこんはしないさ。」

   お茶をすする。

   千里のピアノが聞こえてくる。

夕子(あの子まだ弾いてるよ…いつまで弾き続けてるきかねぇ。へぇ30分以上にもなるんだよ?)


   千里は部屋で唇をぎゅっと強く噛み締めながらピアノを弾いている。 


茅野芸術文化会館・ロビー
   発表会当日。多くの人がいる。麻衣、健司、磨子、リータもいる。そこへ千里が固そうにやって来る。

麻衣「あ、」
千里「あ!」

   近付く。

千里「良かった。君も出るんだね。」
麻衣「えぇ、まぁね。」
千里「君達も?」
磨子「いやまさか、」
健司「俺達はこいつの付き添いさ。」
リータ「そいこと。」
千里「ふーん。」
麻衣「あんたは?一人?」
健司「ならさ、俺たち四人で一緒に飯食おうかって言ってるんだけど…良かったら、お前もどう?」
リータ「それともなんか、予定あり?」
千里「いや、特になにもないけど…いいのぉ?」
麻衣「勿論っ!!」

   千里、満面の笑み。

千里「やったぁ!!僕実はスッゴク心細かったんだ…」
 
   他四人も大きく微笑む。
  

カフェレストラン・客席
   前景の五人がご飯をしている。千里は、なかなか食が進まない。

麻衣「どーゆー小口君、具合悪いの?」
千里「う、ううん…?」

   つつきながら

千里「変に緊張しちゃってさ…とってもお腹が空いているのにご飯が喉を通らないんだ…」
磨子「そうはいっても少しは食べなくちゃ…」
リータ「ピアノ弾くのにもエネルギーかなり使うだろ。それじゃあ弾けないぞ。」
千里「そうだよね…みんなありがとう…」
麻衣「あんた、なに弾くだ?」
千里「あぁ…スミスのすずらんってやつと…軍隊ポロネーズ…」
麻衣「わぁ、何ほれ!!すっごく大曲じゃないの!!楽しみにしとるな。」
千里「いや、僕なんて期待されるようなものじゃないさ…君こそ…何弾くの?」
麻衣「私なん…とっても簡単なやつだに。バッハのインベンションと、ドビュッシー…子供の領分から…。」
千里「へぇ…僕も、そんな可愛い曲が好きだな。」
麻衣「ほ?」
千里「うん!!とっても楽しみにしてる。」

   掻き込む。

千里「んー、なんか君が一緒って思ったら途端に食べたくなってきちゃった!!うーっん、美味しいっ。」

   全員、笑う。

磨子「こらこら、今度はあまり調子づいて食べてると」
リータ「お腹壊して今度はピアノ弾けなくなるぞ。」
千里「大丈夫、大丈夫!!」
健司「おいおい、喉に詰まらせるなよ」

   千里、つかえて苦しむ。

健司「ほれっ、言わんこっいゃない。」

   千里の背を擦る。

健司「水飲めよ、」
千里「いや、大丈夫…それは遠慮しとくよ。」

   やっと収まり苦しそうに涙目。

千里「後、1、2時間もすれば始まって僕の番も来るんだ…今お水なんて飲んだらおしっこしたくなっちゃうもん…」  

   満足げに微笑む。

千里「御馳走様でした。」
麻衣「はい、完食っ!!」
磨子「よく食べました。」


同・マルチホール
   会場には多くの人。開幕のブザーがなり、一人一人の演奏が始まる。

   千里、ステージ裏の廊下でトイレに出たり入ったり。

麻衣「ちょっと、小口君…さっきから大丈夫?お腹痛い?」
千里「いや…」

   恥ずかしそうにしゅんとなる。

千里「緊張してきたら急におしっこ近くなっちゃって…困ったなぁ…もうすぐ僕の出番なのに…」

   手をもみ合わせる。麻衣、千里の手を握る。

麻衣「可哀想…こんなに冷たいお手々…」
千里「麻衣ちゃん…」
麻衣「大丈夫よ、あんたは大丈夫。会場の人なんてみんな石楠花だと思えばいいんよ。」
千里「石楠花?」
麻衣「ほ、」

   あっけらかんと。

麻衣「ほいだって、ほんな花一面の花畑の中で思いっきりピアノが弾けるだなんてあんたも気分がいいら?」
千里「う…うん…まぁね。」
麻衣「だもんで、ほーふに思い込めばいいんよ。何事も思い込みは大切だに。」

アナウンスの声「続きまして、小口千里君の独奏です…」

   千里、震え上がる。

千里「ひぃーっ、僕だぁ…」
麻衣「大丈夫、私たちがおるらに。安心して小口君、」

   千里の肩を叩く。

麻衣「♪大丈夫、大丈夫、あんたはモーマンタイン!!な。」
千里「麻衣ちゃん…ありがとう。」
麻衣「ん、ほれ行ってこいっ。」

   軽く千里の背を押し出す。千里、麻衣に頷いて固く入場。大きな拍手。

   千里、一例をしてがくがくとピアノにスタンバイ。震える手でひきだす。

   会場では珠子、夕子、頼子、忠子も見に来ている。 

頼子「千兄ちゃんピアノ上手でしゅ…」
忠子「まことにござる…」
珠子「でしょ…そうね…千兄ちゃんは上手いわね…才能あるわね。」

   夕子、ちらりと珠子を見る。珠子も無言でちらりと夕子を見る。


   千里、何とか一曲目を弾ききる。二曲目に入る。

千里「っ!!」

   顔をしかめて軽く震え出す。

千里(どうしょう…トイレ行きたい…っ) 

   目を白黒させながら潤ませて弾いている。

千里(でも短い曲だから大丈夫だよな?いいよな…)

 
   二曲目、中盤。千里、焦りの顔。

千里(どうする?どうする?どうしよう、千里…もうかなりトイレ行きたい感じかも…これ…演奏終わったらどうしよう…)

   麻衣、異変に気がついてとても心配そうに千里を見つめる。

麻衣(小口君…?どーゆーんかしら?)


   演奏が終わる。千里、がくがくとピアノから立ち上がって客席の方を向き一礼をするが、顔をあげ、府と、下腹を押さえて固まってしまう。

麻衣(小口君っ?)
名取先生(小口君?)
珠子「せんちゃん…?」
夕子「おい姉さんや、千里は一体どうした?何をしているんだい?何で裾に戻らないんだ?」
頼子「ママ、千兄ちゃんどうしちゃったの?」
忠子「おしっこしたいのでしょうか?」

千里「くふぅーっ…」
名取先生「小口君っ!!?」

   千里、そこで数分も立たない内にお漏らしをしてしまう。会場はざわざわ。夕子は恥ずかしそうに額を叩く。

夕子「わ他社もう出てるよ…恥ずかしくて見てられん…」

   夕子、ホールを出ていく。珠子、心配そうに眉を潜める。

頼子「千兄ちゃん…」
忠子「千兄ちゃんが…おもらししちゃいました…」
頼子「ねぇママ…」


   急いで名取先生が来て泣きそうになって立ち尽くす千里を庇うようにしてステージ裏へとつれていく。舞台スタッフがおもらしを片付けていく。


同・ステージ裏
   千里がわっと泣き出す。

麻衣「小口君っ、」
千里「ふっ、ふえっ…ん…ふっ、ふっ、」
名取先生「小口君、どうしたの?どうして演奏前にトイレを済ませておかないの?」

   千里、しゃくりあげたまま

名取先生「あんな人前で…あなたも恥ずかしいでしょうし…小さい子達もいっぱいいるんですもの、もう高校生になるあなたが恥ずかしいわよ。今度からはもっと早くに…」
千里「行きました…」

   手で顔を覆う。

千里「緊張でトイレばっかりいきたくて何度も行きました!!なのに演奏中に行きたくなって…」

   大声で泣き出す。

名取先生「演奏中ですよ、静かになさい…ほらはい、控え室に行きましょうね…柳平さん、この子、連れていって貰える?」
麻衣「はい、わかりました。小口君、行こ。」

   優しく千里の肩を支えて歩いていく。


同・控え室
   数名の人がいるが、みんな蔑みの瞳で千里を見つめる。麻衣、千里を庇う。
  
麻衣「大丈夫よ、小口君…へー泣かんで。これはあんたがしたくてしたこんじゃないだだもん仕方ないに…。な、だで、ほれ。」

   千里、麻衣に寄りかかる。麻衣、千里を優しく抱いて宥める。

麻衣「ほー、ここ女子の控え室だで…あんたの着替えは?はぁく濡れた服着替えんくちゃな…風邪ひいちまうに。」

   しゃくりあげる千里。麻衣、軽く頭を下げると千里を連れて更衣室をで、廊下を千里を人目から庇いながら歩く。千里はまだ泣いている。

小口家・千里の部屋
   千里、膝に顔を埋めて泣いている。そこに珠子と夕子。

夕子「千里っ!!お前って子は!!」
千里「…。」
夕子「あれほど言っただろうに!どいで15にもなって自分の体の事をしっかり出来ないのかっ!!今時小学生ですらちゃんとしてるだろうに。わたしゃ見てて恥ずかしかったよ。」
珠子「夕子ちょっとやめて!!」

   近くにいって千里の背中を抱く。

珠子「せんちゃん、大丈夫よ…心配しないでいいの…。」
千里「ママ…」
珠子「でも今日はどうしたの?トイレに行ける時間がなかったの?」

   千里、泣きながら首を降って事を話し出す。

千里「ママ…ママ、僕もうダメなんだ…一体どうすればいいの?もう自信何もないよ…。」
珠子「自信なくしちゃダメ。せんちゃん、才能あるしピアノ弾けるじゃない…」
千里「でも…でも、又僕は、又みんなの前で恥さらしてみんなに迷惑かけちゃう…きっと試験の時だってそうなんだ!!僕には無理だ!!もう音楽の道なんて進めないっ!!」
珠子「せんちゃんっ!!やる前から諦めちゃダメ。何弱気になっているの?この間夕子おばさんに夢を語ったときの勢いは一体どうしたの?」

   千里、大きく首を降って泣くばかり。夕子、気の毒さと呆れの入り交じった何とも言えない顔をしている。


岩波家・健司の部屋
   健司一人。勉強を終え、伸びをすると府とカレンダーを見る。

健司「14日…いよいよ明日か…」

   フッと笑う。 

健司「さぁーてと、ドキドキして今日は…へー寝れねぇーな…」
 
   ベッドに勢いよく倒れ混む。

健司「でも試験は…俺一人か…なんか寂しいや…」

   目を閉じる。

健司「お休み…」


柳平家・麻衣の部屋
   麻衣も勉強を終え、伸びをすると立ち上がる。

麻衣「ふーっ!!いよいよ明日か…」

   携帯を手に取る。

麻衣「遂に買って貰っちゃった…携帯電話!!磨子ちゃんと同じ学校か…なんか楽しみ…頑張らなくっちゃな…」

   携帯がなる。

麻衣「ん、早速だ。誰かやぁ?もしもしぃ、柳平です。」


田中家・磨子の部屋
   磨子が携帯を手に電話をしている。

磨子「あ、麻衣ちゃん?私、磨子でーす。」
麻衣の声「磨子ちゃん!!」
磨子「いよいよ明日ね…頑張ろうな。」
麻衣の声「えぇ、私猛勉強したんよ。磨子ちゃんと同じ高校入るこん夢見て猛勉強したんよ。だもんで、絶対!!絶対に同じ高校入ろうな。」
磨子「勿論よ。私も、麻衣ちゃんと一緒に高校行けることを凄く楽しみにしてるわね。」
麻衣の声「ほいじゃあ又明日。」
磨子「ん、又明日。ほいじゃあな。」
麻衣の声「はーい!!お休みなしてぇ。」
磨子「女昔の約束覚えててくれて嬉しかった…お休みなしてぇ。」

   電話を切る。ふふっと笑って悪戯っぽく布団に転げる。足で電気の紐を引っ張って消す。


小口家・千里の部屋
   珠子と千里。

珠子「せんちゃん、いよいよ明日ね。」
千里「う…うん…」
珠子「大丈夫よ、何?まだおしっこのこと心配しているの?」
千里「…。」
珠子「そんなに心配なら、恥ずかしいかもしれないけどオムツしていきなさい。それと試験前はお水は飲まないことね。」
千里「…。」
珠子「本当に一人で京都まで行くの?」
千里「うん…」
珠子「そう…何かあったらすぐに連絡しなさい。当日心配ならママも一緒にいってあげるからね。」
千里「ありがとう…僕行くよ、」

   弱く笑う。

千里「大丈夫さ、一人で行ってくる。」
珠子「せんちゃん…気を付けてね。」
千里「ありがとう」

   時計を見る。

千里「10時か…」
珠子「せんちゃん、明日は早いのでしょ。もう寝なさい。」
千里「うん。お休みね、ママ…」
珠子「えぇ、お休みね、せんちゃん。」

   部屋を出て電気を消していく。千里、布団をかけて目を閉じる。


同・玄関先

千里「それじゃあ…行って参ります。」
珠子「気を付けてね、せんちゃん…呉々も…」
夕子「本当にあんた一人で大丈夫だろうね?今度は、トイレ行きたくなったらすぐに行くんだよ?試験中でも我慢しないであんたの場合は行かせてもらいな。分かったね。」

   千里、顔を真っ赤にする

千里「わ、分かってるよ…じゃあね、」

   カートを引いて出ていく。家族たち、心配そうに手を降って見送る。


上諏訪駅・正面口
   麻衣、磨子、健司。

磨子「ほいじゃあ、又試験終わったらみんな、ここで落ち合おう。」
麻衣「えぇ、」
健司「あぁ…」

   微笑む。

健司「お前ら二人、一緒には入れればいいな…頑張れよ。検討を祈る。」
磨子「合点じゃい。」
麻衣「あんたもな。」

   麻衣と磨子、そして健司、それぞれに別れ、健司はバス停へと急ぐ。


電車の中
   新幹線。千里が焼きそばパンをかじりながら乗っている。

千里(緊張するな…でもやっぱ不安だな…やっぱやっておこうかな…オムツ…)
 
   少し赤くなって窓辺に目をやる。外は都会の町が広がっている。


   (更に暫く)

麻衣、磨子、健司、千里「よしっ。」

   其々の学校の前で息を飲む。そして、麻衣と磨子は諏訪若葉高校、健司は諏訪実業高校、千里は京都芸術高校に入っていく。


京都芸術高校
   千里、試験を受ける。筆記試験でかなり頭を捻っているが、実技試験は余裕でこなしている。

諏訪若葉高校
   麻衣と磨子が隣の近い席で試験を受けている。二人とも真剣な顔で、でも余裕っぽく筆を動かしている。


諏訪実業高校
   健司、近くでは小野海里が試験を受けている。二人とも真剣な顔で真面目に受けている。

健司「…?」

   もじもじ

健司(ヤバイ…)

   困って青ざめる。

健司(トイレ行きたい…)


   (フラッシュ)
   健司、時間に遅れそうになって慌てて会場に駆け込む。

健司(ほっか…どうしよう…)


   (フラッシュ)

幸恵《あなたは岩波の次男なんですから母さんと父さんに恥だけはかかせないでちょうだい!!》

   健司、ため息

健司(いいや…休憩までは我慢しよう…)

   勉強を続ける。


   (チャイム)

同・男子トイレ
   健司が駆け込む。

健司「…っっ」

   混雑している

健司(うっわぁー…)

   腕時計を見る

健司(くそぉ…どうしよう…これ待ってたら確実に試験遅れるし…)

   そわそわ

   (フラッシュ)

幸恵《試験には、一分たりとも遅れないこと。始まる五分前には席に着いているのよ。それと、授業中はペーパーにだけ集中すること、よそ見はしないように。ベストを尽くしなさい、いいわね。分かりましたか?》


健司(…、)

   残り五分。

健司(畜生…次だっ…)

   トイレを飛び出ていく。小野、健司を見つめている。

小野(あれ、あいつトイレ行きたいんじゃなかったのか?)


同・教室
   試験が始まる。健司、真面目で余裕に解いている。

健司(…トイレ…トイレ…っ、)

   中学一年のおもらしがフラッシュバック

健司(嫌だ…ほれだけは絶対に嫌だ…)

   時間が刻々と過ぎていく。

健司(ふーっ…お説教受けようともさっきやっぱ済ませばよかった…)

   体をもじもじと揺する。小野、健司を見る。

小野(あいつ…本当に大丈夫か?)
健司(ふぅぅっ…)


   (チャイム)
   健司、顔をあげて安堵する。

健司(助かった…)

   直後、固まって動けなくなりキョロキョロ

健司(ヤバイ、ヤバイよこれ…急激トイレ行きたい…っ。どうする?どうする?)

   答案収集が行われている。

健司(くそっ…だめっ…)

   目を固く閉じる。回りが健司に視線を集めるなか、その場で失禁してしまう。健司の足は椅子からぶらぶらとし、床に届いてはいない。

小野(あー…)

   健司、泣きそうになって俯きながらゆっくりと手をあげる。

顧問の先生「医務室へ行きなさい…」
健司「はい…」

   小野も手をあげる

小野「俺が一緒についていきます。」

   健司を連れて教室を出る。


同・医務室
   
医務員「はい、」
小野「失礼します…」
医務員「どうぞ、あら…」

   健司を見る。

医務員「トイレに間に合わなかったのね…」

   健司、堪えきれずに泣き出す。

医務員「ほらほら泣かないの。君サイズは?」
健司「…S…女性ものの…」
小野(こいつちんめ…可愛いなぁ。)

   医務員、体操着のズボンとパンツを出す。

医務員「これを履いていなさい。」
健司「はい…」

   着替え出す。医務員、小野を見る。

医務員「君は?」
小野「俺ですか?俺は…ただの付き添いです…。」 

 京都芸術高校・試験室前廊下
   千里、順番待ちの生徒の中にいる。

千里(次はいよいよ…演奏実技か…)

   何度と楽譜をチェック

千里(どうしよう…ちゃんと弾けるかな…間違えて減点されたらどうしよう…恐いよ…)

   目を固く閉じる。

千里(助けてよ…ママ…)
声「次、お願いします…」

   千里、青ざめてハッとする。

千里「は…い…」

   楽譜を置いて試験室に入っていく。 

同・試験室内
   五名くらいの人が座って並んでいる。千里、空いた椅子に座る。ドアが閉められる、千里、不安げにキョロキョロ。
 
千里(試験ってこんなんなの…?どうしよう、恐いよ…僕、閉じ込められちゃった?)

   強くズボンを握る。

千里(…。)

   顔は青ざめたり赤くなったり。段々に汗が滲み出す。

千里(ママぁ…ママ、助けて…)
試験管「小口千里くん…」
千里(…)
試験管「小口千里くん」

   千里、びくりとして顔をあげる。

千里「はいっっ、」

   覚束無い足取りでピアノにスタンバイ。

試験管「演奏を始めてください。」
千里「はい、」

   弾こうとするが

千里「あの…」
試験管「何ですか?」
千里「お手洗いって…行かせて貰えますか?」
試験管「行きたいの?」
千里「い…え…」
試験管「ならいいですね。始めてください…」
千里「はい…」

   演奏を始める。

千里(う…思う通りに弾けない…てか、もう今はどーでもいいけどトイレ…)

   手足ががくがくと震えているが、ノンミスで弾ききる。

試験管「小口君、」
 
   千里、終わると立ち上がるが

千里「先生っ…」

   苦しそうに涙目

千里「お手洗い…何処でしょう?」
試験管「お手洗いですか?お手洗いは…」


同・廊下
   千里、小走りにキョロキョロ。

千里(なんとか試験は出来たけど…トイレ、トイレ…とりあえずトイレは何処だ?)

   目の前。

千里(あった…良かった…。)

   駆け込む。


同・男子トイレ
   千里が男子便器前でしゃがみこんで静かに泣いている。

千里(ふ…っ、ふ…)

   そこへ敷田哲郎、藤丸為希が入ってくる。

敷田「ふーやっと終わった。」
藤丸「俺さっきからずっと我慢してたんだよな、」
敷田「俺も…トイレの場所聞いて良かった。」
藤丸「京都駅までなんて、絶対もらしてたぜ。」

   笑いながら話しているが千里に気付く。

藤丸「ん、何やってるの?」
敷田「お前も受験生か?」
千里「…」

   俯いて者繰り上げている。
 
藤丸「まさか…お前…」

   少し千里を立たす

藤丸「あぁ…」
敷田「お前、もらすまで我慢してたのかよ?」

   千里、声をあげて泣き出す。

敷田「大丈夫、大丈夫…。大丈夫だから泣くな。」
藤丸「ちょっと待ってろ。お前はしばらく、ここにいろ。」

   千里の体を支えて個室の中に入れる。敷田、藤丸は用を足し出す。


同・廊下
   敷田、藤丸、千里を庇いながら歩く。

藤丸「お前、どいで早くに申し出ないんだよ。」
千里「だって…だって…」

   者繰り上げている。

千里「試験室に入ってから急に行きたくなっちゃったの…それで…」

   喋っている。

敷田「ところでお前、どこの人?近く?」
千里「僕?…僕は、生まれは京都なの…ママが京都の人だから…。京都市、河原町に住んでた。」
敷田「ふーん、俺は京都駅の近くだぜ。」
藤丸「俺は天橋立の方…」
千里「でも…」

   俯いたまま

千里「今は僕、京都じゃないんだ…諏訪から来たの。」
敷田、藤丸「諏訪?」
敷田「諏訪って?」
藤丸「何処だ?」
千里「…信州…長野県だよ…」
敷田、藤丸「長野県からぁ?」

   目を丸くする。

藤丸「おいお前、偉く遠いな…」
敷田「一人で来たのか?」

   千里、黙って頷く。又泣きそうになる。

敷田「そうかそうか、おいおい…又泣きそうになってる」
藤丸「もう泣くな、な、な。」

   二人、千里を慰める。


特急電車の中
   千里、一人で肩を落として乗っている。

千里(怒られるだろうな…叔母さんに…)

岩波家・和室
   幸恵、岩波、そしてシュンとなる健司。

岩波「健司っ!!」  

   腕を組んで睨む。

岩波「岩波の次男たるべきもんがなんだ!!父さんは恥ずかしいぞ!!」
幸恵「そうよ健司、どうしてこんなことになるの?」
健司「だって…」
岩波「だってもすってもないっ。全くお前ってもんは!!それでも高校生になる男か!!」
健司「ほいだって!」
岩波「父さんは、お前がどうしてもと聞かないからお前の希望する高校に入れてやったんだぞ。もしこれで、試験に合格できなかったら許さんっ!!その時はへー勘当だ!!勘当!!」
幸恵「ちょっと父さん、それは言い過ぎよ。」
岩波「いんや、お前みたいなのは岩波の息子ではないっ!!」

   健司、悔し涙

岩波「何だ、その涙は…」
健司「だって…じゃあどーしろって言うんだよ?俺だって人間だぜ?人間なんだものトイレ行きたくなるのは当たり前だろうに!!」
岩波「私の言っているのはだな…」
健司「でも、試験受ける前はお袋も親父も、“試験中にトイレには立つな”“試験の5分前には席にいろ。一分でも遅れるな”って言っただろう!!俺はほれをちゃんと守ったんだよ。守った結果が…」
幸恵「もらしちゃったのは?いつなの?」 
健司「…二時間目…」
岩波「健司っ!!」
健司「ほいだって!」

   泣き出す。

健司「入場はギリギリで、トイレいってる暇がなかったんだよ!!で、次の休みはトイレが混んでて待っているうちに五分前…結局行けるときないじゃん…」
岩波「どうして行きで遅れるんだ?」
健司「仕方ないだろ?俺のせいじゃねぇーよ。バスの遅れ。」

   そこへ悟

悟「おい、お袋に親父、あまりタケを苛めるなよ。こいつだってしたくてしたわけじゃないんだし…今一番その事でこいつ傷付いてると思うんだよ。」

   健司を慰める。

悟「タケ、気にするな。大丈夫だでな。誰もにあるこんなんだで、恥ずかしがることないし遠慮することもないんだ。試験中でも、立っていいんだよ…それに、」

   幸恵を見る。

悟「僕はこの春から医大生になるんだ。お袋はい医者だろうに!医者がそんな、体に悪いことさせていいのかよ?」

   ふんっと鼻を鳴らす。健司、者繰り上げて悟を見上げる。

健司「兄貴…」

   悟、健司に微笑みかける。

悟「ほれ、へーいいだろ。タケ、行くぞ。」

   手を引いて立たせる。

悟「全く仕方の無いやつだなぁお前もぉ…」

   者繰り上げている健司を支えながら部屋から連れ出す。


小口家・奥間
   いつものお説教部屋。千里、夕子、珠子。険悪な雰囲気。千里、固くなってビクビクと二人を見ている。

夕子「千里…」

   静かに

夕子「今度は何処で?」
千里「…」
夕子「京都だろう…」
千里「…はい…」
夕子「千里っ!!!」
千里「ごめんなさいっ、ごめんなさい!!」
夕子「全くお前って子は…昨年から一体どーしちまったんだい?どっか幾度に小便もらして…オムツは?」
千里「忘れてた…てか、」

   真っ赤になる。

千里「そんなの出来るかっ!!」
夕子「だったらその、おもらしぐせお治しよ。全く…」

   鼻を鳴らす。

夕子「私ゃ情けないよ…」
珠子「夕子、やめなさいよ…せんちゃん可哀想よ…」
夕子「姉さんは黙ってな。これであんた、」

   千里を睨む

夕子「不合格なら、二次は音楽系は受けさせてやんないからね。」

   千里、泣き出す。

夕子「泣いたってダメだよ。さぁ、次はお前の番だ…何でこうなったのか?理由をお話し。」
千里「それは…」

   涙を飲む。

夕子「安心しな、もうお前への説教は澄んだ。何聞いたって怒らないよ。」

   千里、者繰り上げている。

千里「試験中…試験中なの。」
珠子「まぁ…」
千里「試験中にね…」

   泣きながら話し出す。

夕子「ふーん…で、筆記は?試験はきちんと出来たんだろうねぇ?勉強の方は?」
千里「叔母さんは、その心配しかできないの?やったよ、やりましたよ。僕なりに精一杯…出来たと思う…」
 
   落ち着く。

珠子「せんちゃん…」

   優しく肩を抱く。

珠子「もうしてしまったことは仕方がないわ、大丈夫よ。あなただけじゃない…試験会場なんてみんな、誰でもが緊張してる場所よ。せんちゃんも緊張しちゃったのよね…どうしても我慢できなくなっちゃったのよね…よしよし…」

   千里を抱いて慰める。

珠子「さぁせんちゃん、もう泣かないでね。今日は頑張ったあなたへのご褒美にスペシャルメニュー、ママ作ったのよ。みんなせんちゃんの大好きなもの。ご飯にしましょうね、さ、お勝手いきましょう。」

   千里の肩を抱いて慰めながら部屋を出ていく。夕子もふフット笑って出る。

夕子(姉さんも、千里には甘くて困ったもんだ…千里もいつまでも泣き虫坊主で…)

   大声で

夕子「頼子に忠子、ご飯だよ。おりておいで。」
頼子と忠子の声「はーい。」

   二人も降りてきて席につき、家族五人が食卓を囲む。

五人「いただきまぁーす!!」
千里「いただきます…」

   やっと弱々しく微笑んで、オレンジジュースを少しずつ飲んで涙ながらに笑う。

珠子「さぁ、まだまだ沢山あるわよ、」
夕子「みんなどんどんお食べ。」
珠子「せんちゃん、今日はあなたが主役なのですから食べなさい。まだまだお代わりもあるからね。せんちゃんの為に一杯お肉、買っておいたわ。」
千里「やったぁママ…ありがとう。」

   すき焼きをつつき出す。

珠子「せんちゃんは卵二個ね。」
千里「はーいっ。」

   次第に話し声や笑い声も広がる。


白樺高原・コスモス湖岸
   麻衣、磨子、リータ、健司

麻衣「ってこんで、私見事…若葉、合格致しました!!」
磨子「ふんとぉーに?」
リータ「マジ?」
健司「すげーじゃん!俺絶対落ちて二次受けるかと思ったぜ。」
麻衣「ほんなん私もよ。みんなは?」
リータ「私は…何処にも行かない。いつ帰るか分からないような留学生だからね。」
磨子「私は…見事…落ちました…。」
麻衣「え?」
健司「落ちたって…」
磨子「麻衣ちゃん…ごめん、言い出しっぺの私が。」
麻衣「でもほんな…磨子ちゃんが落ちちゃうなんて…嘘だら?あんなに勉強もできて、行きたがってただに。」
磨子「ごめんな、ふんとぉーにごめんっ、」

   麻衣をちらりと見る。

磨子「怒ってる?」
麻衣「まさか、誰が怒るのよ!!ほれより…」

   目を潤ます

麻衣「磨子ちゃんが可哀想で…」
磨子「麻衣ちゃん…」
リータ「で?」

   健司を見る。

リータ「あんたは?」
健司「俺?俺は…合格、受かったよ。」

   ばつが悪そうにもじもじ

健司「行きたくない高校に受かっちまった…」
麻衣「何よ?諏訪実はあんたが散々行きたいっつって希望してたらに!!」
健司「や、ほーじゃなくてさ…」 

   顔は真っ赤。

健司「実は試験中に…俺、おもらししちゃったんだ…トイレ我慢できなくなっちゃって…」
麻衣、磨子、リータ「はーっ!!?」

   三人、笑いをこらえているが吹き出す。

健司「おいっ、何で笑うんだよっ!!」
麻衣「ほりゃだって、ばかねあんた。どいでトイレ済ませんのよ。」
磨子「ター坊や、おしっこは我慢ができなくなる前にちゃんと行くのよ!」
健司「煩いっ!!」
リータ「確かに、」

   ニヤニヤ

リータ「そこは磨子の言う通りですぜ、兄さん」
健司「煩いっ!!」



麻衣「あ、健司?」

   思い付いたように鞄をがさごそ

麻衣「二月に色々とバタバタしてていけんかったけどさ…」

   健司に小包を渡す。

健司「な、な、何だよこれ?」 
麻衣「私からの…遅ればせましての…バレンタインデーだに。…ハッピーバレンタインデー、スィニョール…。」
健司「サンキュ。」

   照れ臭そうに微笑む。

健司「開けて…いいか?」
麻衣「勿論よ、」

   リータ、磨子、ニヤニヤしてそっと健司を囃し立てる。健司、開け出す。

健司「うおっ!!」

   目を輝かせる。

健司「チョコレートケーキだ!!うまそ。これ、何処の?」

   麻衣、得意気に。

麻衣「何処だと思う?」
健司「菓子店・アウクスブルクか?ほれとも、パリーヌか?」
麻衣「ほ?私が作ったのよ。」
健司「ふーん、お前がか…って」

   目を見開く

健司「お前がぁ?」

   切れているケーキの人切れを手で取って食べる。

健司「うっま!!最高だよ麻衣!!お前こんなの作れるんだな。すげーぇ。」

   次々と食べて完食。女子たち唖然。

健司「ふーっ、旨かった…なぁ、磨子とリータ、」

   キョトンと悪戯っぽく。

健司「お前らからは、何もねぇーのかよ?」
リータ「はぁ?何いってんのあんたって。ずーずーしーの。義理でもないね。」
磨子「私も、大体好きでもない普通のただの友達に過ぎないあんたにあげる必要もないわ。」
健司「はぁ、何だとぉ磨子!!いくらなんでもほりゃ言い過ぎだろうに!!」
磨子「あら?何かお気に障った?これはごめんあそばせ。」
リータ「こりゃどーも、失礼。」

   健司、フット笑う。

健司(俺やっぱり…こいつの事だけが好き…なんだかんだ言っても優しい麻衣だもん…気の利く麻衣だもん…)

   うっとりと赤くなる。


小口家・千里の部屋
   千里、書類を持った手が震え、俯き加減で泣いている。そこへ珠子

珠子「せんちゃん、お茶よ。」
千里「…。」
珠子「せんちゃん?どうしたの?…泣いてるの…」
千里「ママ…ママ…」

   珠子に泣きつく

珠子「まぁまぁせんちゃん、一体どうしたって言うの?」
千里「僕、僕、僕…ふぇーんーっ!!!」

   声を出して泣く。


同・台所
   小口家家族、全員が集まっている。

夕子「千里、おめでとう…良かったねぇ。」

   グラスを掲げる。

夕子「これから、今年からだね、頑張るんだよ。では、改めて…小口千里の難関校合格に、かんぱーいっ!!」
全員「かんぱーいっ!!」
千里「みんなありがとう…本当にありがとう…」
珠子「でもせんちゃん、まだ次はMMCがあるんです。気を抜いてはいけませんよ。」
千里「はいっ、」 

   嬉し涙

夕子「ほれ又泣く。お前は男だろうに、へー泣くんじゃないよ。」
千里「分かってるよぉ…分かってるけど涙が…ふっ、ふっ…」
頼子「千兄ちゃん、泣いちゃダメですよ、よしよしよし」
忠子「千兄ちゃんは泣き虫にございます。」

   五人、笑う。


   食べながら

千里「でも、ママ…」

   恥ずかしそうにもじもじ。

千里「僕とっても心配なんだ…又、MMCのステージでトイレが我慢できなくなっちゃったらどうしようって…」

   震え出す

千里「僕、やっぱり…コンクール辞退しようかな…僕には無理なんだよ…僕みたいなあがり症…慣れっこないさ…」
夕子「千里、何を言うんだい?やる前から諦めるんじゃないよ。あんたらしく、堂々としてりゃいいんだ。もらしたからってなんだい?一回や二回くらい、自信持ちなよ。」
千里「…叔母さん?」
夕子「そうさ、もしどーしても嫌で心配だって言うんなら、恥ずかしいかもしれないけど、今度こそオムツして行きなよ。」
千里「オ…ムツ…」

   ポカーンとして真っ赤な顔で夕子を見ている。二人の妹と珠子、微笑みながらクスクス。


柳平家・麻衣の部屋
   麻衣、一人のみ。縁側に腰かけてホットココアを飲んでぽわーんと月を眺めている。

麻衣「まだ雪があるな…流石茅野よね…」

   一口飲む。

麻衣「夢みたい…私がまさか、若葉に合格できるだなんて…」

   微笑む。

麻衣「磨子ちゃん…残念、あなたとは一緒の高校にはなれなかったけど…私達、これからもいつでも遊ぼうね。ずっと、いつでも…私達はお友達だでね。これからの高校生活、楽しみね…頑張ろうな…。」

   すべて飲み干す。  

麻衣「ん、と…ほの前に、まだもうひとつ残されていたビッグイベントMMCがあったんだっけかやぁ。まだまだ気も抜けないな。」

   立ち上がる。

紅葉の声「麻衣さーん、ピアノと歌、バレエの練習確りやっておきなさいねぇ。」
柳平の声「麻衣、勉強の予習も始めるのだよ。」 
麻衣「はーいはいっ、」

   部屋に戻って勉強用の卓袱台についてノートを広げる。

あすかの声「麻衣姉、遊んでぇ、」
と子の声「麻衣姉、ちょっと勉強教えて欲しいところがあるんだけど、」
麻衣「はーいはいっ、んもぉっ。」

   ノートをもって部屋を出ようとする。

糸織の声「オーイ麻衣、」
麻衣「今度は何だねっ!!」

   少々かなりイラついている。

紡「健司くんから電話だに。」

   麻衣、ころっと気分も変わってすごく満面の笑顔になる。

麻衣「はーいっ!!!」

   ルンルンと部屋を飛び出ていく。 


麻衣の声「はいもしもし、代わりました、麻衣だに。」
麻衣以外の登場人物全員「げんきんなやつ。」  

   『中学時代、完。おしまい』



 

 



 


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