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石楠花物語中学生時代
男になって…
   千里、河から浮かび上がると溺れ出す。

千里「ん、ん、助けてくれよぉ!!僕、泳げないんだ!!」
後藤「犬かきでもばた足でも何でもいいでやれっ!!」
小平「怖がるな千里っ!!怖いと思うで溺れんだ!!」
千里「そんなこと言ったって…」

   後藤、小平、顔を見合わせて上川へ飛び込む。溺れていく千里を助けて岸へあげる。


   千里、岸で水を吐いて息を切らしながら震える。

千里「助かったぁ…死ぬかと思ったよ…」

   恨めしそうに

千里「酷いじゃないかぁ二人ともぉ!僕に死んでほしいの?」
後藤「わりぃわりぃ!!そんなこん思ってねぇーよ。」
千里「僕水泳はもう…くしゅんっ!!絶対に嫌だっ!!くしゅんっ!!くしゅんっ!!もう、やりたくない…水になんか、入りたくない…」

   泣き出して小平に泣きつく。

千里「怖かったぁ…僕、とっても怖かったよぉ…」
小平「よしよし、バカだなぁ…この、よわむし、泣き虫千里っ!!」

   小平、後藤、笑いながら千里を慰める。
 
小平「とにかく早く、まずは家に帰って着替えないとな。今度は本当に風邪引いちまうな。」
後藤「あぁ…」
千里「でも…」

   泣きながら

千里「又ママたちに怒られちゃう…」
後藤「大丈夫だって、俺たちのせいでこうなったんだから。」
小平「誰もお前のせいにはしないよ…一緒にいくからさ…」

   千里、しくしくとそっと立ち上がる。


小口家
   後藤、小平、千里

千里「ママぁ、ママ…」

   珠子が出てくる。

珠子「せんちゃん?どうしたの?あら、後藤君に小平君じゃないの、いらっしゃい。遊びに来たの?」

   なく千里に目を移す。

珠子「あらまぁせんちゃん、そんなにビショビショ…一体どうしたの?又おもらししちゃったの?」

   千里、泣きながら首を降る。

後藤「違うんですっ、あのぉ…」
小平「千里君は…」
千里「上川に飛び込んだんだ…」
珠子「まぁっ、どうして?」
千里「上川で遊んでたら急にトイレ行きたくなっちゃって…でも、あそこ、近くにトイレないだろ?かといって僕、外でするのも嫌だし」

   泣きながら

千里「でももうどうしても我慢できないから、上川の浅瀬に飛び込んで…そこで…しちゃったの…」
珠子「まぁ呆れた子!!」

   タオルを持ってきて千里の体を拭きながら

珠子「叔母さんには黙っててあげるからね。早くお風呂へ入ってお着替えなさい。あなたたちもあがって、ほら。あら?」

   後藤と小平を見る。

珠子「あなたたちまでどうしたの?」

   二人、口ごもって頭をかく。

後藤「えーと…いやぁ、そのぉ…」
小平「それはですねぇ…」
珠子「まぁいいわ、」

   微笑む。

珠子「お風呂沸かします。ついでだからみんなで一緒に入ってしまいなさい。着替えは洗ってすぐに乾燥機にかけておくわね。」

   奥へ入っていく。千里と後藤、小平も入っていく。


プラハ音楽院
   その頃。麻衣、声楽のレッスンを受けている。麻衣、歌いながら。

麻衣(みんなは今…どーしとるかしら?)


小口家・お風呂場
   健司、千里、小平が三人で入っている。

小平「でも千里、」
千里「ん?」
小平「お前どうしてあんな嘘いったんだ?」
後藤「そうだよ、俺ら正直に…」
千里「いいんだ…君たちが僕の代わりに怒られるなんて、僕嫌だよ。でも…結局、ママ…おこらなんだけどね。」

   弱々しく笑う。

千里「でもこれがもし、叔母さんの耳にはいったらどうなる?確実に僕は後で雷のお説教を食らうことになってたよ。」
後藤「しかし、満更全てが嘘じゃなかったりして?」
千里「へ?」
後藤「お前、」

   ニヤリ

後藤「あん時実は、上川ん中で小便してるだろ?」

   千里、真っ赤になる。

後藤「その顔はまさかの?」
小平「図星か?」
千里「お願いっ、後藤君に小平君っ!!この事は誰にも言わないでよねっ!!ね、ね、ね!!」
後藤「うっせぇーな、分かってるよ。」
小平「誰にも言わねぇーよ。」

   三人、お風呂の中でわいわいとふざけ合ってまるで子供のように無邪気に遊んでいる。


プラハ・街中
   麻衣、音楽院を出て歩き始める。

麻衣(さぁーてと、へーこんねに遅くなっちまった…。これから家帰ってごはんか。めんどくせっ。いいや、)

   手を打つ。

麻衣(今夜はパーっとバールか何処かで食べていってしまいましょう!!)

   夜の道をスキップぎみに歩いていく。


バール・店内
   薄暗い。

麻衣(嫌ね、変なお店入っちゃった…なんだかとっても不気味…)
ブブ「Vítejte, návštěvník, co jíst?」
麻衣「No ... Co se doporučuje?」

   カウンター席につく。

   麻衣、暫くしてご飯を食べている。

麻衣「ん、おいしっ…」

   時々ぽんわり。

麻衣(みんな今ごろふんとぉーにどーしとるんかしら?やっぱり、一週間も経つと、さすがにホームシックが出てきちゃうに…)
ブブ「Dcera, by vás zajímalo, zda vaše místo je tam něco?」
麻衣「Jo, v děkuji ..., tento salát o něco více ... Prosím.」
ブブ「OK. Můžete získat ...」

   厳かなバールの中ではグラスハーモニカに合わせたソプラノの演奏が行われている。麻衣、うっとり。

麻衣(ほいでも今を頑張ればいつしか私もあんな風に…なれるんかやぁ…なれたらいいな…)

   目を閉じる。


プラハ音楽院・レッスン室
   数ヵ月後。

語り【そして、帰国数日前のこの日は、麻衣にとっての声楽最終試験だった。この試験に通れば麻衣は見事、このクラスを最年少卒業、帰国をして次なるステージへのキップをもらえることになっていた。】

   麻衣、息を飲む。

声「V pokračoval Yanagidaira Mai je. Prosím, pojďte sem.」
麻衣「Ano.」

   指定された部屋のなかに入っていく。


ボスワニー「Takže Yanagidaira je, zkuste zpívat tuhle hudbu zesilovač.」
麻衣「Ano…」

   伴奏ピアニストの伴奏で歌を歌い出す。


岩波家・健司の部屋
   磨子と健司、リータ。

磨子「明日は麻衣ちゃんのお誕生日よね…」
健司「あぁ…」
リータ「で、いつ帰るんだって?」
磨子「はっきりとは分からないけど、又連絡するって言ってたわ。」
健司「でも帰れるのは…試験に通ったら…だろ、」

   不貞腐れる。

リータ「健司、あんたは何怒ってんだよ?」
健司「べーつーにー?」

   磨子、クスクス。

健司「何がおかしいんだよ、磨子!!」
磨子「寂しいんでしょ、早く会いたいんでしょ?だから怒ってんずらに。」
リータ「ふーん、そうなんだ。」
健司「だ、だで違うって!!どいでほんな話になるんだよっ!!」
リータ「だってほーじゃんか。」
磨子「照れて隠さなくたっていいんだよ、坊っちゃん。」
健司「てっめぇーっらなぁ!!」

   磨子とリータに食って掛かる。

   そこへ電話。

磨子「ん、健司電話…」
健司「どーせ兄貴が出るでいいよ、」
悟の声「ん、タケっ!!電話だぞ!!」
健司「ん、俺に?誰だろう…ほーい、今行きまぁーす。」

   部屋を出て階段を降りていく。


   健司、電話を変わる。

健司「はい、岩波健司です…代わりましたが…?」
麻衣の声「あ、健司?私です。麻衣だに、柳平麻衣。」
健司「麻衣っ!!」

   磨子とリータも過敏に反応して顔を見合わせてニヤリとして聞き耳をたてる。健司、嬉しそうな顔をして麻衣と話をしている。


   やがて健司、電話を切って部屋へと戻って来る。

磨子「誰?」
健司「麻衣…」
リータ「何だって?」
健司「明日帰るってさ…」

   クールにいい放ちながらもニヤニヤを隠しきれない。磨子とリータもクスクスと笑いを堪える。

健司「おい二人ともっ、何笑ってんだよ!」
リータ「べーつーにー?」
磨子「べーつーにー?」
健司「ちぇっ、勝手にしてろってんだ。」

   二人から顔を反らすと一人でフッと微笑む。

健司(麻衣…)

 
   その夜、ベッドの上でなかなか寝付けずににやにやでれでれとしながらとても大きなテディーベアを抱いて転げ回ったりパフパフしたりしている。


飛行機内・ヒジネス
   麻衣、飛行機に乗り込んでコーヒーを飲みながら微笑む。

麻衣(やっと帰れる…これで又長引いちゃったらどうしようと思ったけど…良かった…早くみんなに会いたいわ。)

   一人一人の顔が浮かんでくる。

麻衣(田中磨子ちゃん…リータ…片倉キリちゃん…湯の脇チカ代ちゃん…小口千里君…ほして、…岩波健司君…)

   麻衣、みんなでとった写真の健司の顔にそっとキスをする。

麻衣(健司…)

   ポット赤くなって写真をしまうと窓辺に目を移す。


小口家・千里の部屋
   ベッドに仰向けに眠っている。

千里(麻衣ちゃん…いつ帰ってくるのな…もうそろそろ帰ってくるのな?連絡くれるって言ってたもんな…まだだしな。彼女は絶対に約束破るような子じゃないし…早く会いたいな…麻衣ちゃんに…)

   ふふっと笑う。

千里(僕、彼女に愛されるような強い子になりたいな…今すぐに、この三ヶ月には全然無理だったけど…それでもせめて、せめて一ミリくらい…スプーン一杯くらいは、僕も少し大人に、男っぽくなれたのかな?これでも僕、少しは色々と努力したんだよ。君が努力しているように、僕も頑張らなくちゃいけないんだって思ってさ。)

   時計はもう2時を回っている。

千里(ん、もう2時か…さてと、こうやっててもしょうがないか…いい加減に僕も眠ろう…)

   目を閉じるが布団の中で丸込まる。

千里(って、前になんだかトイレ行きたくなってきたぞこれ…)

   もぞもぞ。

千里(んー…なんだか怖いな…でも、おねしょしちゃうのは嫌だな…)

   そっと起き上がる。部屋を出ていく。

千里の声「ママぁ、ママぁ、起きてよ…トイレに行きたいんだよ、ねぇ、ママったらぁ、ねぇってばぁ!!」
珠子の声「うるさい子ねぇ…寝る前に済ませなさいっていつも言っているでしょ?それにあなたはもういくつです?来年はもう高校生なんですからトイレくらい一人で立てるようになりなさいっ!!」
千里の声「だってぇ、お化けがぁ…僕怖いんだもん…ねぇ、ママったらぁ…」

語り【千里はちっとも変わってはいませんでした。彼の成長の道のりも一筋縄ではいかず、まだまだ長いようでした。】
 

   麻衣も機内ですっかりと本を開いてコーヒーカップを手に持ったまま微笑んだように寝入っている。


   夜空を飛行機はどこまでも飛んでいく。 

 
国際空港・日本
   麻衣がゲートから出てくる。

麻衣「ふぅーっ、やっと着いたぜ日本!!ヨーロッパもいいけど…やっぱり我が居るべき里は日本よのぉ…早く茅野へ帰りたい…。」

   歩き出す。

麻衣「あ、ほーだ!!みんなに連絡せんくちゃな。」

   キョロキョロ

麻衣「電話電話と…あ、あったあった!!」

   公衆電話をかけ始める。

上諏訪駅
   千里が出入り口にいる。そこへ麻衣。

麻衣「あ、おーいっ。小口くーんっ!!」
千里「?」

   嬉しそうに微笑む。

千里「麻衣ちゃんっ!!」

   二人、近寄る。

千里「お帰り。元気だった?」
麻衣「ありがとう、お陰さまで。あんたこそ…元気そうね。よかった。」
千里「あぁ。」
麻衣「あ、これ」

   鞄から小さな包みを取り出す。

麻衣「あんたへのお土産だに。」
千里「え、僕に?くれるの?」
麻衣「えぇ…大したもんじゃないけど…気に入ってくれれば嬉しい…」
千里「ありがとう!!開けていい?」
麻衣「え、えぇ!!」

  千里、ルンルンと明け出す。グラスハーモニカ型のオルゴールが出てくる。

千里「わぁ可愛い!!ありがとう。大切にするね。」
麻衣「良かった。」

   オルゴールから音楽が流れる。

千里「これ…なんの曲?」
麻衣「モーツァルト。ピアノとグラスハーモニカのためのアダージォってやつ、ほれ…」

   箱の中を指差す。

麻衣「この箱の中に、この曲のピアノ楽譜が入っとるんよ。」
千里「へぇ…」
麻衣「良かったら弾いてみて。」
千里「うんっ!!」

   楽譜をまじまじ。

千里「僕にはまだちょっと難しそうかも…」

   クスッと笑う。

千里「ん?」

   更にがさごそ。麻衣、悪戯っぽく千里を見つめる。

千里「何?」

   小さなお菓子の袋が出てくる。

麻衣「おまけだに。」
千里「え…えぇ?こんなにいいの?」
麻衣「勿論だに。喜んでもらえるなら私も嬉しい。」
千里「ありがとう…」

   マシュマロを一つ取り出して口の中に入れる。

千里「ん、おいし!!僕って実はマシュマロ大好きなんだ!!」

   二人、微笑む。


電車の中
   座る二人。

麻衣「ほいじゃあ折角だで小口君、私これから健司たちと会うの。あんたも来なさいよ。改めてみんなに紹介するに。」
千里「僕もいいのかな?」
麻衣「勿論よ!!みんな大歓迎だに。ほれに一度会っとるだで、一度会や、私たちはみんな友達だに。」
千里「うんっ。」

白樺高原・コスモス湖岸
   麻衣、千里、健司、磨子、リータ

麻衣「んてなわけで、彼が小口千里君…」
健司「ってちょっと待てよ麻衣!!」
麻衣「何よ?」
健司「お前、帰国して俺たちに会うよりも先にそいつに会ったのかよ?」
麻衣「ほいだって彼との約束だっただだもん。何よ?」

   態とらしく

麻衣「いいじゃないの?誰と先に会おうが私の勝手だらに。ほれに、恋人ならまだしも?あんたとは恋人なんじゃないだだもんで、態々あんたに先に会わなくちゃならん理由なんてないらに。」

   包みを健司に放り投げる。

麻衣「はいっ、あんたにお土産。ほれと、」

   磨子とリータにも渡す。

麻衣「磨子ちゃんとリータにも。」
磨子「わあ、やったぁ!!ありがとう麻衣ちゃん!!」
リータ「私にもくれるのかい!?フーッ!!」
 
   喜んで明け出す。
 
リータ「お、うまそ!!いただきまぁーす!!」
磨子「美味しそうなお菓子!早速食べていい?」
麻衣「どーぞどーぞ!!」

   磨子もリータも食べ出す。健司はビリビリと包みを破って箱を開ける。

健司「おおっ!!」
麻衣「あんたには特別。」

   ウィンナーとサラミの詰め合わせ。

麻衣「大事に食べな。」
健司「やりぃ、サンキュー!!ありがとうな麻衣。」

   サラミを早速まるかじり。

健司「んーっ、うまっ。最高!!」
麻衣「呆れた!!」

   くくっとわらう。

   暫くして、全員、湖岸で踊っている。健司がバイオリン、磨子がアコーディオンを弾いている。麻衣と千里がポジションを組み、リータは一人でステップを踏む。

磨子「ねぇ、ところで麻衣ちゃん?」
麻衣「んー?」
磨子「あなたこれから、どうするの?せっかく留学したのに…これでもう終わり?」
麻衣「いえ?」

   踊りながら

麻衣「今度、茅野の芸術文化会館に新しく声楽施設が出来るんですって。そこにとても名門な教授がいらっしゃるらしいのよ。だもんで、ほの方を紹介してくださったわ。急遽MMCの声楽の部にも優先推薦で試験出させてくださるって言ってたわ。」
健司「MMCって、あのMMCか?」
麻衣「ほーだに、あれだに。」
リータ「うわぁーを。」
磨子「すっごーい!!麻衣ちゃん、良かったね!!おめでとう。」
麻衣「いやいや、まだ出れるって決まった訳じゃないで…」

   ふざけ会う四人を微笑んで見つめる千里。

麻衣「で、小口君、あんたは?」
千里「へ?」
麻衣「ほれ、ピアノの発表会!!」
千里「う…うん…」
磨子「へー、君ってピアノ弾けるんだ。何かかっこいい…」
リータ「あんたみたいなのが弾きゃかなり映えるよな。」
千里「い、いやぁ…」
健司「お、俺だってピアノやってるじゃねぇーかよ!!」
麻衣「ほれに、彼はピアノだけじゃないんよ。」

   踊る。

麻衣「タータララララァ〜…バレエも踊れるんだで。」
磨子、リータ「きゃあーっ!!何て素敵なのっ!?可愛いっ!!」
健司「お、俺だってっ!!」
磨子「あんただって何よ?」
リータ「まさかあんたが、バレエ踊れるとかぁ?」

   リータ、磨子、腹を抱えて大爆笑
 
磨子「ないないないない、絶対ないって!!」
健司「はいはいはいっ、どーせ俺はバレエ何て似合わないですよぉーだっ!!」

   剥れてつんっと拗ねる。


レストラン
   お茶をする前景の人々

健司「ところで麻衣、今日はお前の誕生日だよな?」
磨子「あ、本当だ!!」
麻衣「え?」

   少し考える。

麻衣「あ、ほっかやぁ!!忘れとった。」
リータ「おいおい、自分の誕生日忘れたのかよ。」
麻衣「はい…」
健司「はい…」

   花束を麻衣に渡す。

健司「実は俺…用意してたの…受け取って。ハッピーバースデー麻衣…」
麻衣「わぁ…」

   ほほを赤らめる。

麻衣「健司…ありがとう…。」

   目を閉じて香りを愛でる。

磨子「!!っ」
リータ「!!っ」

   リータと磨子、目を丸くして互いに顔を見合わせる。千里、もどかしそうにもじもじと他の友達を見つめている。


茅野芸術文化会館・練習室
   別の日。高橋先生、麻衣。

麻衣「柳平麻衣です。これからどうぞ宜しくお願い致します。」
高橋先生「柳平さんね。頑張りましょう、あなたはとても優秀と伺っています。MMCも特別推薦が降りていますので、来年のコンクールに向けてレッスン頑張りましょうね。」
麻衣「はいっ、頑張りますっ。」
高橋先生「それでは早速始めましょうか?コンコーネは?何処まで進みましたか?」

   高橋先生はピアノにスタンバイし、二人で色々と話ながらレッスンが始まる。


ピアノ教室
   名取先生と千里。ピアノのレッスンをしている。

名取先生「小口君、発表会までもうすぐですね…」
千里「え…えぇ…」
名取先生「頑張って。自信をお持ちなさい。あなたは弾けるんですから!!後は、人前に出て弾く自信をつけるの。分かった?」
千里「はい…」
名取先生「では、今のところをもう一回…暗譜でノーミスを心がけてお弾きなさい。きっちりと弾けるようになるまでは何度だってやらせますからね。」
千里「はいっ。」
名取先生「それにあなたは、発表会が終わったら次はMMCのテープ審査と受験があるのですよ、気は抜けません。引き締めてね。」
千里「はいっ。」
名取先生「ではもう一回…」

   千里、弾き始める。


小口家・千里の部屋
   千里、勉強をしている。

珠子の声「せんちゃーん?勉強終わったらピアノの練習するのよぉ。」
千里「はーいっ!!」

   ふーっと伸びをしてピアノにつく。

千里(勉強なんかよりもこっちの勉強の方がずーっといいし楽しいや。)

   ルンルンとピアノをひきだす。


岩波家・健司の部屋
   健司と太郎。勉強をしている。

太郎「大部分かってくれるようになりましたね。私も嬉しい。」
健司「おおっ。俺もやっと…あんたの異様さにもなれてきたよ。年も俺と似たようなもんだし…なぁ、いい加減に教えてくれたっていいだろ?あんた一体なにもんなんだよ?どいで、母ちゃんと揃いも揃ってほんな…」
太郎「それは…」

   にたりと笑う。

太郎「もう少し時がたてばあなたにも分かってくると思いますよ。さぁ、」
 
   健司の気を引く。

太郎「あと少しです。頑張ってやってしまいましょう。」
健司「ほーいっ、」
 
   鉛筆を手に取り、ノーとに向かうが縦に震える。

健司「うーっ、とちょっと待ってくれ…ほの前にトイレ行かせてくれよ…」
太郎「分かりました、なるべくお早めにね。そのまま逃げ出しませんように…」
健司「分かってるよ。」

   部屋を飛び出ていく。


小口家・千里の部屋
   ピアノを弾く千里。

珠子の声「せんちゃーん?ご飯ができたわよ。いらっしゃい!!」
千里「はーいっ。」
 
   曲が終わると手を止めて蓋も閉めずにルンルンと電気を消して部屋を飛び出していく。


   


   


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