[携帯モード] [URL送信]

石楠花物語中学生時代
演劇際の告知
諏訪中学校
   卒業式が行われている。


   (教室)
   藤森明美と麻衣が黒板の前に立っている。

藤森先生「それでは、突然ですが…柳平麻衣さんが、転校をすることになりました。」

   がやがや。

麻衣「みなさん、短い間ですがありがとうございました。転校といっても私が転校するのは、茅野市の東中学校です。なのでみなさん、私が転校しても又、遊ぼうな。ふんとぉーにありがとう。」

   涙をぬぐう。千里も涙を拭う。麻衣、千里にそっと微笑みかける。


高橋家
   麻衣、房惠、芳惠、須山

麻衣「ほれではみなさん、一年間お世話になりました。」
房惠「あぁ、寂しくなるよ…本当に麻衣ちゃん、いっちまうんだね。」
麻衣「えぇ…でも又必ず遊びに来ます。」
房惠「麻衣ちゃん、」

   手提げ袋を麻衣に渡す。

房惠「はいっ、これ約束のものだよ。かりん水とかりんジャム、そしてかりんのクッキーだ。お食べ。あんたの育てたかりんなんだよ。」
麻衣「わぁーっ!!ありがとうございます。大切に頂きまぁす!!おば様、ありがとね。そして、芳惠おば様と彦兄ぃも。」

   そこへ一台の車

麻衣「あ、」

   柳平紅葉、柳平けいとが乗っている。

紅葉「麻衣っ!!」
麻衣「母さん!」

   紅葉、車から降りて来て深々と頭を下げる。

紅葉「まぁまぁ、この度はうちの麻衣が大変お世話になりまして、ありがとうございました。何か粗相を犯しませんでしたでしょうか?」
房惠「とんでのございません!!麻衣ちゃんはとてもいい娘さんです。麻衣ちゃんのお陰で私も助かりましたし、とても楽しい一年間になりましたわ。」

   麻衣を見る。

房惠「又、小口君連れて遊びにおいでなさい。」
麻衣「えぇ!!彼も喜びますわ。」 
柳平「さぁ、それでは麻衣、」
麻衣「はいっ。」

   車に乗る。お互いに手を降りながら車は動き出す。 

麻衣「さようならぁーっ!!」

   そこへ千里が走ってくる。

千里「麻衣ちゃんーっ、待って!!」
麻衣「?」

   振り替える。

麻衣「父さんっ、止めて。」
 
   車から飛び降りる。千里、息を切らしている。

麻衣「小口君、どいで?」
千里「麻衣ちゃん…間に合って良かった…」

   麻衣をまじまじ。

千里「本当に…行っちゃうの?」

   泣き出す。

千里「寂しいよ…」
麻衣「おっこーね。転校ったって茅野だに。近いただもん、又いつでも遊ぼう。私んちにも遊びに来てな。」
千里「うんっ、ありがとう…」

   包みを渡す。

千里「これっ…」
麻衣「え?」
千里「君にプレゼント…」
麻衣「私に…くれるだ?」
千里「うん…大したものじゃなくて、しかも不味いけど…僕、君のためにケーキ焼いたんだ…良かったら食べてみて。…嫌なら捨てちゃってね…」
麻衣「まぁ!!捨てるわけないらに、折角あんたが作ってくれただもん…開けてい?」

   千里、恥ずかしそうに頷く。麻衣、開け出す。中からはパウンドケーキが出てきて、チョコレートでありがとうとかかれており、もう切れている。麻衣、一切れとって口に入れる。

千里「…どう?」
麻衣「とっても美味しい…」

   微笑む。

麻衣「これ、バラのパウンドケーキなんね…素敵。又是非…作りに来てな。待ってる。」

   微笑んで車に乗り込む。麻衣と千里、お互いに手を降って車は走っていく。二人とも泣いて別れる。

   いつまでも手を降っているが千里、麻衣の車が見えなくなるとその場に泣き崩れる。

千里「麻衣ちゃん…」

   須山、千里の体を叩いてゆっくりと支えて起こす。千里、須山の胸で静かに泣き出す。


   一方、車の中では麻衣も静かに涙を拭う。

車内
   麻衣、紅葉、けいと。運転はけいと。
 
紅葉「ねぇ麻衣、諏訪中学校はどうだった?お友達出来た?」
麻衣「えぇ、沢山…みんな素敵な子よ。優しいだ…。今の子だってほう。私の大切な友達…少し気は弱くて泣き虫で臆病だけど、とっても思いやりがあるし優しい、心も綺麗な子なのよ。」

   色々と話す。

紅葉「そう、良かったわね。ほら、休み明けからは東中よ。まず一度、学校の先生にも挨拶にいかなくちゃね…」
麻衣「えぇ。金沢だら?金沢のどの辺に?」
紅葉「住むのは父さんのお姉さんのお家なんだけどね、青柳駅の近くよ。」
麻衣「ふーん…。」
紅葉「おば様ご夫婦と、三人のお子さんがいらっしゃるんだけど…いい?」
麻衣「勿論っ!!どんな子かしら?」

   わくわく

麻衣「とっても楽しみっ!!」  


岩波家・玄関先 
   幸恵、岩波、健司がいる。

幸恵「さぁ、健司。母さんは今日からお仕事なの。だからいい子にしてるのよ。今日から、藤宮さんもいらっしゃるからお行儀よくするのよ。」

   健司、舌打ちをして悪態をつく。

幸恵「分かったわね!!」
健司「はーいっ…」
岩波「それじゃあ健司、留守番は頼んだぞ。宜しくな。」

   二人、出ていく。

健司「チェッ、何が家庭教師だよ!!誰があんな小坊主に素直に勉強受けれるかってんだ全く!!」

   ツンッと鼻をならす。そこへ呼び鈴。

健司「畜生…早速来やがったぜ…」

   だるそう。

健司「はーい、どーぞ。」
つぼ「こんにちは、健司くんね。」
健司「は、…はい。」

   つぼ、深々とお辞儀。

健司「お、おいっ!!」
つぼ「私、若様のお宅にお仕えすることとなりました、女房の藤宮つぼと申します。」
健司「い、いえ…こちらこそ…宜しくお願い致します…」

   健司も深々。

つぼ「若様、お止めくださいましっ!!」
健司「は、はぁ…」

   顔をあげる。

健司(何なんだ…こいつ?)

   次に藤宮太郎が深々。

太郎「倅の藤宮太郎です。本日より若様のお世話兼、家庭教師を勤めさせていただく。宜しくつかいまする。」
健司「は…はぁ…」

   ポカンとしている。

健司「と、とにかくまずはお上がりください。ただいまお茶を…」
つぼ「若様、お止めくださいまし。その様なことはこのつぼめがやります。」

    つぼ、ささっと台所に入ってお茶の準備をしだす。

太郎「若様、ではそろそろお勉強に参りましょうか?」
健司「は…はい…宜しくお願いします…」

   健司もワケわからずに首をかしげながら自分の部屋に入っていく。

健司(何だ?こりゃ一体どうなってんだ?てか若様って誰?まさか俺のこん?)


小口家・台所
   珠子、夕子、坂上寧々がお茶を飲んでいる。そこへ千里。

夕子「おや千里、お前何処行ってたんだい?」
珠子「いいから、手を洗ってこちらへお座りなさい。」
千里「叔母さんっ、ママっ!!」

   意を決したように

千里「僕っ、もう決めたんだ!!叔母さんになんて言われようと、自分の夢の道は自分で進む!!だから叔母さんにどれだけ反対されようが僕は、京都の芸術高校受けるからっ!!ピアノもバレエもやめないからっ!!ではっ。以上っ。」

   去って自分の部屋へこもる。夕子、珠子、寧々、顔を見合わせてしばらくポカーンとしている。

夕子「今のって…千里かい?」
珠子「えぇ…」
坂上「ずいぶん変わったね…」

同・千里の部屋
   千里、震えながら壁にへなへなともたれ掛かる。

千里「どうしよう…僕…僕、言っちゃったよ…」 

   恐ろしさに震えながら涙を流す。

千里「こんなこといってあとでどうなるか…叔母さんに、確実に僕は…殴られる…。」

   電子ピアノを横目で見る。

千里「でも僕は、ピアノの夢は絶対に諦めたくないんだ!!よしっ。」

   ピアノにスタンバイ。

千里「もっと練習さえして上手くなれば叔母さんもきっと許してくれるよ…うんっ、そうだ。」

   ピアノを弾き出す。

柳平家
   柳平の車が駐車場にはいる。

柳平「さぁ着いた。ここだよ、入りなさい。つむやしおももういるよ。」
麻衣「はいっ。」

   恐る恐るドアを開ける。

麻衣「た、ただいまぁ…」

   柳平紡、柳平糸織、柳平と子、柳平あすかが飛び出てくる。

紡、糸織「麻衣っ!!」
と子、あすか「麻衣姉っ!!」
四人「お帰りっ!!」
麻衣「みんなぁ!!」

   そこへ、望月優作も出てくる。

望月「お帰り、君が麻衣ちゃん?」
麻衣「え、えぇ…あなたは?」

   柳平八重子、柳平正三も出てくる。

麻衣「八重姉っ!!兄貴っ!!」
八重子「お帰り麻衣、ふふっ、格好いいでしょ、彼。」
正三「この家の息子さんで優作君って言うんだよ。後三人娘さんがいるけど…今はまだいないから後で紹介するな。」
麻衣「ほーだったんですか、あなたが!!」

   微笑んで深々と。

麻衣「柳平の3女、麻衣です。本日より宜しくお願い致します。」

   兄弟たち、クスクス。

望月「ちょっと、やめなよ麻衣ちゃん。気楽に、ね。僕、この春高校一年になるんだ。実の兄だと思って仲良くいこうよ、ね。宜しく。」
麻衣「ええっ。」

   全員、中の奥の方へと入っていく。

岩波家・健司の部屋
   健司、太郎と共に勉強をしている。

健司「あ、あの…先生?」
太郎「先生など、お止めくださいな。太郎とお呼びください。」
健司「ほ、ほう?じゃあ太郎君…」
太郎「はい、何でしょう?」
健司「君ってさぁ…失礼だけど…何者?」
太郎「僕ですか?僕は、歴史に名も深い藤宮家の長子でして、母と父と三人で暮らしております。母はご覧の通り、お宅にお仕えする女房…、父は…」

   健司、太郎の話を更にポカーンとして聞いている。

太郎「よって私は…」
健司「やめろっ、もういい…話すな。余計にわからなくなるっ…」
太郎「左様にございますか?」

   健司、頭を抱える。

健司(こいつは一体何なんだぁーっ。助けてくれぇーっ!!) 

 柳平家
   朝。制服を着た麻衣、糸織、紡。望月も玄関に出てくる。

麻衣「優作さん!」
望月「や、今日からいよいよだね。頑張れよ。」

   三人の肩を叩く。

望月「今年は、卒業生だろ。」
麻衣「えぇっ!!」
紡「んならまぁ、早速。」
三つ子「goッ!!」

   三つ子と望月、それぞれに別れる。


東部中学校・教室
   ガヤガヤしている。伊藤すみれ、佐藤加奈江、大寺八千代、向山俊也が固まって話をしている。

すみれ「ねぇねぇ知ってる?今年から転校生が入ってくるんだって。」
加奈江「え、マジで?私知らんよ、そんなの!!」
八千代「あれ、なえ知らないの?」

   向山、受かれてにやにやとしながら早弁をしている。

向山「女の子だってよ、どんな子かなぁ?」

   わくわく。

向山「可愛い子ならいいなぁ、少なくともうちの学年にゃあパットするのいねぇーしよ。」
八千代「悪かったわね。」

   そこへ宮澤達弥、高橋司。

高橋「トシの言うことまんざら嘘じゃねぇーぞ。俺たちも勿論転校生には、可愛い女の子を期待したいけどさ…そりゃ無理っつーもんよ。」
向山「何故っ!?」
高橋「だって考えても見ろっ!!このド田舎たぜ?」
向山「そんなぁー!!もっと可愛い子がクラスにいっぱいいるような東京とかに生まれたかったぜ…」 
宮澤「いやいや、それ関係ないと思うけどな…」

   (チャイム)
   同時に小平百恵先生が厳格な目付きで入ってくる。全員、席につく。

小平先生「はいっ、全員席について。今日から新学期です。みなさんは今年は受験生ですね。確りと勉強に身を入れるように。」
全員「はいっ。」
小平先生「それでは今日は、ホームルームを始める前にこのクラスに転校生を一人、紹介したいと思います。」

   クラス、ざわざわ

小平先生「静かにっ!!…それでは、」

   扉の方を見る。 

小平先生「入ってきて。」

   麻衣が入ってくる。男子たち、一斉に麻衣に釘つけ。

小平先生「では、自己紹介を…」
麻衣「はいっ。柳平麻衣です。諏訪市諏訪中学校より参りました。本年度より一年間お世話になります…宜しくお願いします。」
小平先生「はいっ。それではみんな宜しく。柳平さん、」

   指す。

小平先生「あの、長いおかっぱ髪の女の子の隣の空いている席に行ってね。」
麻衣「はいっ。」

   麻衣、すみれの隣の席に座る。すみれ、麻衣に微笑みかける。


   (休み時間)
   麻衣の廻りに女の子も男の子も集まってくる。

すみれ「柳平さんね。私、金沢の伊藤すみれ!」
加奈江「私は佐藤加奈江!玉川なんだ。」
八千代「大寺八千代だよ。私も玉川。」
麻衣「すみれさんに、加奈江ちゃんに八千代ちゃん。私は柳平麻衣。みんなからはまいぴうって呼ばれてる。だで…好きなように呼んで。」
加奈江「そう?ならまいぴうだ!!私はなえって呼ばれてるの。」
麻衣「なえちゃんか。なら、」

   八千代を見る。

麻衣「やっちんかな?」
八千代「私は、やっちん!!」
向山「おいっ、俺向山。向山俊也!!」
高橋「俺、高橋司!!」
宮澤「僕は宮澤達弥です。」

   男子たち、麻衣にホクホク。

原中学校・教室
   健司、岩井木徹、西脇靖、清水千歳

健司「ほ、でさ?家に家庭教師が来ることんなってこの間から来てんだけど、ふんとぉーに気が変になりそうなんだ。」
岩井木「気が変になりそうとは?何かあったのかよ?」
西脇「苛められてるとか?」
健司「や、ほーじゃないんだ。凄いよくはされてるよ。でも…」
清水「でも、何だよ?」

   健司、頭を抱える。

健司「俺へのあいつの接し方が気持ち悪くてさ…」
清水、岩井木、西脇「どんな風に?」
健司「聞く?あのな…」

   話し出す。

健司「ってわけ…ほいつ俺より数歳年上なんだ。年上なんに、年下の俺に何であんな丁寧にしゃべる必要があるんだ?ほれに俺のこん若様って…江戸時代じゃねぇーんだぜ?」
西脇「一応、家庭教師だからじゃね?」
岩井木「だからって、いくらなんでもほりゃやりすぎだろうよ。」
健司「ほれに、ほの母さんって人も…家政婦っていったろ?挨拶ん時に家政婦じゃなくて女房とか言うんだぜ?」
清水「女房って…平安京か?」
健司「だろ?おかしいよなぁ…気が狂うぜ。」

   
諏訪中学校・教室
   千里たち

後藤「なぁ千里、お前寂しいだろ?」
千里「ん?」
小平「柳平麻衣が行っちまってさ…」 

   千里、紅くなる。

眞澄「そりゃそうよ、だってチーちゃん麻衣と一番仲良くしてたし、なん知ろ優しくてチーちゃんが困ってたり泣いてたりするとすぐに助けてくれたもんね。」
マコ「おもらししちゃったときとかね。」

   千里、更に真っ赤になって俯く。

真亜子「まぁ、そりゃあんだけ優しくしてもらやぁ誰だって落ちるでしょ。」
後藤「そーいや千里、言ってたもんな。原村の…」
千里「や、や、や、やめろっ!!やめてくれよぉ海里くん!!」

   メンバー、笑う。

千里「でもいいんだ…」

   うっとり

千里「学校で毎日会えなくたって、実は僕ら、ピアノ教室もバレエ教室も一緒なんだもん。きっと今年のピアノの発表会では又一緒になれるさ。」
小平「お前っ…もう友達通り越して…あいつにぞっこんだな。」

   ハルウララな千里。

千里(麻衣ちゃん…)

東部中学校・教室
   麻衣、暫くして机でうっとりとぽわーんとしている。そこへ加奈江

加奈江「まいぴうっ!!」
麻衣「ん、なえちゃん。」
加奈江「突然だけどさ。まいぴうって、演劇好き?」
麻衣「演劇?えぇ、大好き!!…どいで?」
加奈江「実は私たち演劇部なのよ。どう?君も演劇部やらない?」
麻衣「わぁ、ほんなのあるだぁ!?楽しそう、やりたいっ!!」
加奈江「よしっ。なら放課後見学来なよ。」
麻衣「是非是非ぃ、行くぅ!!」


学習室
   麻衣、加奈江、すみれ、八千代、向山、宮澤、高橋、他後輩たちがいる。 

加奈江「はーい、今日は、新入部生をご紹介いたします!!我がクラスに入った転校生、柳平麻衣さんです。」
麻衣「柳平麻衣です。宜しくなして」

   大拍手。

麻衣「で、私はどーすりゃいいだ?」  
加奈江「それが私達もどーすりゃいいのか分からないんよ。」
麻衣「は?」
すみれ「九月の始めに演劇祭があるのね…でもね、演目すらまだ決まらなくて」 
八千代「みんなであーだコーダ言っとるの。」
向山「だで俺は、アクションがいいってんだろ?」
高橋「何いってんだ!!ホラーだホラー!!」
宮澤「冒険、アドベンチャーだよ!!」 
すみれ「ここはやっぱり、ラブストーリーでしょ。」
加奈江「アムレットか?」
八千代「ホーム劇がいいんじゃない?」

   やれやれ。

八千代「という感じで、意見が全く纏まらんのよ。」
麻衣「ふーん…ならぁ…」

   悪戯っぽく

麻衣「全部をやればいいんじゃない?」
全員「全部を?」
八千代「どうするのよ?」
向山「おいおい柳平、それが出来りゃ苦労しないぜ。」
高橋「んとも、何かいい案があるのか?」
麻衣「えっへん。ほりゃありますとも!!放課後私の家に来て。説明するわ。色々と打合せしましょう。」

富士見高原中学校・学習室
   藤岡小町、仲町操、小松孝太、小松公子、田中磨子がいる。

磨子「私が…ただいま皆さんからお預かりに上がりました、長峰中の田中磨子です。こちらが演劇の名門部と聞き、ノウハウを聞きに来たの。」
小町「ふーん、磨子ちゃんか。宜しく、私小町。」
操「僕操。つまり、僕たちと組んで演劇祭に出るつもりで来たの?」
磨子「まぁ、率直に言うとそう言うことかな。」
孝太「いいんじゃない?どうせ最後は合同でやるんだし…」
公子「合同で?何それ?」
孝太「公子、お前知らない?優勝したら、第三位までの高校が合同で優勝記念のやつやるんだぜ。」

   燃える。

孝太「いつも俺たちの高校が負けてるんだ!!今年こそ!!」
小町「そうよ。今年こそ東部から優勝を奪ってやるんだから!!」
磨子「何?東部がほんねに強いだ?」
仲町「強いなんて言うもんじゃないよ。ねぇ?」

   磨子以外の全員、頷く。


諏訪中学校・教室

後藤「それよりも千里、」
千里「え?」
後藤「諏訪合同演劇祭のこんはお前も知ってるだろ?」
千里「何それ?」
小平「って、聞いてなかったのかよ!!」


原中学校・教室

健司「は、何だよほれ!!俺、知らねぇ…よ!!てか、演劇なんて俺、経験ないんだぜ?ただでさえ家のこんで悩んでるっつーだにこれ以上問題の種を増やさないでくれ…」

   頭を抱える。


諏訪中学校・教室

千里「とんでもないっ!!嫌だよ僕、演劇なんて。君達だってしってんだろ?僕は今」

   もじもじと俯く。

千里「ピアノの発表会の事だけで頭の中パンクしそうなんだ…これ以上、僕にプレッシャー与えないでくれよ。」


柳平家・応接間
   演劇部が集まっている。

麻衣「と言うわけで…」

   爆発ゲームを取り出す。

麻衣「とりあえずはまずみんな、友好の義としてゲームを…」
高橋「おいおい柳平、俺たちは遊びに来たんじゃないんだぜ?」
向山「お前のいってた案っつーのを早く教えろよ。」
宮澤「いいじゃん、柳平さんも今日来たばかりなんだし…まずは打ち解けあいの印としてゲームしようよ。楽しそうだし。」
すみれ「そうそう、以外と何気ないこう言うところからインスピレーションって生まれるのかもよ。」
八千代「男たちは頭が固すぎるのよ。」
加奈江「そうそう!!」
麻衣「ではっ…いざっ!!」


富士見高原中学校・学習室 

全員「いざっ!!」

   孝太が爆発ゲームを取り出す。 

磨子「…何よ…これ?」
小町「爆発ゲームじゃないの。何するの?こんなもの。」
仲町「まさか演劇の?」

   孝太、悪戯っぽく笑う。

仲町「嘘だろ?」
孝太「分かってないな…こう言う何気ないゲームからインスピレーションっつーのは生まれるらしいぜ。」  


諏訪・通学路
   千里、後藤、小平

後藤「そう肩を落とすなって千里!!」
小平「お前、普通に舞台たつのなんてへーなんてこんねーだろうに。」
後藤「そうそう、源チサという女装の方が遥かに度胸は上なんだからさぁ。」
千里「でもぉ…だってぇ…」
小平「あーわかった!!お前、あれが心配なんだな?」
千里「あれって?何が?」
後藤「舞台の上で又小便我慢できなくなってもらしてしまわないか…」
 
   千里、真っ赤になって下を向く。

後藤「ほれっ、図星だ。」 
小平「まぁさ、とにかく今日は俺んちへこいよ。今大人気の新しいゲームかったんだ。」
千里「ゲーム?」
小平「そう、名付けて…」

   得意気

小平「ナポレオンの大砲ゲームさ。」

   麻衣たち、磨子たちがそれぞれやろうとしているのもナポレオンの大砲ゲーム。

一方

払沢公民館

清水「ついたっ。ここでいいや。」
岩井木「何だよここ、払沢の公民館じゃん。」
西脇「タケと千歳は払沢だけどよ、僕達は中新田だよ?」
健司「一体ここで何するの?」
清水「それはですねぇ…」

   ナポレオン大砲ゲームを取り出す。 

清水「演劇祭の題材を決めるっ!!」
健司「はぁ?だで俺は参加したくないんだって!!てか…ほんなもんでどうやって決めるんだ?ほれ、今大人気のゲームだろ?」 
清水「いいからタケ、にみんなついて入ってこいよ。」

   いたずらに笑って中にはいる。首をかしげつつ、他三人も続いて中に入る。

同・会議室

健司「はぁっ!?何これ?」

   清水、あおひげ大砲ゲームを取り出す。

健司「だで、これでどーやって配役を決めるんだよっ!!」
清水「ん、どーやって?」

   悪戯っぽく笑う。

清水「ま、ゲームしてりゃその内分かるさ。」

   健司、胡散臭そう。

清水「とにかく、な。やろうぜ。」
岩井木、西脇「おーっ…」
健司「…おー…」

  

   麻衣たち、磨子たち、健司たち、千里たちが其々にやり出す。人々が順番ずつに大砲へサーベルを差していく。

柳平家

麻衣「あっ!!」
すみれ「あーっ…」
加奈江「んもぉ、」
向山「おいおい柳平、間だ始めたばかりだぜ?とばすんじゃねぇーよ!!」
麻衣「ごめんごめん…」
高橋「あーあ、又初めからか…」
宮澤「いいじゃないか、楽しいんだし。ね、もう一度!!」
麻衣「よーしっ、今度こそ負けねぇーにぃ!!」


富士見高原中学校・学習室
   磨子たち

孝太「おいっ、田中っ!!お前早速飛ばすんじゃねぇーよ!!」
磨子「ごめんごめん、」

   人形をまじまじ。

磨子「でも、このあおひげ…良くできてるわねぇ…誰かモデルとかいるんかしら?」
孝太「あおひげってお前…」

  磨子をこずく。
孝太「お前バカか!!知らねぇのかよ!!」
小町「そういう口の聞き方やめなさいよ、孝太!!」
公子「そうよ、みっともないわ。」
孝太「うっせぇー!!この方の事を軽く呼んでもらっちゃやぁ困るんだよっ!!」 
磨子「じゃあ何だってんだよ!?」
孝太「このお方はなぁ!!」

   立ち上がって咳払い

孝太「ポーランドのポナパルト・ナポレオン様だぁ!!」


払沢公民館・会議室

健司「ポナパルト…ナポレオン?」

小口家・応接間

千里「…誰それ?」
小平「はあーっ?何だ千里、」
後藤「お前、知らねぇのかよ?」
千里「う…うん、有名な人?」

   後藤、小平、顔を見合わす。

後藤「有名も何も…」
小平「忘れた?ついこの間テストに出ただろうに?」

   千里、下を向いてもじもじ。

小平「ほれ、19世紀フランスの」

払沢公民館・会議室

健司「フランス革命だ!!」
清水「その通り。」
岩井木「さぁ、分かったところで?」
西脇「もう一度。」
健司「は、又やんの?」 


   それぞれの場所でゲームを再開。


   (しばらくご) 
   負けて悔しがる四人。

麻衣「あーっ、又負けたぁ!!」

健司「くそぉーっ、負けたぁ!!」

磨子「うーっ!!えーいっ!!」

千里「んーうっ」

四人「えーいっ、もう一回っ!!」


フィレンツェ・大通りの路地
   一つの樽がある。その中に麻衣と千里。二人、腰と腰がスレあっている。


麻衣、千里「…?」
麻衣(何か真っ暗…?)
千里(ここって…何処だろう…?)
麻衣(何か窮屈…)
千里(何かに触れてる感じ…)

   二人、立ち上がって樽から顔を出す。

二人「はっ!!!」

   互いに顔を見合わせる。

二人「…。」

   千里はポッと紅くなる。

麻衣「あんた…小口君…。」
千里「麻衣ちゃん…?」
二人「どうしてここにいるんだぁ?」 


麻衣「へぇ、あんたもあおひげ大砲ゲームを?」
千里「麻衣ちゃんも?」
麻衣「ほ、ほれで何度やってもごろ敗けで…」


   そこへものすごい勢いで矢や大砲が飛んでくるっ。

麻衣「きゃぁっ!!」
千里「麻衣ちゃんっ!!」

   咄嗟に麻衣を庇うが恐怖にひきつり、震えている。

   二人、時を見計らって路地から出ようとする。

千里「あーっ!!」

   それからは絶え間なく。

千里「ママぁっ!!」

   泣き出してしゃがみこんでしまう。

麻衣「小口君!!怖いのはわかるけどこんなところで泣いていたら危ないに!!下手すりゃあんた死んじゃうに。こんなところで死ぬなんて私嫌っ!!」

   そこへ礼音聖二。

聖二「僕もさっ!!」
麻衣、千里「?」
聖二「さぁ、君たち僕に着いてきて!!僕、安全な場所しっているんだ。さぁ、早くっ!!」

   麻衣の手をとる。麻衣は千里の手をしっかりとって走り出す。

   走りながら

麻衣「ねぇ、あなたは?お名前は?」 
聖二「着いたら言うよ。今は黙ってついてきなっ!!」

   千里、未だ者繰り上げている。

聖二「君は、めそめそするなっ!!そんなんじゃあここで生き抜けないぞ。」


別の路地・樽の中
   健司と磨子が入っている。

健司「くっそぉ、窮屈だなぁ…何?」
磨子「何処よぉここ?」

   二人、顔を出す。

磨子「あんたっ!!」
健司「はぁ?」
磨子「健司じゃん。」
健司「磨子じゃんか!!」


   二人、大通りに出て歩き出す。

健司「ふーん、んじゃお前らもあのゲームやってたんだ。」
磨子「そうよ、あんたもなのね。…それにしても…ここ」
健司「一体何処なんだ?」
磨子「何かさっきのゲーム板と似たような町ね」
健司「あぁ、確かに…」


   町を何気なく歩いている。

健司「ところで俺たち今…どこに向かっているの?」
磨子「さぁ…ね。」


   (しばらくご)
   麻衣、千里、聖二、磨子、健司が落ち合う。

磨子、健司「あっ!!」
麻衣、千里「あっ!!」
 

ある家・一室
   五人がお茶を飲んでいる。

麻衣「で、ここは一体何処なの?」
千里「ねぇ、僕たちどうすれば帰れるの?」
健司「おいっ、なんとか言えよってかお前、大体誰なんだ!!」
磨子「夢の中?」
聖二「いや…」

   深刻そうに首を降る。

聖二「ここは16世紀イタリアのフィレンツェ…。」
麻衣「ふーん、」
磨子「16世紀イタリアのフィレンツェね…」
千里「なるほど…」
健司「なるほど?」

   四人、しばらく沈黙。

四人「はぁーっ!!!!?」
麻衣「嘘だらっ?なぁ嘘だら?」
磨子「きっと夢か何かよ…」
健司「夢ならいっそ殺された方がいいとか昔お袋が言ってた…」

   千里、理性を失って動揺。

千里「まさか僕ら…変えれなくなっちゃうんじゃないよねぇ?嫌だよ、そんなの僕…」

   再び泣き出す。

千里「ママぁーーーっ!!!あーんっ!!」

   麻衣、千里を慰める。

麻衣「でも、私たちどいで…」
聖二「君達…演劇部?」
麻衣「えぇ、ほーよ。でもどいでほれを?」
聖二「やっぱり…実は僕も演劇部なんだ。なかなか題材が決まらなくてさ…そんなときにたまたま何か、新発売のゲームのさ…」


   話し出す。四人もほうほうとききながら、其々の経緯も話している。

聖二「なら…僕と君達は、全く一緒って訳か…」  

   考える。

聖二「でも、ゲームで負けた僕らがどうしてここへ飛ばされたのかは全く分からない…僕は、君達よりも三年も早くここへ飛ばされてきたが、」
麻衣「三年も?」
聖二「あぁ…未だにどうしてここへ飛ばされたのか?帰る方法は何なのかが分からないまま…パリの町をずっと一人でさ迷っていた。そんなときに」

   フット笑う。

聖二「ここのご主人が見ず知らずの僕を拾ってくれたんだ。それからはずっとここに住んでるって訳。そうじゃなきゃこんな戦乱の世、僕は死んでたよ。」

   微笑んで見回す。

聖二「まぁ、ここにいりゃ一番安全だよ。君達も行く宛てないんだろ?だったら帰れるまでここにいろよ。」
麻衣「ほーね、ありがとう。」
磨子「ま、こんな貴重な経験、そうは出来ないと思って…今を受けれて楽しもうか?」
健司「おい磨子、お前考えが単純すぎるぞ!!もっと警戒しねぇーと!!」

   千里、しくしく泣いている。

健司「おいっ、お前は泣くなっ!!」
千里「だって、だって…」
聖二「仕方ないさ…男の僕だって未だに不安でとっても怖いんだもの…女の子には無理もないよ。彼女、とってもか弱そうだから君、もっと優しくしてやりな。おっと、」

   悪戯っぽく

聖二「忘れてた。僕の名前は礼音聖二、本年とって15歳さ!!」
千里「うるさいっ!!」

   泣きながら聖二を睨み付ける。

千里「僕は女の子なんかじゃないっ!!男だっ!!」
聖二「え、君男の子?」 

   少しキョトンとしているが

聖二「ごめんごめん、小さいし顔立ちかわいいからてっきり女の子かと思ったよ。ならほらっ!!」

   千里の肩を叩く

聖二「男の子ならそうめそめそなくなよ。もっと強く生きなくちゃ…この時代乗りきれないぞ。君名前は?」
千里「小口千里…」 

   つんっと泣きながらそっぽを向く。

健司「あ、俺健司っ!!岩波健司。」
麻衣「私は麻衣、柳平麻衣!!」
磨子「磨子です。田中磨子。宜しくな、聖二君。」
聖二「あぁ、麻衣に…健司、千里に磨子。こちらこそ宜しくな、仲良くやろ。そして、早く帰れるように、ここへ来た経路と、帰る糸口を見付けよう。」
麻衣「えぇっ。」
健司「四人なら百人引きだな?」

   磨子、吹き出す。

健司「な、何だよぉ…」
磨子「百人引きじゃなくて…百人力よ。」 

   健司、真っ赤になる。

健司「う、う、う、…うっせぇーよ!!」

   千里も涙を脱ぐってやっと微笑む。

千里「僕も、僕も。頼りないかもしれないけれど、みんなと協力します。帰れるかもしれないって聞けば少し希望も出てきた。」
健司「よーしっ。ほーと決まりゃあ、ほーは体験できねぇこの時代。たっぷりと満喫でも致しますか。」
磨子「そうね。」

   みんなのお腹がなる。麻衣、悪戯っぽく笑う。 

麻衣「とりあえず…少し安心したらお腹すいちまったな。何か食うか…いいに、今日は折角だで私がなんかを作る。聖二君、台所どこ?貸してもらえる?」
聖二「あ、台所?いいよ、あのねぇ…」

   麻衣を案内する。健司、磨子、千里、やっとこさ微笑んで内解け合ったように椅子に座ってお茶を飲みながら話をする。聖二も軈て戻ってきて加わる。麻衣は離れの台所でお給事の支度を始める。るんるんと笑って楽しそうな鼻唄混じり。






 


[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!