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石楠花物語中学生時代
貞節と女装

永延・休憩室
   一方の千里は自信もなくしたように座布団の上に体操座りをしながらペットボトルのレモンティーを飲んでいる。フーッと長いため息。

千里(こんな大役…本当に僕に出来るのか…こんな僕にちゃんと務まるのかな…)

   この間のおもらしが思い出される。と、青ざめてブルッと震える。

千里(あんなことがあった後じゃあ…とても自信なんてもてないよ…。パパ。助けて…僕どうしたらいいの?僕、いつでもとっても心配で、不安に刈られながら辛い毎日を送っているの…恐いんだ…又あんなことがあるんじゃないかって…凄く…。)

白樺高原・コスモス湖岸
   麻衣、磨子、健司、リータ。

麻衣「磨子ちゃん!!健司!!」
磨子、健司、リータ「よ、」
麻衣「はールかぶりね、みんな元気しとったか?」
磨子「勿論よ、」
健司「麻衣、お前も元気そうだな。」
麻衣「当たり前!!良かった、又みんなにあえて…」

   リータを見る。

麻衣「…誰?」
磨子「あ、彼女?彼女はリータ。今年から私のクラスに留学生として転入してきたの。イタリアからね。」
麻衣「へー…」
リータ「リータだよ。宜しくな。あんたの事は磨子から聞いた、麻衣だろ?」
麻衣「日本語喋れるの?」
リータ「留学来るに当り練習したんだ。」
麻衣「上手いわね…」
リータ「グラッヅェ!!」
健司「でも麻衣、聞いて驚いたよ…お前が今年のミスセルリンをやるんだってな。」
麻衣「早耳ね、」 
健司「ほいだって俺のお袋、婦人会だもん。やるからには、確りとグランプリ狙えよ。」
磨子「でもあんたは?どうするの?」
健司「どうするって?」
磨子「ブースはセルリーブースなんでしょ?で、あんたはセルリーの臭いをかむのもいや。」
健司「ほ、かんだら吐き気がしてくる…」
リータ「おいおい、そんなにセルリーを嫌うなよ…」
健司「ほいだってさ…あーあ、」

   草に寝転ぶ。

健司「何かいい方法ねぇーかなぁ?」
麻衣「どんな?」
健司「セルリー料理をぶち壊しにする方法さ。これは、俺の生命に関わる一大問題なんだぜ?」
磨子「そんな、ばかおっこーな。」

   健司、磨子を恨めしそうに睨む。

麻衣「ほいなら、」
健司「なんだ麻衣!!いい方法があるってんのかよ!!」
麻衣「臭いがするのが嫌だずら?」 
健司「ほー、ほいこん。」
麻衣「ほいだったら、自分が食べりゃいいんよ!!自分で食べてりゃ案外臭いは気にならないもんだに?」
健司「お前なぁ…俺の話ちゃんと聞いてたのかよ?俺は、セルリー自体が大嫌いで食べれねぇーんだ!!」
麻衣「何よ、」

   立ち上がる。 

麻衣「あんた、少しは好き嫌い克服する努力でもしたらどう?お母様もお気の毒よ!!可哀想よ!!第一、お野菜やらセルリーやらが大嫌いで食べれない?ほんなの」

   強く指差す。

麻衣「村に対して失礼だわ!!」
健司「んだよほれ、食えねーもんは食えねーんだよ!!」

   麻衣と健司、喧嘩状態。リータと磨子はクスクスと笑いを堪えている。


上川バイパス
   千里、後藤、小平、眞澄、真亜子

眞澄「ってわけ。だから、今年のかりん姫はチーちゃんがやることになったんだよ。」
後藤「ほー?」 

   ニヤニヤ

後藤「っつーこんは、何?お前女装か?」
千里「そうだよ…」

   俯いている。

千里「言っておくけど、僕がやりたくて、僕の趣味でやってる訳じゃないんだからね…」
小平「でも?一度女装したらお前、中毒んなったりしてな…」
 
   アル中のような演技

小平「スカートが履きたい!!あー、女の子になりたい…ってな。」
千里「やめろよ、そんなことないっ!!」 
後藤「でも俺は何か羨ましいな…」
千里「何がだよ?」
後藤「お前みたいな可愛いかおなら女装したところでへー女にしか見えんからさ、堂々と女子トイレに入れるじゃん。」
千里「それが一番の苦痛なんだよ!!」
小平「何で、いいじゃん?だって普段は絶対にはいれない女子トイレに入れるんだぜ?」
千里「だって僕は男だよ?男なのに女子トイレに入るだなんて…男じゃなくなったみたいで、すごく嫌なんだよ。」
真亜子「当たり前よ、女装してるときなんて男捨ててるようなもんだもん。てか、あんたの場合、もう普段から男捨ててるようなもんだけど?」

   千里、真亜子に食って掛かろうとする。

千里「個室で用を足すなんて…屈辱的だ…」

   泣きそうになる。

千里「だって酷いんだよ…温泉に行ったって、証拠見せるまでは女子学生と間違われて…叔父さんからは嫌らしい目で見られるわ、変態扱いされるわで…」
後藤「そこまでか…」
小平「凄いな…お前…」
眞澄「てか、チーちゃん本当は…」
千里「僕は男だっ!!」

   全員を睨み付ける。

千里「でも…引き受けたからには、これだけはきちんと最後までやらなくちゃね…。これも麻衣ちゃんと、永延、須山さんやおばさんたちの為なんだ…。だから頼む!!」

   嘆願。

千里「みんな、僕が源チサだって言うことは絶対に言うなよ!!終わるまではどうか黙っててくれ!!」

   全員、顔を見合わせる。千里、腕時計を見る。

千里「マズイッ、もうお家に帰らないと…又ママたちに叱られる…みんなじゃあね…」

   帰っていく。

眞澄「チーちゃんも、毎日毎日大変ね。」
真亜子「気の毒って感じ…お家に縛られてて…」
後藤「でもあいつ今、源チサっつったな。」
小平「そういう名前でやってんのか…」
後藤「実は以外にもやる気ノリノリだったりして?」

   全員、ニヤリ。

小口家・千里の部屋 
   千里一人。机に向かって必死こいて勉強をしている。

千里(忘れろ…忘れろ…勉強に集中しよう…。)

   チラリとハンガーを見る。女性用ダンスドレスがかかっている。が、中学の制服で隠されている。

千里(はぁ…何やってるんだろ、僕って…バカだ…でもとにかく、ママと叔母さんだけには見つからないようにしなくっちゃ…又叱られるよ…。)

   震える。

千里「んーっ、トイレっ!!」

   立ち上がって急いで部屋を出ていく。

   千里がトイレに入ると、千里の部屋に珠子と夕子が入ってくる。 

珠子「そうなのよ、最近のせんちゃんを見ているとどうも何かを私に隠しているみたいなの…」
夕子「そうかい?でもあの子が隠しているっていったら、私には大体見当がつくね。点数の低い答案用紙か、又、おもらしして私たちにはいえなんでるかねぇ?」

   二人、千里の部屋をがさごそ。中学の制服が落ちる。ドレスが剥き出しになる。

珠子、夕子「っ!??」

   夕子、ドレスを手に取る。

夕子「これは一体、何なんだい?」
珠子「私のものではないわ…」
夕子「千里だね…あの子、こんなもんを隠し持って…一体何しようとしてたんだ!!何て子だ!!」
珠子「全くだわ!!」

   千里がトイレから出て戻ってくる。

千里「?」
珠子「せんちゃんっ!!」

   ドレスを見せる。

珠子「これは何ですっ!?」
千里「そ、そ、そ、…それはぁ、ですねぇ…」
夕子「こっちへおいでっ!!」

   千里の耳を引っ張って連れていく。

同・奥間
   千里、珠子と夕子の前の座蒲団に正座をしている。

珠子「あなたって子は!!こんなものを隠し持って一体何をしていたの!!」
夕子「あんたは父さんに似てもっと真面目な子かと思ったけど、私ゃ見損なったよ!!」
珠子「もうこんなことは決してしないでちょうだい!!これはママが処分しますっ!!」
千里「ダメだよっ!!お願い、捨てないで!」
夕子「千里、あんたって子は!この期に及んで未だやる気かい?懲りない子だねぇ!!未だ怒られたいのかい?」
千里「違うよ、違うんだってば!!僕の話もちゃんと聞いてくれよ。」
夕子「あぁ、なら聞いてやろうじゃないか。何なんだい?」
千里「そのドレスは…僕のじゃないんだ…」
珠子「じゃあ誰のなの?」
千里「それ…はぁ…麻衣ちゃん…」
夕子「千里っ!!!!!」

   千里、泣きそうになりながら話し出す。


千里「って訳なんだ…麻衣ちゃんと、永延、須山さんやおばさんの為なんだよ!だから頼むよ、この期間だけ…勿論終わったら、こんなことはしないからさ…やらせてくださいっ!!お願いします!!引き受けたからには僕、しっかり最後までやらなくちゃね…ね、そうだろ?いつもママも叔母さんも言っているよね?一度決めたこと、引き受けたことは最後まで何があってもやり遂げなくてはいけない…途中で逃げたり投げ出してはいけないって…」

   千里、涙をためながら真剣な瞳で二人を奥深くまで見つめる。
 




    





 
   


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あきゅろす。
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