石楠花物語小学校時代 流行り病 同・トイレ 千里が用を足す。近くに佐久間先生。 佐久間先生「全部もれちゃう前で良かったわね。でも、ズボンとパンツはびしょびしょだから替えないとね。」 千里、まだ泣いている。 佐久間先生「もう泣かなくていいの。トイレ行きたくなったら授業中も先生に言っていいのよ?どうして言わなかったの?恥ずかしかったの?」 千里、先生に顔を埋める。佐久間先生、千里を抱き上げるとそのままトイレを出る。 同・帰り道 肩を落としてうつ向く千里。清原、園原。 清原「元気出しなよ千里君…大丈夫だよ。」 園原「そうだよ。仕方ないよ、我慢できなかったんだよね…」 千里「…。」 園原「まだ僕ら小学生だもん、そういう事だってあるよ、大人だって時々おもらししちゃうことがあるって言ってたよ。」 清原「僕のパパだ。」 園原「本当に?」 清原「うん、お酒飲んで帰ってくると、いつもお家でおもらししちゃってママに怒られてるよ。」 千里、やっと笑う。 千里「僕のパパはそんな事ないよ。」 清原「あ、千里君、やっと笑ってくれた!!」 園原「良かった!!ねぇ、この後君の家に遊びに言っていい?」 千里「勿論、いいよ。遊びに来てよ。」 園原、清原「うんっ!!」 園原「じゃあね、」 清原「また後でねぇ、」 千里「うん!!」 其々に別れる。 千里、一人で歩いていく。 千里「?」 背中や腰を動かして頭をかしげるがるんるんと歩いている。 小口家・千里の部屋 暫く後、千里、園原、清原、遊んでいる。 千里「あまのはらぁ〜ふりさけみればかすがなるぅ〜みかさのやまにいでしつきかもぉ〜、みかさのやまにいでしつきかもぉ〜」 園原「はいっ!!」 清原「千里君上手いっ!!」 千里「え?」 園原「その百人一首の読み方だよ、何処で覚えたの?誰に教えて貰ったの?」 千里「いやぁ、あのぉ、そのぉ…」 照れて笑う。 千里「いやはや…」 三人、おやつを食べながら漫画や雑誌を読んでわいわい。 (夕方五時) 園原、清原、帰っていく。三人、手を振りながら玄関で別れる。 千里、何となく怠そう顔で体中を時々手で揉んでいる。 同・台所 夕食時。 珠子「ねぇせんちゃん、今日は何となくあなた変ねぇ…どうかしたの?何かあった?」 小口「学校でのおもらしがショックだったんだろう…。千里はこう言う繊細でナイーブな男の子だからさ、な、千里…」 千里の肩を叩く。 小口「そんなに気にしなくてもいいぞ。パパだってよくお前くらいの頃、いや、お前よりももっと大きかったかな?相当大っきくなるまで学校でおもらししてたぞ。」 千里「パパ…」 食事は半分以上残っている。 千里「何か僕、さっきから背中や腰が痛いんだよ、みがいってるようなぁ…」 小口「何かみがいるような運動でもしたか?」 千里「いや、特に何も…ご馳走さま…」 部屋を出ていく。 珠子「あら、千里?せんちゃん?せんちゃんっ!!」 食べ残しを見る。 珠子「まぁ、半分もご飯食べてないじゃないの、一体どうしたって言うの?」 心配そう 珠子「いつものせんちゃんらしくないわ、ねぇあなた。」 小口「あぁ、そうだな。」 同・千里の部屋 千里、気をまぎらわすようにピアノを弾いている。 (21時) 千里、ピアノをやめて部屋のドアを開ける。 千里「ママ、ママぁ?」 しーん。 千里「ママ、ママってば、もう寝ちゃったの?」 珠子が別部屋から顔を出す。 珠子「どうしたのこんな時間に、頼ちゃんが起きちゃうでしょ?あなたも早くお眠りなさい。明日も学校なんですから!!」 千里「ママ、ちょっと僕のお部屋に来てよ!ちょっとでいいんだよ?」 珠子「んもぉ、何?どうしたの?」 千里の元へやって来る。 珠子、千里。千里、ベッドに座って胸を押さえている。 珠子「どうしたのせんちゃん?」 額に手を当てる。 珠子「ん、ちょっとお熱があるかしら?待ってね。」 体温計を持ってくる。 珠子「お熱計りましょうか?」 体温計を千里の口に入れる。メモリがどんどんと上がる。 千里、体温計を加えながら 千里「ママ…」 その場で吐いてしまう。 珠子「まぁっ、せんちゃん!!大変!!」 背を擦る。 珠子「大丈夫?気持ち悪かったの?」 洋服を脱がす。 珠子「ほら、お洋服脱いで着替えないとね、汚れちゃったね。口濯ぐか?」 千里を着替えさせたりしてどたばた。 布団に横にならす。 珠子「落ち着いたわね、良かった…」 千里「ママ…ここにいて、」 珠子「分かったわ、ずっとここにいてあげる。」 千里、うとうとしだす。珠子、千里の体を優しく叩く。 (10時) 千里が飛び起きる。 珠子「せんちゃん、どうしたの?又気持ち悪い?」 千里、再び吐いてしまう。吐いては収まり吐いては収まりの、暫くはこの繰り返し。珠子も千里と共に泣きそうになっている。 そこへ小口 小口「珠子、どうしたんだ?千里っ!!」 千里、ベッドにぐったり。 珠子「さっきからずっと吐き気が止まらないの。お熱もあるみたいで…」 小口「そうかぁ…」 千里の脈拍を図ったり額に手を当てたりしている。 小口「インフルエンザかもな…この間人混みに出たりしたから…。体が痛かったり食欲がなかったのもこのせいだったんだな…。」 千里、寝入る。 小口「やっと落ち着いたか…」 千里の背や肩を優しく揉んでいる。 小口「珠子、お前は寝てていいよ、私も起きてここで千里の側についているよ。」 珠子「私も勿論起きているわ。だってせんちゃんが可哀想ですもの。」 (2時) 小口、珠子もうとうと。千里が目覚めて起き上がる。 千里「ううっぷ…」 再び吐き気が始まってしまう。 小口「又気持ち悪いか…」 千里の背を擦る。 小口「暫く気持ちよくぐっすり寝てただになぁ。」 珠子「せんちゃん、わざわざ向こうにお口濯ぎに行くの気持ち悪いからママここにボール持ってくるわね。」 小口「千里、お茶いるか?」 珠子「今はダメよ、又吐いちゃうわ。」 ささらほうさら。千里、苦しさに半泣き。 (夜中4時) 千里、珠子、小口、やっと落ち着いて同じベッドで三人、川の字で寝入っている。 (翌朝) 千里がうっすら目を覚ます。 珠子「せんちゃん、おはよう。起きた?」 千里「ママ…」 珠子「昨日はビックリしたねぇ。何か食べれる?」 千里「今何時…?」 珠子「8時よ…でも今日は学校…」 千里「ダメ、ママとの約束だもん…顔だけは出しに行かなくちゃ…」 小口「千里、こんな時はいいんだよ、なぁ珠子。」 珠子「そうよ、せんちゃん。無理しちゃダメ。」 千里、強く首を降る。 珠子「休みなさいっ!!」 千里「嫌だっ!!」 珠子「聞き分けのない子ね…分かりました…では少し、本当に顔を出すだけですよ。」 京都市内小学校・教室前の廊下 珠子とぐたーっとした千里。佐久間先生。 珠子「という訳なんです、」 佐久間先生「そうですか…千里君、そんな君の辛いときに無理して来なくていいのよ。」 千里「ううっぷ…」 佐久間先生、珠子、千里の背を擦る。 佐久間先生「いいですからお母さん、早く帰って休ませてあげてください。」 珠子「分かりました、ありがとうございました…」 佐久間先生「はい、こちらこそ…わざわざありがとうございました…お気を付けて、お大事に。」 珠子「ほらせんちゃん、行くわよ、お家に帰りましょう…」 千里「うん、ママ…ありがとう…」 珠子「バカね、具合悪くて辛いのはあなたなのに、わざわざ来なくてもいいのよ、先生も仰っていたでしょ。」 珠子、千里をおぶって廊下を帰っていく。 [*前へ][次へ#] |