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08
そこまで読んで、不意に頬を伝うモノの温かさを感じて、私は手を頬に持っていってみた。
そしたら何故か湿っているし、何故だか目の前の文字が歪んで見えてた。


あれ?これって涙っていうものじゃなかったっけ?

というか、なんなんだこいつは?
速見は…馬鹿だったのか?


こんな言葉ばかり並べるために、こんな当てずっぽうな事を伝えるために、手紙をよこした?
当たっ当たってるわけー…


「−−−−−…ば、か やろぅー…」


そう言うのが精一杯の自分が、その部屋にはいた。


本当は、ずっと言いたいことも 思ってたこともたくさんあったよ…
悲しいときは泣きたかったし、面白いときは笑いたかった。

この世には、今 世界にある言葉では、表現出来ないモノが多すぎるような気がするなんて考えてた事とかをー…


鳴り止まない風の音、モノとモノがぶつかり合って作られた音だとか、人とすれ違った時に感じる雰囲気とか、見えた光の届く先とか。


今日も、グランドでひしめき合う人達を見て感じてた。

サッカー部の人達が蹴ったボールは、まるで空に帰りたがってる鳥のように何度も宙を舞い、野球部がスライディングした時に飛び散る砂は、まるで虹を描き損ねた空の色みたいで。
陸上部が奏でるピストルの音と、そこから漏れる白い煙は、まるで雲がそこから作られていくようだ…
とか。

なんだよ。絶対変じゃんー…
みんなと違う私は変でしょ?

だから言わないでいた。
無関心でいる事、それが一番いいことだと思ってたんだ。

どうしてアンタが、知ってんの?


私は涙を拭ってから、再び手紙に視線を戻した。


“で、俺がもう一つ言い忘れてた事思い出した。
俺さ、椿の事 好き。

だからさ、今度は俺だけ想ってよ。
他は何も考えないでいいから。
俺がいなくなって寂しいって想ってみてよ。”


はっきり分かった。やっぱりコイツは馬鹿だ。
何どさくさにまぎれて簡単に告白してるんだ?

話しの脈絡も全然なくって

だけど、だけどね…この目から落ちる雨みたいなモノは、どうやらアンタを想って降ってるみたいなんだー…


「ど…うして、手紙なのっ!!」



 



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