06
クラブに行く人は廊下を走りぬけ、静かにならない廊下に響く声。
私は生返事をして、さっさと靴箱へと足を運んだ。
後ろから聞こえてきた『本当よく分からない奴だなぁ』という言葉は空耳だという事にした。
靴箱から取り出した靴を地面に落とすと、さっさと靴を履き替えて外へと歩き出す。
グランドにはクラブをしている人達がひしめき合っていた。
私は何も見ない振りをして、足早に家を目指す。
夕暮れが妙に、私を取り囲む。
進路調査。こんな十代で人生を決めないといけないこの世の中は、私にとって理解出来るモノではなかった。
というよりも私には何もないから。
ね?やっぱり私には何もなかったんだよー…
「ただいま」
今は誰もいない空間に小さくそう呟いて私は自分の家の中へと入っていった。
鞄も全て玄関に放り出して、自分の部屋へと足を進める。
そしたら朝にはなかったモノが部屋の机の上においてあるのが目に入った。
たぶん私よりも後に仕事に行った母親が、ポストに入っていた私宛のものだからと置いていったのだろう。
どっかの塾の勧誘か、さては何かの会員カードのお知らせとか…
そう思いながらも私はその青い封筒を手に取る。
「ー…は やみ?」
そして驚いた。
そこには確かにその名前が書いてあった。
さすがに驚きもするだろう。
だって連絡を取り合ったこともなければ、住所を教えた記憶もない。
いや、記憶が抜け落ちているだけだ、と言われればそんな事もないような気もしてくるが…
簡単にシールで止められていただけの封を開けて、私はベッドの上に座り込みながら中を確認する。
けれど中ら出てきたのは一枚の手紙だけ。
「切手代、もったいないー…」
本当にそう思ったから、そう呟いた後で手紙の文字に目をおとした。
綺麗とはさほど遠い字がそこにはあった。
男の子独特のサイズが疎ら(まばら)な文字の羅列。
まぁそこは置いといて、と私は読み出した。
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