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pkmnss
初めての、体験


「くは、はは・・ごめ、」


「・・・・・・・。」




目尻に涙を浮かべながら必死で言葉をつづろうとするがまったく意味が通じない相手を顔を真っ赤にしてプルプルふるえるNは凝視する。

他にできることがないからだ。



「ごめ、ごめん・・っは、」


「・・・・・・。」


「は、はぁは、っく・・ははははは」


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ」






とうとう耳まで沸騰するように熱を持たせて立ち上がったNは叫ぶ。

笑うな!!と。





しばしの沈黙。

口をへの字に結んだ緑の髪の少年の顔と今日二度目のぽかんと口を開けた茶色の髪の顔が向かい合う。

先に口を開いたのは茶色の髪の方。





「・・ごめん。」


「あ、え、えと・・・はい?」


「・・なぜ疑問系?」


「・・なんとなく?」





なんでだろ?また沈黙。









――――プッ。









それはどちかの口から発せられたものか。

一拍置き、二人は心おきなく笑いあった。




「ふふふふ・・くふふふ。」


「ツは・・はははははは。」






――あははははは!


観覧車内に楽しげな笑い声が響き、

その笑っているトレーナーのボールまでがかたかたと笑うように揺れる。








ひときしり笑った後、

ふと茶色の髪のトレーナーが言った。





「・・ねぇN」


「?」


「ポケモン交換、しない?」






にこり、と

え?という顔のNに微笑み、

腰に付けたボールの1つをかちりと取り出す。




入っているのは自分がこのトレーナーと最後に戦った時の、

このトレーナー自身がその場で捕まえ、扱ったポケモン。






――伝説のポケモン、だった。









呆然としているNを知ってか知らずか、

ニコニコしながら続けるトレーナーとその手に乗った伝説のポケモン。




「Nのことをよく知っているポケモンと、こっちのことをよく知ってるポケモンを交換する。

そうして相手の事をもっとよく知る。

――ポケモン交換って、そういった意味合いがあるんだ。」





――分かった?


そう言いたげにNを見る伝説のドラゴンとそのトレーナー。


ついでにNがぼーっとしていれば、

がったがったと自分の体全体で何かをアピールし出すもう一体の伝説のドラゴン。




「そっちの意見も一致?じゃあはい、N。かわいがってあげてね。」




そう言って、伝説の龍に対する扱いかそれはと言いたくなる気軽さで

Nの空いている手のひらにそのボールを乗っける。


有無を言わさぬ言い方でもなんでもなかったが

その流れに乗せられてNはもう片方の手からボールを離す。





ぽすん、と

茶色の髪のトレーナーの手のひらにそれが落ちる。






「はじめまして――とはちょっと違うけど、これからよろしく。」






そうして新しい仲間に茶色の髪のトレーナーがにこっと微笑みかけた頃、Nはやっと我に返る。





「えっあの・・」


「N、次会ったらまた交換するから。」






その言葉につまるN。

いや。それよりも。



(次、また、交換。)



(ポケモン・・交換。)



この感情は、喜び。

ワクワクと楽しみを感じるこれは。






目に前にすわる人間は。



(次、また、会ってくれる気があるってこと?

会いたいって、言っている?)



――僕に。









「Nー?」


「あっ・・・えっと」



ひとつうろうろと目を泳がせ、




「・・・うん。」



Nは、笑った。












(誰かと笑いあうのも、)

(誰かとポケモン交換するのも、)

(誰かと“次”の約束をするのも、)

(誰かに自分が笑いかけるのも。)












どうしてこんなふうになったんだろう。

今まではどちらかと言えば僕が勝手に喋って勝手に聞かせていただけな関係だったのに。



きっとこの子の言葉にはちからがあるんだ。

そうに違いない。



(こんなに嬉しいなんて)











−−−−−−



(ところでなんで観覧車に?)

(ああこれ乗りたかったけど二人乗りだから乗れなくって。)

(・・・・)

(たまに近くにいた人と乗ることもあるけど)




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あきゅろす。
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