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pkmnss
無言の観覧車



☆BW。ひとつ前の続き。







かたん、かたん、と振動する音が規則的に体を揺らす。

ライモンシティの遊園地、観覧車の一席で

緑の髪の少年と、もう一人茶色の髪が向き合って座っていた。



「・・・・」

「・・・・」



お互いにまったく無言。


『いたたまれない空気』と言うのはきっといや絶対こういう状況の事を指すんだろうなと

人とのコミュニケーションスキル所持数ほぼゼロなNはごちゃごちゃごちゃと頭の中でスクロールする。



二人は観覧車という娯楽道具に身を預けているはずなんだが

お互いまったく無言で目すら合わせられないのではまったくもって楽しいわけが無い。


視線はうろうろと髪だったり爪だったりに向かうが

(とくにNは『観覧車から見る景色』というものにはそれを向かわせることを忘れていた。)

最終的には頭ごと目線は両手をのせた膝に落とされ、そこから動かなくなった。




Nは思う。なんでこうなった、と。





再会したのは何を隠そう手持ちでありトモダチである伝説のドラゴンポケモンが片割れに会いたいとひっきりなしに騒いでいるため

それはいけないともう一体のドラゴンポケモン――正確にはそのポケモンを所持しているトレーナーを探し始めたのが元だったはず。



とはいえイッシュは広い。

しかもNはもともと人と話す機会が壊滅的だったため人づてに探すこともなかなか上手くいかない。

二体の龍はお互いの存在を感知できるらしいというステキスキルを頼りに探そうともした。

とりあえずこのドラゴンの指し示す、方向を頼りに各地を回ってみたが

それはどうもお互いの距離が一定でないといけないとかややこしいものだったらしくようはただのカンであり結局挫折。



そこでNはそのトレーナーの行きそうな場所を探してみることにした。

初めて出会ったカラクサタウン、実家がカノコタウンと聞いたのでそこへも行ってみた。

バトルが強いという観点からポケモンリーグに行ってみたりもした。




――しかしどうにもならなくて諦めようかと思ったときに思わぬ偶然は起こるものだ。


現に今こうして、Nは目的の探し人の目の前に座っている。


(・・・・)


(・・・・)


しかし言葉が1つも出てこないのでは何の意味も無い。





――まったく無言の今の状況を作ったのはどっちだろう。




Nは考える。


再会した瞬間、押さえが効かずに二体のドラゴンが飛び出した。

そこまでは良かった。自分のトモダチも嬉しそうだった。実際大変嬉しがっていた。



ブオォォォーー、と

とんでもない音量の突風が自分達を吹き飛ばすかと思ったが

それについては二体の龍は配慮をしてくれたらしい。

絶妙な角度と力加減で二体は飛び立ち、木の葉と少量の砂埃を飛ばした他は人体にも自然にも起こらなかった。


そこまでは良かったはずだ。




――でもなんでその後、自分達二人は遊園地に来て観覧車に乗ってるんだろう。




存分に空中散歩を楽しんできたドラゴン二体をボールに戻した二人はライモンシティに向かった。

というよりはさっさと歩き出した相手をNが(ええ!?どこいっちゃうのていうか無視ですかちょっとまってええー)

・・と、慌てて追いかけてみたらここに行き着いた、というところだった。





てくてくと行き着いた遊園地の観覧車。

それに乗り込もうとするもんだからどうしようと思ったら「乗らないの?」と言われてふらふらと流されるように乗り込んでしまったのだ。


今や早く観覧車の運転が終了しないかと必死に願うばかりだ。

Nは人生で初めて時間が早く過ぎてしまえばいいのにと考えた。





「・・・ねえ」




ふいにNの正面のトレーナーが口を開き、





ふぇっ!?




といったとんでもなく跳ね上がった声が観覧車の個室に響く。



「・・・・・」


「・・・・・」




顔を見合わせた一秒後、何だ今の声僕の声ええぇ嘘なんでこんな声なにこれ――と手をワタワタさせ顔を真っ赤にしたり青くしたりで忙しい緑の髪の少年が一人。

そしてそれをぽかんと口を半開きにして眺める茶色の髪の姿。




どうしてここまで慌てているのかがN自身でも分かっていなかった。

一体何が原因なのだ落ち着け落ち着け落ち着けないうわわこの公式は世界を救う公式よりも難しいかも――


そんなとき、



「――ククッ」



震える声が、今度は響いた。

笑いで震える声が。



「・・・・??・・?」


「ク――ッククク、クク、クは、あ、あはは、は。ははははは。あははははははははは、あっはぁ!」



ヒーヒーお腹を抱えて笑う相手を見、Nの顔がみるみるうちに真っ赤になる。



「N――が。Nが、『ふぇっ!?』、って、ふぇ、あは、あはははは!」



目に涙を浮かべるぐらいに笑ってるこいつはとんでもなく楽しそうだ。

Nは恥ずかしい、と頭の中がとんでもなくぐちゃぐちゃだが。


目の前で大爆笑なんて事をされた経験が無いNはなんていえばいいのか分からない。







_____________


⇒続きます。

だらだら打ってたら思いのほか長くなった



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