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再会
☆BW。エンディング後。
どこかの山奥。人気はまったく皆無の静かな場所。
そこに立つ緑の髪の少年。
彼の名前はN。
ある伝説のドラゴンポケモンに認められ、【英雄】と呼ばれた少年だった。
だった、と過去形で表されるのは、
この少年がもう一体のドラゴンを従えたもう一人の【英雄】に敗れたことが理由。
彼自身が今の自分は【英雄】ではないとも改めてもいた。
そんな少年、Nは手元を見る。
赤いボールに入った、伝説のドラゴンを。
「・・・いくよ。」
友達に呼びかけるようにその名を呼び、ボールのボタンを押して投げる。
――ボム!!
音と煙と共にNの何倍もの大きさのあるドラゴンが現れる。
ドラゴンは一声鳴くと同時に飛び上がり、Nを背に乗せて飛び立った。
「・・・あれ?」
ふと、空を仰ぎ見るのは、もう一人の【英雄】にして真の【英雄】であるトレーナー。
色素の薄いめの茶色の髪を帽子からのぞかせる。
英雄だなんだとたたえらたりもしたがそれもすでに過去の事。
大体それを知るのは少数の関係者であり、
その上にその英雄自身が【英雄】の敵となる【悪党】を取り逃がしていてはそんなもんなんになる、
と主張したのでほとんどの人には知られていない。
今ではその英雄はちりじりに逃げていったプラズマ団・七賢人つまりは【悪党】の残党どもを
こっそり極秘に国際警察と協力して共にふん捕まえふんじまりというなんとも地味な立ち位置だ。
暇ではないので不服ではないと自分は言うがそんなので終わるわけが無いだろうと言われるのは落ち着かない。
――たしかに、後片付けのみが自分の目的ではないのだろうけれど。
そんな事を考えながら街から離れる【英雄】、茶色い髪のトレーナー。
ざっざと足を進める様子には迷いのような不安定さは無い。
目的地があるわけでもないはずだが、どんどんと人気の無い場所へ、奥へ奥へと進む。
さわさわ、と風が髪を靡かせる。
――なんだ?
もう一度、青い空を目を皿のようにして見渡す。
視界の端に、ちらりと何かが写る。
――あ。やっぱり。
どうりで、と頭を振って腰に手をやる。
かたかたと小刻みに揺れる赤いボールを手に持ち、
目線の高さへ移動すればなにやらわくわくそわそわしている伝説のドラゴンポケモンが一匹。
いまや一介の一トレーナーの手持ちとなったなんか微妙に挙動不審な伝説のドラゴンは
トレーナーの意思からいつもその手元に収まっていたがさすがに街中で披露されずにいた。
彼(彼女?)が欲求不満で暴れることは無かったがバトルがやりたいと始終伝えてきているのは目にも明らか。
プラズマ団と戦うときぐらいしかトレーナー戦では登場させず、
その辺の人気の無い草むらや水中でのバトルではそりゃ暴れ足りないだろう。
そして、この一人の英雄が後片付けと平行して進めていきたかったことはそれと関係している。
――それは。
ブォォォッ!!
風が暴れ、木の葉やそこらの水辺や水溜りの水が吹っ飛ぶ。
両腕を顔をかばうようにかまえてそれをやり過ごし、茶色の髪を撫で付け、そしてその目に映るは手にあるそれとは対の、そして同一のドラゴン。
そしてその背に乗るは――緑の髪の少年、N。
リーグでの別れ以来、城から飛び去っていった姿と同じままの姿。
――そう。
――その目的は――彼に、会うこと。
茶色の髪に嬲られて隠れた顔の、目と口の端が笑う。
こらえ切れなくなったのか、その手のボールからもう一体のドラゴンが飛び出す。
会いたかった。そんな表情だ。
真実と理想。
二体のドラゴン。
二人の英雄は、言う。
『久しぶり』
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2人の龍も英雄も、お互いに引かれあっているのだから。
どうしたってもう一度会いたくなる。
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