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康子「・・・どうして私たち、黙っていなきゃならないの?町の人からじろじろ見られて。」

「まだマシよ。たいがい目をそらされる。見ないふりされる。」

「屈辱だよね」



「この制服がヤバイんだ!」

「そう、破いて捨てたくなる」


由紀「――はい、制服についてはぜひ言いたいことがあります」


栄作「テープとっていいか?」

由紀「・・・うん。」





由紀「中学時代はこの学校、馬鹿にしてた。制服も。園児のネクタイみれば、へえ、あのひと花房学園?」

「バカのいく学校――」

由紀「そう。軽蔑してた。」

「ところが?」

由紀「ところが私は県立に落ちて、この学校に入った――泣いた。行かない方がマシだってけど、小学校の弟に、学園だっていいじゃんっていわれた」

「いい弟じゃん」

由紀「それで・・・気を取り直して入学した。成績だけじゃない、って言い聞かせて――でも、このネクタイはどうしてこんな目立つ色をしているの?せめて黒とか紺なら・・・」

「エンジは悲しい色、落ちこぼれの色。馬鹿ですってね」

由紀「変な癖がついた。胸を押さえつけて登校して――帰りにはこっそり外して。」

「それ、わたしも」

「俺なんか、バッチの上にガムテ貼って隠す」


「制服を変えればいいのよ」

「変えたところでおなじ。中身がかわならなきゃどうしようも」


由紀「中身を変えるべきだと思います」


「どうやって――」


由紀「まず校内暴力をなくす。まじめに勉強したら馬鹿にされるってつっぱってる人がいる。おかしいと思う。このネクタイを馬鹿にされない学校に変えるべきだと思います。――以上です。」





「・・・由紀は大学受けるんだろ?」

由紀「うん」

「合格しろよ。そうすれば出身校は消えるから」

「俺なんかダメ。死ぬまで花房学園がこびりつく」

「おまえはやっと補欠で引っかかったじゃん」

「ばらすな」







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