♪
4
康子「・・・どうして私たち、黙っていなきゃならないの?町の人からじろじろ見られて。」
「まだマシよ。たいがい目をそらされる。見ないふりされる。」
「屈辱だよね」
「この制服がヤバイんだ!」
「そう、破いて捨てたくなる」
由紀「――はい、制服についてはぜひ言いたいことがあります」
栄作「テープとっていいか?」
由紀「・・・うん。」
由紀「中学時代はこの学校、馬鹿にしてた。制服も。園児のネクタイみれば、へえ、あのひと花房学園?」
「バカのいく学校――」
由紀「そう。軽蔑してた。」
「ところが?」
由紀「ところが私は県立に落ちて、この学校に入った――泣いた。行かない方がマシだってけど、小学校の弟に、学園だっていいじゃんっていわれた」
「いい弟じゃん」
由紀「それで・・・気を取り直して入学した。成績だけじゃない、って言い聞かせて――でも、このネクタイはどうしてこんな目立つ色をしているの?せめて黒とか紺なら・・・」
「エンジは悲しい色、落ちこぼれの色。馬鹿ですってね」
由紀「変な癖がついた。胸を押さえつけて登校して――帰りにはこっそり外して。」
「それ、わたしも」
「俺なんか、バッチの上にガムテ貼って隠す」
「制服を変えればいいのよ」
「変えたところでおなじ。中身がかわならなきゃどうしようも」
由紀「中身を変えるべきだと思います」
「どうやって――」
由紀「まず校内暴力をなくす。まじめに勉強したら馬鹿にされるってつっぱってる人がいる。おかしいと思う。このネクタイを馬鹿にされない学校に変えるべきだと思います。――以上です。」
「・・・由紀は大学受けるんだろ?」
由紀「うん」
「合格しろよ。そうすれば出身校は消えるから」
「俺なんかダメ。死ぬまで花房学園がこびりつく」
「おまえはやっと補欠で引っかかったじゃん」
「ばらすな」
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!