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Freedomwing〜神モノガタリ〜
遺言(4)
 宿に着いた。キラが借りている部屋に通してもらう。
 こぢんまりとした一室。綺麗に整頓されており、塵ひとつない。
「今日は疲れただろう?」
窓を少し開け、外を眺めていたキラが、剣を抱えて床に座り込んでいるライラに声をかける。
「あ…うん…。」
「ライラも色々大変だよね。剣神とか、敵討ちとか…。まあ、気楽にいけばいいと思うよ。」
そう言いながら、ライラのそばに布団を敷き、休む準備をしてくれるキラ。
 旅の疲れを考えて、気遣ってくれているのだ。
「お風呂…、シャワーだけだけど。入りたかったら、どうぞ。替えの服は宿屋にあるから。」
お言葉に甘えて、ライラは部屋の隅に備え付けられたシャワールームに入った。
 確かにシャワーしかない。だが、疲れている体にはそんなことはどうでもよかった。汗を早く洗い流したかった。そして、心に浮かぶ父の背中も…。
 ザーッと、お湯が音を立てて流れる。ライラはその音を聞きながら目を閉じた。
 キュッと栓を閉め、脱衣場に入る。雫が伝う体をタオルで拭き、髪を乾かしながら、脱衣場の棚に置かれてある着替えを手に取り、それに着替える。
 元々着ていた服は丁寧に畳み、部屋に持って帰った。
「眠たそうだね。」
「うん…。」
とろんとした目を擦りながら、ライラはあくびをする。
 敷かれた布団に潜り込み、体を丸めたライラ。
 キラは優しい眼差しで、そんなライラを見つめ、電気を消した。

 ライラは気がつくと真っ暗闇の中にひとり佇んでいた。
 ここがどこなのかさっぱり検討がつかない。真っ暗で何も見えない。見渡す限り闇だ。
「うっ…。く…苦し…い。」
息がしづらい。このままでは窒息してしまう、と感じた時、聞き慣れない女性の高笑いが頭に響いた。
 首が絞められているように痛い。いや、本当に絞められている?
 さらに相手が力を込めたようだ。いよいよ息が出来なくなってきた。
 殺される…。嫌だ…。死にたくない…。やめろ…!
 すうっと、意識が闇の中へ引きずり込まれていく。女性の高笑いがずっと頭の中で響いている。
 ああ…、誰か…助けて…!!

 深くて暗い、海の底のようなところから、意識が浮上する。誰かがライラの名を呼んでいる。
「ライラ、起きて…。」
キラの声に意識を呼び覚ましたライラは目をうっすらと開けた。眩しい、朝の日差し。
 徐々に目を開けていく。キラがそばに座っていた。心配そうな顔で、こちらを覗き込んでいる。
「あ…。起きたみたいだね。大丈夫?すごくうなされていたけど…。悪い夢でも見たの?」
「…ん。まあ…。」
ライラは言葉を濁すと立ち上がり、
「俺、着替えてくるね。」
「ああ…。」
首をひねるキラを尻目に、ライラは更衣のため脱衣場に入った。
 あの夢は一体なんだったのだろうか。あの声は一体−−−。
 不思議な夢にライラは首を傾げるのだった。

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あきゅろす。
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