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Freedomwing〜神モノガタリ〜
認知(1)
 ライラが故郷を飛び出してから、約二週間経過した。故郷を滅ぼされ、その敵討ちのために旅をしているキラと、彼の親友で、ライラに協力するためについてきたアズール、ライラとは双子で、自分の運命を見極めたいと言ってついてきたソーサ、記憶を取り戻すため、同行することとなったシエルと共に、ライラは様々な謎を追いつつ、旅を続けるのだった。

 ライラ達は早朝、シオンを立ち、昼前に着いた次の街の酒場で休息を取っていた。
「あーあ…、ライラの奴、寝ちまったよ。」
テーブルに突っ伏したまま寝てしまったライラを一瞥し、グラスを回すアズール。回すたびに、グラスとその中の氷がぶつかり、カランッと澄んだ涼やかな音を奏でた。
「仕方ないよ。昨日の晩…あんまり眠れなかったみたいだから。」
「ったく…、いつ戦いが起こるかわからないのに、睡眠不足でどうすんだよ。」
「僕に言われても困るよ…。」
キラは苦笑し、コーヒーカップに口をつける。
 ソーサも紅茶を啜りながら、向かいで眠るライラを見ていた。
 シエルは黙って緑茶を飲んでいる。
「…にしても、四天王って何なんだろうなあ。」
「剣神についての文献がある資料は洗いざらい調べたけど…四天王なんて、どれにも書いていなかったよ。」
キラが鞄から紙束を取り出して、ポンッとテーブルの上に放った。
「それ全部、古文書の写し。剣神についての文献だけだけどね。」
「凄い量ね…。」
ソーサが一枚一枚丁寧に目を通す。アズールは頭を押さえながら、ソーサが読み終えた写しに嫌々目を通していた。
 シエルもようやく興味を持ったのか、緑茶の入った湯呑みをテーブルに置き、散らばっている資料を無造作に取って読み始める。
「…『覇王の導きありし四元素、魔となりて覇王に仕えん。使者を導きし四元素、三元素と共に森羅万象を司る者なり。』−−森羅万象…。」
「森羅万象っていうのは、『宇宙全ての物』という意味なんだ。」
キラがニコニコと説明し始める。
「その文献、意味がいまいちわからないんだよ…。使者が剣神、覇王が邪な心だと思うんだけど、四元素がなんなのか……あれ?」
「四元素って四天王のことじゃねえか?タイタニアが地、フェイニアスが火だろ?」
レモンスカッシュを飲みながら資料を読んでいたアズールが顔を上げ、横から口を挟んだ。同様にソーサも頷く。
「じゃあ、剣神を導いた四元素は…?」
「精霊。」シエルの唐突な言葉に、え、と振り向くキラ達。
「あ、いや…精霊…だと思っただけ…。」
シエルは驚いて、しどろもどろになった。
「そう…。まあ、確かに、万物を司るのは精霊だと言われている。だけど、精霊と剣神に繋がりがあるとは思えない。」
精霊とは、この世界を構成する存在で、万物を司る。
 剣神と同じように、多くは謎に包まれており、その存在を否定する者もいる。
「わかんねえなら、直接四天王に訊いた方がいいな。」
おどけた口調で冗談を言うアズール。穏やかに眠っているライラ以外の三人から笑いが零れた。


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