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Freedomwing〜神モノガタリ〜
目覚め(3)
 ライラはタイタニアの尻尾を斬り落とすと、相手の背中から飛び降り、腹部を攻撃し終わったアズールとキラの元へ駆け寄った。
「なんだよ、この液体は…。なかなか払い落とせねえ。」
アズールが槍に付着した粘着質の液体を払い落とそうと躍起になっている。
 ライラに気付いたキラが駆け寄ってきて、
「ライラの言ったとおり、下に硬い外殻はなかったよ。」
「胸部はさすがに守られているがな。」
「ありがとう、二人とも。」
〈おのれぇ…!〉
タイタニアがハサミ状になっている顎を開いた。
 灰色の光が口元に収束している。
〈砕けよ!ストーンブレス!!〉
「伏せてっ!!」
一直線に放たれた光線は、とっさに伏せた三人の頭上を走り、背後にあった民家の壁にぶち当たる。
 その光線を浴びた民家は、砂でできた人形のように崩れ落ちた遺体と同じ崩れ方で音を立てて崩壊した。
 ライラは瞠目し、目の前の敵と、今し方崩れ落ちた民家を見比べる。
「まさか、お前が…この村を…っ!!」
〈我は四天王。愚かな人間を狩るのが最大の楽しみ。〉
「…許せない…。」
ライラがゆっくりと立ち上がる。
 歯を食いしばり、拳を震わせて、ライラは一歩一歩砂の上を歩き出す。
「何の罪もない人々を…傷つけて、苦しませて、殺して…それが楽しいだなんて…。」
ポタリと一滴の涙が零れ落ち、砂に吸収されていった。
「許せない…許さないっ!!」
顔を上げたライラの大きな淡いオレンジの瞳に、鋭い光が宿っていた。
「許すもんかあああっ!」
彼の叫びに剣が反応する。眩い光がその刀身から発せられ、刀身を包み込んだ。
「あれは…!?」
「なんだ…ピリピリする…っ!!」
ライラが大地を蹴った。
 一気に詰め寄り、攻撃する隙を与えない。畳みかけるように攻め、ジャンプして距離を開ける。
 タイタニアを守っていた硬い外殻が剥がれ落ち、砂と化した。
「これで終わりだ…。」
刀身から放たれる光がより一層輝きを増す。
「クロス…。」
〈そうはさせんぞおおおっ!!グランドフォール!!〉
大地がうねり、何が起こったのか理解する前に、ライラは体を貫く痛みに息を詰まらせた。
 地面に倒れ伏したライラに覆い被さるようにタイタニアが襲いかかる。
 鮮血が砂を真っ赤に染める。
 一瞬のことに、ライラは戸惑っていた。ただ、空中に放り上げられた際にダメージを負い、地面に叩きつけられたことだけはなんとかわかった。
〈死ねええっ!!〉
「ライラッ!!」
迫り来る巨大な顎。あんなものに挟まれたらひとたまりもない。
“こんなところで…死ねるかっ!!”
ライラは体を反転させた。
 両足を使って反動をつけて前転し、タイタニアの顎を躱す。外殻をなくし、外気に晒された胸部がライラの視界に入った。
 もう、何も考えていなかった。
 砂地を蹴って疾走、跳躍。光を纏った剣を構え、ライラは叫んだ。
「クロス・インペール!」
胸部を十字に斬り裂き、最後に中心に剣を突き立てる。
 剣から放たれていた真っ白な光がさらに強くなり、タイタニアの断末魔の叫びを飲み込み、村を飲み込み、周辺の風景もすべて飲み込んだ−−−。


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あきゅろす。
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