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Freedomwing〜神モノガタリ〜
目覚め(2)
 「こんなの、許せないよ!!」
ライラは砂に埋もれた村へと続く坂道を走る。
 アズールとキラもあとに続いた。
「気をつけて、ライラ!まだスコーピオがいるかもしれないよ!!」
生存者を必死に探すライラの背に声をかけるキラ。アズールは近くの遺体を調べている。
 この村の周辺にあった木々は全て薙ぎ倒され、村同様、砂に埋もれていた。
「街道沿いの森も薙ぎ倒されて、砂に埋もれたのかも…。」
「これは…スコーピオじゃねえ…。」
アズールは降り積もった砂を手に取り触っていたが、すくっと立ち上がると、
「キラ。ライラを探すぞ!」
「え?」
「この砂…スコーピオの生息できる砂じゃねえんだ。」
「どういう…?」
「話は後だ!」
村の中心へ、アズールは走っていく。キラも慌てて追いかけた。

 ライラはすぐに見つかった。中心部に程近い一軒の民家の前で屈み込んでいた。
 その両腕には一人の老人が抱きかかえられている。
「ライラ!」
ライラがパッと顔を上げた。その瞳は涙で潤み、今し方まで彼が泣いていたことを物語っていた。
「…ダメだったんだね。」
「ん…。」
ライラは小さくしゃくり上げ、
「二人はどうしてここに?」
「そのことなんだけど…。アズール、説明してくれよ。」
辺りを警戒していたアズールは、ライラの腕を引っ張って彼を立ち上がらせると、
「ここの砂はスコーピオが潜り込める砂じゃねえ。奴はやや湿気た砂を好む。だが、ここの砂は乾燥しきっている…。元々砂漠地帯でもないここに、こんな乾燥しきった砂があるなんて思えねえんだ。自然じゃねえ。普通の魔物でもねえ…。」
それに、とアズールは近くの子供の遺体を抱き上げた。その遺体は砂で出来た人形のように、パラパラと崩れ落ちる。
「ああ…!!」
「スコーピオの毒なら…こんなことにはならねえ。」
アズールの手に残された衣服が風で舞い上がり、どこかに流されていく。
「じゃあ、一体…。」
ライラの呟きを掻き消すように、突如大地が揺れ動いた。
「わっ!地震!?」
キラの声を掻き消すように、足元の砂が盛り上がり、三人は空中に投げ出される。
 ガラガラと積み木が崩れるように崩壊する民家。ライラは空中で体勢を立て直して着地し、現れた敵を見定めた。
 もうもうと立ち込める砂埃から、一匹の巨大な蠍のような魔物が現れる。
「こいつは…!?」
「でけぇ…!!」
「スコーピオじゃ…ない!」
その魔物は地の底から響くような咆哮を上げて、体当たりを仕掛けてきた。
 ライラ達は一斉に飛び上がると、それぞれバラバラに着地し、相手の様子を探る。
「こいつ…一体何なんだ?」
ライラの問いに答えるかのように、魔物がおぞましい声で人語を話し出した。
〈我は四天王が一柱・地のタイタニア!我が主を封じた憎き光を倒し、我が主を復活させる!光よ、滅びるがいい!!〉
大きなハサミが振り降ろされる。
 ライラは華麗に躱すと、下げている鞘から剣を抜き、脇から突いた。
 もう一度振り降ろされる巨大なハサミ。
「ふっ!」
剣を抜き取り、得体の知れない液体を振り払って、ハサミの根元、細くなっているところを切断する。
 その時、息つく暇もなく、もう一方のハサミがライラを襲った。
「うわああっ!!」
まだ辛うじて残っていた民家の壁に叩きつけられ、ライラは鉄の味がサッと口の中に広がるのを感じた。
 目の前にはガサガサ動き回る数本の脚。
“素早いとはいえ、小回りは利かない、か。”
ライラは相手の弱点を見抜くと、背後に回り込む。
 そして、剣を水平に構えた時だった。
「ライラ、上っ!!」
キラが叫んだ。見上げると、鋭い針を備えた尻尾が振り降ろされていた。
「危ねえっ!!」
横からアズールがライラを押し倒し、間一髪攻撃を逃れる。
「ありがとう。」
「礼を言っている場合じゃねえ!来るぞ!!」
アズールの言葉通り、また尻尾が振り降ろされる。
 ライラとアズールは同時に飛び上がり、
「アズール!キラと一緒に下から奴の腹部を狙ってくれ!」
「おうよ!」
キラとアズールのリーチの長さに賭けるしかない。
 ライラはタイタニアの背に着地すると、暴れ狂う尻尾を躱しつつ、根元の節でそれを切断し、斬り落とした。
 がくんっとタイタニアの体が沈む。ライラは飛び降りると、アズール達の元に駆け寄った。



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あきゅろす。
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