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Freedomwing〜神モノガタリ〜
志(2)
 ライラは瞳を閉じて、戦いの音をジッと聞いていた。
 形勢はいまだ不利。
 この戦いの流れを変えるためには−−−。
「ライラ、危ないっ!!」
キラの叫び声が空気を揺るがした。
 パッと目を開けると、一匹の魔物が唸りながら、ライラに飛びかかってくるところだった。血にまみれた鋭い牙が口から覗く。
 牙が突き立てられようとしたその刹那、銀色の閃光が弧を描き、飛びかかってきた魔物の首が切断された。
 ドサッと落ちる胴体と切り離された頭部。その向こうで、ライラが立ち上がる。
 あの瞬間、横に攻撃をかわし、隙を突いて相手の首を掻き切ったのだ。
 ライラは顔を上げると、唸りながらゆっくりと近づいてくる魔物たちを一瞥し、
「来い。」
その瞬間、魔物たちが一斉に飛びかかった。
 飛び上がり、上段に構えた剣を一匹目の顔面に叩きつける。
 二匹目と三匹目は斜めに斬り裂き、四匹目は心臓を刺し貫く。
 背後からの敵には、足首の捻りを生かして回し蹴りを食らわせて蹴飛ばし、剣を引き抜いて、その喉を掻き切った。
 横から数匹が同時に攻撃を仕掛けてくるが、ライラは足の力だけで跳躍してかわし、体勢を立て直して、一気に脇腹を貫く。
 迸る鮮血の中で、真紅の布が翻る。
 時には蝶のように優雅に、時には豹のように素早く、体が躍動し、剣が振るわれる。
 その戦いを見た者は必ず、口を揃えてこう言う。
 優雅に舞う天使に、その姿をなぞらえて。
『戦天使(せんてんし)・ライラ』と−−−。

 トンッと着地し、剣についた血糊を落とす。背後でドサドサと魔物が倒れた。
 キラや周囲の戦士達は呆然と、魔物の死体とライラを見つめていた。
 素早くて、なかなか倒せなかったあの魔物を、いとも簡単に倒してしまったのだ。しかも、無傷で。
「すごい…。」
キラが感嘆したのも束の間、ライラの背後から、もう一匹の魔物が襲いかかってきた。
 今し方まで死体を漁っていたようで、血糊でベッタリと汚れている。
 ライラは振り返ると同時に剣を突き出す。だが、それは相手も承知していたのか、剣をかわすと横に回り、ライラの脇腹に食らいつこうと口を開いた、その刹那。
「おりゃあっ!!」
掛け声と共に、槍が魔物の体を刺し貫く。
 顔を上げると、紺色の髪の青年が、明るい緑の瞳でライラを見下ろし、
「危なかったな、おチビちゃん。」
その言葉を掻き消すように風が吹いた−−−。

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