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Freedomwing〜神モノガタリ〜
志(1)
 ライラはキラと共にエレーナを出て、次の街−−−アトレアに向かっていた。この街には、国立図書館があり、学問の街として有名だ。ちなみに、文部科学省もここにある。

「静かだね…。」
どんな些細な音さえも響きそうな静けさが空間を満たしている。
 ここは国立図書館。アトレアに着いてすぐ、ここに来たのだ。
 古くて分厚い本を手当たり次第に読んではパタンと閉じ、首を振るキラ。
 ライラも一冊手に取って読んでみるが、インクが掠れている上に、古代文字で書かれているため、ちんぷんかんぷんだった。
 こんなものを読めるキラはすごいとしか言いようがない。
「姫…大丈夫かな…。」
ライラは小さく溜め息をつき、手にしていた本を元の棚に戻す。
「…ダメだ。」
「どうしたの?」
キラは首を振ると、
「ごめんね…。聖魔紀のこと、どの古文書にも載っていないんだ。」
どうやら、ライラの為に聖魔紀のことを調べてくれていたのだ。
「ううん。ありがとう、キラ。」
「…もう少し調べてみる。ライラは好きなことしていていいよ?」
「……うん。」
手伝いたいのは山々だが、ライラは古代文字が読めないので、キラに任せるしかない。
 窓際の席に座り、図書館内を観察する。
 張り詰めた静寂を破るのはページを捲る音だけだ。
「……。」
連れ去られた姫のことを考えつつ、うつらうつらとしていた時、外から甲高い悲鳴が響き、ライラは現実へ引き戻された。
 静寂が一瞬にしてざわめきへ変化し、何人かがパッと立ち上がって図書館を飛び出していく。
 ライラは窓に駆け寄り、下を覗き込んだ。
 大通りでキラキラ煌めく白刃。迸る真紅の血。
 ライラは窓を開け、窓枠に飛び乗る。
 ここは3階。飛び降りれば、無傷では済まされない。
「ライラ!!」
キラが叫ぶ。
 だが、次の瞬間、ライラは窓からパッと飛び降りていた。
 風が赤い布をヒラヒラ靡かせる。
 ストンッと着地したライラはすぐに剣を抜き放ち、油断なく身構えながら戦況を確認する。
 敵は狼系の魔物。素早さが高く、結構厄介な相手だ。数は十数体。群れで来たわりには少ない。 対して、人間側は、ライラより早く駆けつけた戦士や旅人、武装した市民が応戦していた。
 形勢はこちらが明らかに不利。敵が素早いため、うまく攻撃が当たらない。
 飛び散り、流れる血。その中に倒れる人々。
 街の中とは思えない光景だ。
「ライラ!大丈夫か!!」
キラが駆け寄ってきた。
「平気だよ。あの高さなら普通に飛び降りられる。それより、キラは参戦しないの?」
ライラは振り返りもせずに訊いた。
「戦うつもりさ。」
どこから出したのか、槍を構え、戦線に飛び込むキラ。
 的確に敵の急所を突き、一撃で絶命させる。
 キラの槍さばきには躊躇いなど微塵もなかった。ただ、目の前の敵を倒すだけ。
 戦場に身を置く者は、冷酷非情でなければならない。非情にならなければ、命取りになる。
 キラの戦い方はまさにそれだった。
 返り血を浴びることも構わず、容赦なく倒していく。数々の修羅場を潜り抜けてきた者だけが持つ、冷酷非情な光を瞳に宿して。
 キラの参戦によって戦いの流れが少し変わった。
 依然として不利なのだが、少なくともキラの攻撃は魔物に命中している。
 ライラは静かに瞳を閉じ、響き渡る金属音に耳を澄ました。

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