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「あぁぁああぁああーーーーーーーー!!」

放課後の教室に呻き声があがる。

「もう嫌だ!!帰る。帰らせて!帰らせろー!!」

呻き声の主、伊藤 (隣の席) は机の上のたまった真っ白の英語の課題ノートをペラペラとめくった。シャーペンは当の昔に投げ出された後だ。

「伊藤。ため込むお前が悪いんだろ?さっさとやれよ、俺だってやってんだから」

そう返す俺の目の前にも白塗りの悪魔(白紙のノート)がいた。
ちなみに俺は残り20ページほど、伊藤は聞いた限りだと「100ページを余裕にこすくらい☆」だとさ…終わらないと試合
に出してもらえない、とかなげいてた。自業自得じゃね?
どっちにしろ俺も伊藤も立派な居残り要員だった。



 カチコチと時計の音が聞こえる。さっきまで教室を染めていた赤は、少し暗くなり校庭から陸上部やら野球部のアップの声が聞こえてくる。
穏やかな風がカーテンをふわりと揺らした。
教室にいる三人は全員もっていたシャーペンを止めていた。

「そろそろ帰るか?暗くなってきたし…悪いな涼。つきあわせて」

俺は目の前に向かい合って座る三人目に声をかけた。
 

「あー。いいよ別に。二人見てるの楽しかったし。」

涼は、何でもなさそうに笑ったがピタッと止まって、一瞬考え込むようにした後ニヤッとたくらむような笑みを俺に向けた。

「悪いと思ってんなら悠介、なんかおごってくれたりする??」

そんな涼に不覚にもトキめいた俺は、さながらイケメン王子に微笑まれた町娘…みたいな感じ。
でも、いくら涼でもココは譲れなかった。

「は!?やだよ!!俺のサイフ今、氷河期時代並みに寒いことになってんだから!!チュッ○チャップスも買えないから!!」

最近買ったCDが響いて今俺は、持ち金32円だ。しいて言えばレシートならいっぱい持ってる。そんな俺の正直な告白に涼の反応は…

「なーんだ。おもしろくねー。じゃぁ、つきあえよ!」
「は!!!!?」
「この前新しいゲーム買ったんだ。あれ二人でやった方がおもしれーし。対戦やろーぜ?」
「あ…あぁ、うん」


(な…なんだ。ビックリした、つきあうとかビックリした。)

涼のことを好いてる身としては、心臓に悪い言葉だった。ありえない事だけど…一瞬期待した俺はバカだな
勘違い(?)だったけど、夢でもいいから俺の望む「つきあって」であってほしい…て。
どうやら俺は、どうしようもないくらい涼が好きみたいで、手のつけようのないくらいオカシクなってるみたいだった。




 月曜日、朝の予鈴が校内に鳴り響く。
俺はだまって机の上でひじをついて空を見上げていた。
空は青い。太陽が輝いてる。
さわやかだ…実に、さわやか…。

「あれ坂木。お前なんか今日機嫌いいな…。なんかあったの?」

今日の俺はすこぶる機嫌がよかった。伊藤の特徴的なキツネみたいな目(糸目)さえもかっこよく見えてしまうほどに…

「いや、なんでもないよ〜」

本当はあったんだけど、俺は口元の上がるのをこらえながら伊藤にそうやって返した。
なぜなら…“先日の約束(?)どおり、昨日涼の家にゲームしに行ったから”とは死んでもいえないから…


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あきゅろす。
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