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serial story
10
「そういえば、お前何しにきたんだ?」

ぼんやりそんなことを考えていたら、不意に斎藤に声をかけられた。

「あぁ!!そうだ、忘れるところだった。この間借りてたお前の着物、返しにきたんだよ。」

俺は背もたれから体を起こし、ポンと手を叩いた。

「あぁ、それで来たのか。張に会いに来たわけじゃなく?」

「・・・?そうだけど?」

なんでそこで張が出てくるんだ?と疑問を浮かべながらキョロキョロと斎藤の机付近を見回す。

「あっ、ほら。斎藤の机の上に置いてあるから。長い間借りちまって悪かったな。」

「別に構わん。」

そして、ここでさっきの疑問を思いだした。
アレが目に入ってきたからだ。

「なぁ斎藤。ちょっと聞きてぇんだけどよ、あの弁当って剣心が作って来てるんだろ?何で?」

俺はさっき張に聞いた剣心からの弁当を指さしながら、斎藤に訊ねた。

「・・・。」

が、斎藤は無言のままだ。

「なぁ?」

返事の返ってこない斎藤の方を振り向くと、何だか少し機嫌が悪そうな顔をしていた。
そして一言。

「知らん。」

「何で知らねんだよ。持ってきてもらってるくせに。」

俺は疑問のなかに更なる疑問を浮かべる。
持ってきてもらって、しかもわざわざ作って来てくれてるのに、その理由を知らないなんてどういうことだ?

「知らんもんは知らん。あいつが勝手に持って来てるだけだ。俺は頼んだことなど一度もない。」

そう言いきる斎藤は、はぁ、と溜め息を付いた。

「そう、なのか・・・。」

じゃ、何で剣心はこいつに弁当を持ってきたりしてるんだろう。
頼まれたわけじゃないなら自主的に?

でも何で?

お節介焼きな剣心だから、こいつの体でも気遣ったのか?
健康管理悪そうだし。

俺はチラリと斎藤を見る。
さっきよりも機嫌が悪そうだ。剣心の名前、出さない方がよかったかな。
斎藤の機嫌がこれ以上悪くなることはとてもじゃないが御免だ。
俺はそれ以上何も聞けずに、口を閉じた。

今度、剣心に会ったら聞いてみよう。

俺は再び、椅子に背を預けた。
そして、流れる沈黙・・・。

コチコチと壁に掛かっている時計の秒針の音が響く。


・・・俺ってどのタイミングて帰れば良いんだろう。何気なくお腹をさする。
あんまり早すぎても仮病ってバレるだろうし、遅すぎてもこの間が持たないし・・・。


っていうか、斎藤は何がしたいんだ?
いつまで俺の隣に座っている気だ?
張だけ働かせてお前の仕事はいいのか、お前の仕事は?!

俺はまたもや斎藤の方をチラリと見る。
と、斎藤は胸ポケットから煙草を取り出していた。それを咥えてシュっと言う音と共にマッチに火をつける。
深く息を吸い込むと、口から煙草を離して、白い煙と共に息を吐き出した。

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