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serial story
20
何、その顔。

何、そのしてやったりな顔。

その笑みに俺の脳裏には、早くも後悔の二文字がよぎった。


「で?俺はどうすれば良いんだ?」


「何もしなくて良い。」


「何も?」


「あぁ。」


何もしなくて良い。

何もせずに風邪がうつるとか、あるのか?

まぁ、楽は楽で良いけど。


「だが、風邪はうつらんと困る。だから今日はここに泊まれ。」


「は?ここにか?」


「そうだ、布団はもう一式ある。俺の横で寝ろ。」


思いがけない斎藤の一言に、一瞬固まる。


そこまでして、風邪をうつさせたいか。

そこまでして、俺に気負いさせたいか。

そこまでして、自分が正しいと証明したいか、この不良警官が!!


俺は心の声が漏れそうになるのを必死で止め、それに従った。



そのあと、何やかんやで斎藤におかゆを作ったり、風呂をもらったりであっと言う間に夜となった。


そして、斎藤の横に引かれた布団。


俺は斎藤に借りた寝巻をきて、その布団にもぐり込む。


斎藤も同じように横になった。



蝋燭の明かりは消され、夜の月明かりだけが室内を鈍く照らしている。

真っ暗ではないが、決して明るくもない。

外からは心地よい虫の声が聞こうてくる。

それと、もうひとつ斎藤の呼吸する音。



何でこんなことになったかな。

色々と考えることはあるが、こいつが横にいることが一番の謎だ。

いや、俺がこいつの横にいることが謎だ。

こんなんで、本当に風邪が治るのかよ。

ただの見舞いのはずが・・・。


はぁ〜。


何だかんだで、今日も疲れた。


けど明日からは今まで通り、のんびりした時間が流れるはずだ。

こんなわけのわかんねぇこともなくなる。


明日、俺が風邪をひいて、めでたしめでたし。


あぁ〜、看病は誰がしてくれるんだ?

剣心か?

克か?


まぁ良いや。その時考えよう。


俺は、だんだんと意識が遠のいて、やがて深い眠りに落ちた。


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