小説 十一話:進展開 「いや、お前らマジで強いな。助かった、ありがとな」 刑務所を出てしばらく進むと森が見えたので、明るくなる前にそこに隠れた。ネオとはこれから別行動をするらしい。 「あ、そういや、ネオは何して捕まったんだ?」 シュードが聞きそびれたことを聞いてくれた。いつもはぐらかされて、なかなか聞けなかった。 「俺は…。最初、強盗で普通の刑務所に入れられた後…、とある奴等の脱獄を手伝ったせいで、捕まったんだ。それじゃ、じゃあな!」 言うが早いか、すぐに森の中に消えていった。 「脱獄…ですか…」 「ていうか二回目だよね?」 「反省はしてないな…」 すると、日が昇った。 明るい光が森の中にも差し込む。 「とりあえず、早く森の奥に行きましょう。一度隠れなければ…」 「よし!しゅっぱーつ!ちょっと眠いけど」 言われてみれば、一睡もしてないから眠気が少し襲ってきた。今まで緊張して、神経を集中させていたから気づかなかった。 「安全な場所を見つけたら、休みましょう。しばらくは歩きますが…」 「わかった!」 草と、枯れ葉を踏み締めて、 俺たちは森を歩いていった。 「なぁレイト」 「なんでしょうか?」 「コレ…道合ってんのか?つーか知ってんのか?」 「っ…、昔本で読みました、大丈夫です」 「今、っ…、ってなったろ!ダメじゃねーか!」 「大丈夫です」 「けんかやめよーよっ」 昼になるまでに隠れられる場所を見つけ、仮眠をとった後、どっちが出口かも分からない森の中を歩いている。できるだけ刑務所から離れられればいいのだが。 「今頃刑務所と国は大騒ぎかもね〜」 「まあ、脱獄だしな」 「刑務所創立以来初の脱獄だったそうです」 「え?じゃあ俺らけっこうスゲーじゃん!」 「スゴくねーよ、重犯罪者だよ」 「まあ、生きてればいいですよ。それだけで万歳です」 生き物の息吹がする森の中を、少し騒がしいくらいの声で会話を楽しむ。道はある程度進みやすくて、木はまばら。草はあんまり生えていない。魔物は居そうだが、未だに会わない。 ここなら、大声を出しても大丈夫な気がして、思わず叫んでしまった。 1、2時間ほど進むと、あることに気がついた。ちょっと不気味なこと。 「なぁレイト。ここら辺木が無いな…」 「確かに…そうですけど、どうしたんですか?」 「生えていないわけじゃない。誰かに斬り倒されたことがあるんだよ、この木たちは」 「そう…ですね、だから何ですか?」 「お前見覚えないか?」 「…さあ?」 「ちょっと着いてこい…」 俺は、とある一つの疑念を元に進み始める。木が斬り倒されて無くなっているところをたどって歩く。 しばらく歩けば、俺の予想通りの光景が広がる。少し開けた道。ちょうど大きめな馬車一つが通れそうな、森の中の道。 「これは…」 「あ!もしかして」 「ここは、魔物の異常発生地帯…陰泉の森。研究者Xの居る森だ」 男は、森の中を歩いていた。名をネオと呼ばれていたが、偽名である。男は明るい太陽を見上げた。 「今頃何してんのかな… スカイルたちは」 眩む視界に微笑んで、 新たに一歩、踏み出した。 【*前へ】【次へ#】 [戻る] |