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小説
七話:涙


棒を扱って戦うならば、かなりの訓練が必要だ。両手で普通に持ちながら棒の両端を相手に当てる。
しかし、お互いに棒を使う場合は…



「…少しはましになってますね」

「うるさい、黙れ」


息を切らさないまま、シュードは棒の下部をロギレスの膝に向けて当てにいく。ロギレスは平然と受け止めて、受け止めた反対の端を当てる。シュードは棒を上に弾き、雷を放つ。しかし、ロギレスに効いている様子はなく、棒による突きが飛んでくる。回転してかわし、一撃を加えようとするも、簡単に弾かれた。


「……集中している…?ただ私を殺すことに…」

ロギレスは、ぶれのない動きを見て、小声で呟いた。
今まで訓練のときには、どこか甘いところが存在し、本気のシュードと撃ち合ったことはなかった。それを悩んでいたのに、今は驚くほど集中している。
師となる男を殺すために。

「あんたが…お前が…王子を殺したんだ…」

「私は殺してなどいません…それより、自ら無実を主張しながらも脱獄するのは矛盾していると思いませんか?」

「…お前が…お前が…」

何かにとりつかれているかのように、シュードはひたすら目の前の男を撃つ。
お互いに攻撃を受け止めて、反撃をする様子は、まさに死闘と言えるだろう。

「…っく…危ないですね」

「……」

シュードの棒が、すれすれにロギレスの顔を狙っていた。すんででかわしたロギレスはすぐに反撃に出るが、反応は速く、受け止められる。

いつしか、二人の周りには他の隊のものが大勢居たのだが、手出しはしない…いや、出来なかったのだ。
二人の動きに見惚れているものや、狡猾にタイミングを伺っているもの。様々だが、いずれも手出しはしなかったのだ。



撃ち合うにつれて、シュードにはところどころ痣が出来ていく。対してロギレスにはかすり傷一つついていないのだ。

「強くはなりましたが、その程度で私は殺せません」

「うるさい!絶対殺す!」

「いいえ、あなたには無理です」

「無理じゃない!黙れ!」

「いいえ…」

「うるさい…!」

「あなたには私を殺せません」

「殺せる!絶対に…」

「では、なぜあなたは泣いているのですか?」

「…っ…」


シュードは、涙を流していた。それは、いくら敵となっても師である男に攻撃しているという事実。どうしても踏ん切りがつかないという意思の弱さ。そしてなにより、ロギレスが自分を陥れたかもしれない可能性だった。

「弱い…脆すぎます」

「…っ、う、るさい…」

「人を殺すことに戸惑いを持ってはならない。あなたにはそれが足りない」

「ちっ…がう!」


その時ロギレスは、とても優しげな顔つきで、とても優しい口調で…


「もう…強がるのはやめなさい。あなたは子供なのだから…」


シュードの目から、涙が溢れた。


シュードは棒を手放し、ロギレスの一撃を、真正面で受けた。




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あきゅろす。
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