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リクエスト
倒置さんへ
「阿伏兎、男に二言は無いんだろ?約束破るなんて許さないよ」
「いや、だからと言って……」
「言い訳なんてみっともないよ、何も難しい事じゃないだろ?」




――時は数十分前迄遡る。
高杉一派との事件や神威の団長から提督への昇格等、色々な出来事が起きてから数日が過ぎていた。初めは団員達も忙しなく艦内を走り回っていたのだが、現在船は次の商談を行うべく通常運転中。艦内はまた静けさを取り戻し、あの事件に関する始末書の山も一段落を迎えた。
そんな束の間の休憩時間に、騒がしい部屋が一室。
「あ、阿伏兎ずるい」
「自分は散々バナナの皮使っといて何が狡いだ、すっとこどっこい」
「あれは良いんだよ、踏む奴が悪いんだから」
「あんた体当りしてワザと踏ませてるだろーが」
第七師団団長、神威の自室である。室内では先程からこの戦艦には不似合いなピ、ピ、ピーやブーン等と言う電子音を醸し出しながら、神威が食費でなけなしになった経費で買ってきたと言うゲームのリモコンを握り、大の大人二人がマ〇オカートに勤しんでいた。
「……あーあ、また負けたー」
ぐでん、とリモコンを投げ出し後ろに倒れた神威はふてくされた様に宙を見詰める。時折、阿伏兎の所為に生意気な。だとかオッサンのクセにゲーム強いとか狡い。等と不満の声を募らせるも、何時ものように怒りに任せゲーム機を壊す事は無い辺り、気に入ったのだろう。
「いちいち自分が仕掛けたトラップ、踏ませようとするからでしょうよ」
一方阿伏兎と言えば、長時間テレビを見ていた所為か疲れた様に目頭を解しつつ目を瞑った。それと同時に、神威の呟きが耳に入る。
「いや、きっと目標がないからいけないんだよ」
「……はぃ?」
「ねぇ、阿伏兎。次の勝負で負けた人は、勝った人の言うことを何でも一つだけ聞くってのはどう?」
腹筋を使い上半身を起こすと、新しい悪戯を思い付いた子供の様に人差し指を立てて目を輝かせた神威は、隣で唖然とする阿伏兎を見遣る。
「……何でもか?」
「うん、何でも」
「上等だ」
そして、大人気もなく再びリモコンを握った二人は火花が見える程に睨み合い、ゲームを再開したのだった……。


そして、今に至る。
結果は阿伏兎の惨敗。まるで先程迄は本気じゃなかったかの様に圧勝されたのだった。喜ぶ神威とは対照的に、冷や汗が頬を伝い嫌な予感に苛まれる阿伏兎へ神威が告げた言葉とは、
『今から俺が言うことに、嘘や誤魔化し無しで答える事』
だった。
初めはそれだけで良いのかと、あっさり頷いてしまった阿伏兎は後程、浅はかな考えをした自分を恨んむ事となる。
「じゃあ、手始めに……阿伏兎は女装癖はありますか?」
指を追って一を示せば、初めから訳のわからない質問を投げた神威に呆れた様な阿伏兎は真顔を作って、
「ありません」
と即答する。おもしろくなさそうに舌打ちをし、つまんないの。だとかなんだとか不満そうな神威は、ぎゃあぎゃあと騒ぐ阿伏兎を余所に指折り二つ目の質問を投げ掛ける。
「んー、じゃあ……阿伏兎は淫乱ですか?」
「違います」
「ブー。嘘はダメだよ。嘘付く度に殴るから。だいたい、阿伏兎が淫乱なのは俺が良く知ってるし」
拳を握り頭の上にかざす。目から殺気が感じ取れるあたり、本気のようだ。
「ッ……そう、なんじゃないですか?」
「……うわ、顔真っ赤」
「誰の所為だと思ってんだ!」
「俺の所為?多分ね」
阿伏兎は首を傾げケラケラと笑う神威に、呆れたように真っ赤な顔を俯かせた。
……最近の若い子はわかんねェわ、オジサン。
「じゃあ、最後〜。俺のこと、――――?」
「……俺に、言えと?」
「阿伏兎、男に二言は無いんだろ?約束破るなんて許さないよ」
「いや、だからと言って……」
「言い訳なんてみっともないよ、何も難しい事じゃないだろ?……ねぇ、阿伏兎」
急に真面目くさった顔を上げる神威に、生唾を飲む阿伏兎の喉が上下する。
「俺のこと、好き?」


今までのフザケタ言葉ではなく、


人をおちょくる様な言い種でもなく。


「……っ、これ以上ないって位に愛してますよ、すっとこどっこい!」


素直になれよ


翌日。なにやら嬉しそうな団長と、無言で俯いたままの副団長。
そして、何故だか艦のごみ置き場にぼろぼろのゲーム機がすてられていたそうな。

(あははっ、俺も愛してるよ。お前だけを……なんなら、もう一回戦どう?)

(一生やってたまるか!)

(えぇ、せっかく阿伏兎の告白が聞けたのに)

(……ブチィッ)




わぁぁぁ、こんな駄文でよろしかったでしょうか(汗)
厚かましく御願いしたリクエストを答えてくれて、ありがとうございます!!

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