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■小説
サメいじり。〜刺客002:雲雀恭弥〜





【サメいじり。〜刺客002:雲雀恭弥〜】






――ドオオオオン!!
軽快――もとい豪快な音を立てながら扉は床にへばり着く。来客を知らせるにはあまりに大き過ぎる物音である。そんな数秒前までは立派に扉であった憐れな木材を踏み付け微笑を携えるは、並盛中風紀委員――雲雀恭弥その人だ。どうやら今日は機嫌がいい様子。実に傍迷惑である。


「やあ」
「う゛お゛ぉい!!てめえっ、なんてことしやがる!!」
「文句があるならもっと頑丈な扉でも付けたら?どうせ付け替えるんだ、ちょうどいいだろ」
「誰のせいで付け替える羽目になったと思ってやがんだああ!!」

しれっとさも当然とばかりに言い返す雲雀に血圧が上昇する。おまけに名案と言いたげな口振りに、こめかみには青筋が浮かび上がった。


「うるさいよ、君。何か僕に文句でもあるわけ」
(無いわけあるかぁあ!!)

実に喜ばしく無い訪問者にギリギリと奥歯を噛み締めるスクアーロ。こんなの予定に無い。本来ならば沢田綱吉ときたら刀小僧――もとい山本武かスモーキン・ボム(獄寺隼人だったか)辺りで普通は来るだろう。
一体誰がこいつを此処へと導いたのだろう。そんな不届き者は是が非でも三枚にオロした後、その全てを切り刻まなければ気が済まない。

「あの赤ん坊が此処に来れば満足いくまで咬み殺せるって言っていたんだけど、それは本当かな。――試してみよう」
「あンのアルコバレーノめっ!!」

元凶の存在を知るが早いか、トンファーを構え攻撃を繰り出す奴の動きを目で追う。伊達に暗殺部隊に身を置いている訳では無いが、此処はオレの部屋だ。唯一の憩いの場だ。それをいきなりやってきたこいつに滅茶苦茶にされていい筈がない。――何か良い方法は無いものか。




「避けるだけ?つまらないな、どうしたらその気になるだろう」
「どーもしねぇからとりあえず落ち着けぇ!!」

――ガシャン!ドカン!!
わざとか偶然か、着実に部屋は荒らされ壊されていく。
ああ、それは先日部屋に置いたテーブル……。

――バキッ!!



「手が滑った」
「う゛お゛おおい!!」

絶対わざとだ。こいつは悪魔か何かだろう。
“手が滑った”という常套句は普段XANXUS以外使わない。逆に言うなればこの雲雀恭弥という人物は明らかにそっち側――もといXANXUS側である。
新たな天敵を見付けた様な複雑な心境と荒れ果てたこの部屋は、実に良く同調していた。――と言うか、何だか泣きたくなってきた。




「わかった、相手をしてやる。どっからでも来やがれクソガキィ!!」
「ワオ、そうこなくっちゃ。待ちくたびれたよ」

もう壊される物は何も無い。
嫌な吹っ切れ方をしたスクアーロは枕元に置いて在った刀を義手へと装着し、振り返った。適当にやり過ごせる気もしなかったが、もう仕方が無い。この後きっと『うぜぇ、死ね』とか何とか“何処かの暴君”にいびられるだろうが、そんな事はどうでも良くなっていた。
早い話、混乱していたのだ。向かい合うこの男の扱いに困り過ぎて。




「行くよ」
「う゛お゛ぉい、どっからでも来やがれぇえ!!」

先程までテーブルで在った残骸を靴の底で踏み付け一気に距離を詰めて来る男の一太刀を刀で受け止め、追撃を繰り出そうと風を切る対のトンファーに目を向けた刹那。


――〜〜♪♪

緊張感を崩壊させるメロディーが部屋を包む。スクアーロはぱちぱちと瞬き、音の出所を探ると雲雀のスラックスからだと知り、唇を引き結んだ。
雲雀はといえば何事も無かったかの様に携帯を取り出し通話を始める。


「何、今僕は忙しいんだけど。……ふぅん、そう。それで?……なるほどね、状況はわかった。今から向かうから余計なことはしないでね」
「…………」
「じゃあ、僕は帰るから」
「はぁ?」
「聞こえなかった?帰るって言ったんだよ」

「う゛お゛ぉい、散々人の部屋荒らすだけ荒らして帰るってかぁ!!」
「何か文句でもあるの?」
「無いわけねーだろぉがああ!!」
「まあいいや、また今度遊びに来てあげる」


「二度と来んなああああ!!」





廃墟の様な部屋に一人残されたスクアーロは、茫然とその有り様を眺めていた。辛うじて原形を留めているのはベッドだけである。

(……寝れるだけマシかぁ。)

溜息を一つ溢し、片付けを開始しようとしたその時、外套の胸ポケットで携帯が震えた。出るまでも無くそれが誰からか察しが付き、また一つ溜息を落とす。……どうやら後片付けは明日になりそうだ。



「よぉボス、どうしたぁ?何か用事かぁ?」
『3秒で来い。待たせたら殺す』

――ブツッ。
いつも通りの一方的な会話に返事(反論)をする前に切られた。
通話終了を知らせる機械音が鼓膜へ残る。


「う゛お゛ぉい!!」
言うより早く駆け出したスクアーロは、部屋を目指しながら考えた。





(扉ねぇと出入り楽だなぁ……。)


-END-








弟二回目はリクエストが多かった雲雀恭弥さんでした。ホントに可哀想な回になりました。
流石は刺客・雲雀恭弥、いい仕事をしていきます。(笑)
それでもスクはめげずに頑張ります、前向きな子なので。

――2009.10.19.



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